クラレは8月21日、DuPont社のビニルアセテート関連事業の買収完了について記者会見を行った。
クラレは2013年11月21日、DuPont から同社のPackaging & Industrial Polymersの一部であるビニルアセテート (Glass Laminating Solutions/Vinyls)関連事業を 543 百万ドル+在庫相当額で買収する契約に調印した。
買収対象事業は、安全ガラスの中間膜として使用されるポリビニルブチラール(PVB)シート、ビニルアセテートモノマー(VAM)、ポリビニルアルコール(PVA)樹脂など で、建築分野・自動車分野等広範な産業分野において使用される製品群を有しており、当該事業の年間売上高は500 百万ドル以上となっている。
工場所在地は以下の通りで、他に、北中南米、欧州、日本、韓国、中国等に販売等の拠点があり、従業員は約600人。
米国: 3ヵ所(テキサス州、ノースカロライナ州、ウエストバージニア州)
欧州: 2ヵ所(ドイツ、チェコ)
アジア:1ヵ所(韓国)
2013/11/27 クラレ、DuPont のビニルアセテート関連事業買収
2014年4月29日に欧州独禁当局から条件付認可を得た。
EUは建築用PVBフィルムで3社が2社(同社とEastman) に減ることを懸念した。
このため、クラレは欧州での同製品のメインの生産工場であるドイツのUentropのPVBフィルム工場を売却することで承認を得た。
追って売却する。
6月1日、買収手続きを完了した。
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クラレは世界に先駆けてビニロン繊維の原料としてPVA の工業化に成功、ビニルアセテート関連事業のパイオニアとして、PVA 樹脂、PVB 樹脂・フィルムのほか、PVA フィルム、EVOH(エチレン・ビニルアルコール共重合体)樹脂(クラレ商標<エバール>)、PVA 繊維ビニロンを世界的に展開している。
ポバール樹脂はクラレが世界で初めて事業化した機能性樹脂で、世界トップシェアを誇る。
水溶性、造膜性、接着性、乳化性、耐油性、耐薬品性などの特性をもち、紙加工剤、接着剤、塩ビ重合安定剤をはじめ、自動車のフロントガラス用中間膜原料などの様々な用途で使用されている。
ポバールフィルムは、大型薄型テレビをはじめモニター、パソコン、携帯電話等のLCDの表示に欠かせない偏光フィルムのベースフィルムで、同社の製品は30年以上前からほぼ独占的にこの分野に使用されてきた。
光学用ポバールフィルムの世界シェアで約8割を占める。
日本合成化学工業が これに続き、世界市場でもこの2社でほぼ独占している。PVB(ブチラール)樹脂はポバールを主原料とする樹脂で、安全ガラスの中間膜、燃料電池用セルなどファインセラミックス用のバインダー、塗料・インク用のバインダーなどの用途に幅広く用いられる。
PVBフィルムは、その優れた透明性、ガラスとの接着性、耐貫通性を生かし、建築用の安全合わせガラスや自動車のフロントガラスなどの中間膜に使用されている。近年は太陽電池の封止材用途へも拡大している。
EVOH(エチレン・ビニルアルコール共重合体)樹脂のエバールはプラスチックの中で最高の気体遮断性をもつ機能性樹脂で、酸素を遮断して内容物の劣化を防ぐことから、各種食品包装材に広く使用されている。またプラスチック製ガソリンタンクや、床暖房用のパイプなど食品包装以外の分野でも需要が広がっている。
1972年にクラレが世界で初めて工業化した。クラレの世界シェアは約65%。
クラレは酢ビ系化学製品で自社開発とM&Aを融合し、事業を拡大、世界4極展開を図っている。
同社の現状は以下の通り。(数字は能力:千トン) |
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は今回の買収(能力不明) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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日本:
酢ビ:岡山工場で生産している。
1983年に中条工場の天然ガス法酢ビ(86.4千トン)を休止。PVAフィルム:
2007年初めは西条3100万m2、玉島3000m2の合計6100万m2であったが、
現状は 1億8000万m2となっており、2013年6月には西条増強で合計2億1200万㎡まで拡大する。
西条工場の増強では大型液晶テレビ用偏光フィルムのための幅5000mmの広幅タイプの生産ができる。
アジア:
クラレは1996年10月、シンガポールに日本合成化学との50/50JVのPoval Asia を設立したが、2008年1月付けでクラレ 100%になった。
2008年7月にアジア・オセアニアのポバール樹脂販売会社Kuraray Specialities Asia と統合し、Kuraray Asia Pacificとした。
欧州:
1) PVA、PVB事業
クラレは2001年にClariantのPVA、PVB事業を買収、Kuraray Specialities Europe GmbH を設立した。
工場はフランクフルトで、能力はPVA 50千トン、PVB 16千トンであった。その後増強。
2006年9月にKuraray Europeが吸収合併した。
2) PVBフィルム(Trosifol)
2004年11月にRütgers AGの子会社HT Troplast社から買収した。
工場はドイツのトロイスドルフとロシアのニジニノヴゴロド(子会社 Trosifol)で、能力はドイツが34千トン、ロシアが2.5千トン。
これにより、PVA樹脂→PVB樹脂→PVBフィルムの一貫体制を完成2012年3月、世界的なPVBフィルムの需要拡大(特に新興国を中心に伸長する自動車用途)に対応し、増強を決定(能力非公表)。2013年11月稼働 。
3) Eval Europe
1999年にベルギーのアントワープでエバールの生産を開始した。
4) MonoSol (ポバールフィルム)英国:下記
米国
当初、Eval Company of America を設立し、1986年にテキサス州パサディナでエバールを生産開始した。
その後、 Kuraray Americaに吸収合併した。2011年1月に酢ビ・ポバール事業の拡大のため、エバール工場の近くに土地を購入。
2012年にPVA樹脂40千トンの建設決定(2014年9月完工予定)クラレは2012年5月、米国のポバールフィルムのメーカーのMonoSol社を買収すると発表した。
MonoSolは、洗剤・農薬・染料などの個包装、人工大理石離型用など産業用ポバールフィルムではリーディングカンパニーの位置にある。
本件買収により、クラレはポバールフィルムに関し、偏光フィルム向けの光学分野だけでなく、広範な産業分野においてもグローバルリーダーとなるとしている。
工場は米国と英国。クラレは2012年6月、テキサス州ラ・ポルテ市でのポバール樹脂生産設備の新設を決定したと発表した。
生産能力:第一期 40,000トン/年、2014年9月完工予定
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