電力各社の2014年第1四半期の決算が出そろった。
原発のない沖縄電力を除く大手9社で見ると、昨年の第1四半期の経常損益は、北陸電力のみがわずかな黒字で、残りは全て赤字であった。
当期は、東京電力など6社が黒字になった。(四国電力はわずかな黒字、北海道電力はわずかな赤字)
逆に、関西電力と九州電力が大きな赤字となった。
大赤字の関西電力、九州電力と、ほぼトントンの四国電力、北海道電力は、いずれも2010年度で原発依存比率が40%程度と大きい。
原発依存率の低かった電力会社は黒字化した。
関電の場合、大飯原発3、4号機が2012年7月に再稼動し、昨年第1四半期は稼動していたが、2013年9月に停止した。
このため燃料費が15%増の2902億円に膨らんだ。また夏場の需要に備え、修繕費も増えた。
北海道電力は渇水準備金を194億円取り崩し、当期損益を黒字にした。
同社は今回、17.03% の再値上げの申請を行った。
黒字となった電力会社では、値上げの影響が大きい。
前年同期比の経常損益の値上げの影響は、北海道が108億円、東北が360億円、中部が247億円、関電が300億円、四国が110億円、九州が200億円となっている。
東電は他社に先駆け、2012年9月に値上げしたため、前年同期比の損益対比には値上げの影響は入らない。
これに加え、燃料費調整制度により、燃料費のアップ分は料金アップで回収している。(下記に詳細、問題あり)
家庭向けの値上げを国に認めてもらうために人件費などを削ったことも採算向上の理由の一つである。東北電力は「コスト増は効率化による経費削減で吸収していく」としている。
しかし、「もう経費を削る余地は少ない」との声もある。改修工事の先送りなどはいつまでも続けられないとする。
2013年に値上げをしても大赤字の関西電力と九州電力が問題である。
関電の八木誠社長は「再値上げを具体的に検討せざるを得ない場合もある」と述べた。
各社決算対比 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
単位:百万円 |
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燃料費調整の仕組みは下記の通り。
・原油・LNG・石炭それぞれの3か月間の貿易統計価格にもとづき、毎月平均燃料価格を算定。
・算定された平均燃料価格(実績)と、基準燃料価格との比較による差分にもとづき、燃料費調整単価を算定し、2か月後の電気料金に反映。東電の場合の詳細
東電の場合、2014年1Qでは、燃料費調整制度による前期比収入増が1040億円、それに対し、燃料代は前期比で100億円増で、差引 940億円の益となっている。
燃料費アップよりはるかに多く、燃料値上がりとして請求しているが、これは下記の点から、燃料費調整収入と燃料使用時期にずれが発生しているためと思われる。
同社は原料の評価を総平均法で行っているため、当期のコストには期首の在庫の価格が影響する。
2014年3月期と2013年3月期の通期の比較では、
2012年9月からの料金値上げによる増益が2430億円あり、
燃料費調整による収入増が2860億円で、燃料価格アップの損失増は3810億円で、差引950億円の損となっている。
長期的にみると、見合っているように見える。
しかし、実際には2014年3月期は、これに加えて、安い石炭を多く使うことによる前期比の燃料費減が2020億円もある。
燃料費調整での燃料構成は
上記の通り一定のため、これは調整計算に算入されず、需要家は実際の燃料価格アップ分以上を払わされていることとなる。
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