米パイプライン運営大手 Kinder Morganは8月10日、同社がグループの上場投資事業体のMaster Limited Partnership (MLP) 等の投資家から総額710億ドルで持分や株式を買い取るなどして、単一企業に統合すると発表した。
Kinder Morgan Inc. はRichard D. Kinder(現会長兼CEO)とWilliam V. Morgan(前副会長)が1997年にEnron CorporationからEnron Liquids Pipeline Companyを40百万ドルで買収したのが始まり。(現在のKinder Morgan Energy Partners, L.P.)
二人はこれをMLPのシステムを利用し、今までにないエネルギー会社に育てた。
MLP(Master Limited Partnership)はエネルギーインフラへの投資促進を目的として、1980年代に米国で誕生し、その後発展してきた共同投資事業形態の1つで、Limited Partnershipのもつ米租税法上のメリットと上場株式の流動性を併せ持つ。
MLPは経営にあたるGeneral Partner と一般投資家のLimited Partner から成る。
MLPはニューヨーク証券取引所やナスダック等で取引されている。Limited Partnerは事業収益の一部を配当として受け取る。配当は必ずしも現金で支払われる必要はなく、内部留保とすることができる。
MLP自体には法人税がかからず、課税は個々のLimited Partnerに対して行われる。
内部留保となった配当に対しては、Limited Partnerは自分の持ち分を売却するときまで課税を先送りできる。
ただしMLPはその収益の9割以上は利息配当収入、不動産賃料、天然資源、商品によるものでなければならない。
原油や天然ガスの採掘・輸送など安定収益が見込める事業を行っている会社が多い。
エネルギー会社は石油やガス価格の変動で損益が変動するが、パイプライン会社は長期契約で設備利用料を受け取るため、安定した収益が期待できる。
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同社は1999年にNatural Gas Pipeline Company of America (NGPL)を所有するKN Energy を買収した。(現在のKinder Morgan, Inc.)
2001年に Kinder Morgan Management, LLCを設立した。
2011年10月にEl Paso Corporation を380億ドルで買収した。(現在のEl Paso Pipeline Partners, L.P.)
同社はその後 改組し、現在の形態は以下の通りとなっている。
Kinder Morgan, Inc. | 両MLPのGeneral Partner、Kinder Morgan Management の株主 |
Kinder Morgan Management, LLC | Kinder Morgan Energy PartnersのGeneral Partner |
Kinder Morgan Energy Partners, L.P. | MLP 46,000 milesのパイプライン(天然ガス、ガソリン、原油、CO2、その他) 180のターミナル(石油製品、化学品を貯蔵、エタノール、石炭、石油コークス、鉄鋼を取り扱い). |
El Paso Pipeline Partners, L.P. | MLP 13,000 miles のパイプライン 100Bcf 以上の天然ガス貯蔵能力 |
Cochin Reversal NGL pipeline はイリノイ州からカナダのFort Saskatchewanに light condensate を輸送。
Kinder MorganはShellとのJVを設立し、ジョージア州Savannahの近くのEl Paso Pipeline の既存のElba Island LNG Terminalに 2段階で天然ガス液化プラントを建設する。
CO2の供給も同社の事業の一つで、子会社のKinder Morgan CO2 Company はCO2の最大の販売業者かつ輸送業者。2013/1/30 Shell、LNG輸出用の天然ガス液化プラント建設
CO2は地下のドームから高純度で取り出され、老朽油田での原油の増進回収(enhanced oil recovery)に使用される。同社が権利を持つコロラド州の McElmo Dome は世界最大のCO2埋蔵量を持つ。
今回、Kinder Morgan,
Inc.はKinder Morgan Management, LLCの株主と、Kinder Morgan Energy Partners, L.P.、El
Paso Pipeline Partners, L.P.の両MLPの権益所有者からKinder Morgan,
Inc.の株式と交換に全ての株式・権益を買い取る。MLPの場合は現金での買い取りも行う。
これにより、全ての事業が一つの経営体となる。
統合の目的は、事業の拡大である。
パイプライン会社は長期契約で設備利用料を受け取るため、安定した収益が期待でき、実際に同社は高配当であるが、税制上利点のあるMLP という仕組みがあまりに複雑であり、事業の拡大の支障となっている。
今後は一般会社として、M&Aを活用した事業拡大をめざす。
Kinder会長は投資家向け電話会見で「当社は幅広いプラットホームを持っている。石油ガス関連のミッドストリーム分野なら事実上何でもわれわれに適している」と述べた。「コア事業からそれることはない」とも述べ、トラック輸送や鉄道を買収することはないとしている。
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