中国、自動車部品メーカーの価格カルテルの取締りを強化へ

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中国の 独占禁止法違反調査が完成車のほか、自動車部品分野に及んでいる。

中国国家発展改革委員会(NDRC)は昨年来、自動車メーカーが中国のディーラーに最低卸価格を決めていないかどうかを調査している。
最低価格設定は独禁法違反となる。

2013/8/19 中国当局、輸入車などの独占価格調査を開始 

NDRCの独禁法違反に関する調査は、完成車の価格のみに限られず、完成車販売後の部品供給ルートの独占、ディーラーの価格 つり上げ・地域限定の販売に向けられている。
これは水平・垂直方向の独占、市場の支配的な地位の濫用など、独占禁止法の疑いがある 行為の取り締まりを目的としている。

海外資本の企業は中国で、自動車部品販売の大半のシェアを占めている。
国産部品の売上は、2012年に全業界の20-25% のみとなり、外資の背景を持つ部品メーカーが75%以上を占めた。
これらの外資系部品サプライヤーのうち、100%出資企業が55%、 中国との合弁企業が45%を占めた。

NDRCは日米欧の高級車を中心に、完成車メーカーと部品メーカー、販売会社などが純正部品の価格を不当に高く維持する取り決めをしている疑いがあるとみて調査しているとみられる。

この問題について、商務部の報道官は8月9日、「中国においては国内資本企業であれ、外資系企業であれ、法律を犯せば制裁を受け、相応の法的責任を負うことになる」とコメントした。

独占の疑いのある行為に対し法律に基づいて調査を実施するのは、公平な競争を促進し、消費者の権利を守るための重要な取り組みだ。
独占行為の調査摘発は国際的に行われている。
中国は「反独占法」を施行してから6年になり、独占調査を受けた企業には国内企業もあれば外資系企業もある。反独占法の前に、すべての企業は一律に平等で、「排外的状況」などというものは存在しない。

中国汽車維修(自動車メンテナンス)協会は2014年4月、国内で一般的に流通している車種の「零整比」 (zero integer ratio)を発表した。

零整比は部品価格と完成車価格の比率を示す数値で、北京ベンツの「ベンツCクラス(W204)」の場合、この数値は1,273%に達する。 これは中国で同車種のすべての部品を取り替える場合、その費用が新車12台分に達することを意味する。
2位のトヨタ Yaris の場合も720%(7.2倍)となっている。

業界関係者は、「海外のデータによると、300%前後が最も一般的だ」と指摘している。

 

零整比

Mercedes-Benz C-Class 1,273.31%
トヨタ Yaris(ヴイッツ) 720.28%
BMW 3 シリーズ 320i 661.74%
トヨタ カムリ 503.80%
Mercedes-Benz S-Class 441.30%
Audi A6L C6 411.30%
BYD F3R 409.02%
トヨタ レクサス ES 350 408.87%
Volkswagen Bora 404.06%
ニッサン Tiida 375.92%
Audi A4L 351.25%
ホンダ Accord 342.66%
Citroen 308.82%
Volkswagen Passat 306.90%
Buick Excelle 283.95%
Volkswagen Lavida 272.75%


NDRCの動きを受け、各社は完成車と部品の値下げに動いている。

ここ10数日間に、ジャガーランドローバー、ベンツ、アウディ、クライスラーの4メーカーが完成車価格および部品価格を調整した。
これらメーカーの主力製品の多くは、高価格の高級車や輸入車で、どちらも国内と国外との価格差が非常に大きく、部品価格と完成車価格との差も非常に大きく、暴利との批判を受けている。
ジャガーランドローバーの場合、値下げ後も一部製品の価格は欧米市場での販売価格の3倍前後になるという。

多くのメーカーは厳罰を回避することは難しいと考え、主体的な値下げによって少しでも処分を軽くしようとしているとの分析がされている。

「反独占法」の規定によると、独占行為があった企業は最高で年間売上高の1%以上、10%以下の罰金を科される。
ベンツやアウディなどは売上高が巨額のため、罰金額も巨額になる可能性がある。

粉ミルク 液晶パネルなどの産業に対して行った独占調査では、企業が主体的に調査に協力した場合は罰金額の引き下げや免除を受けられることもあった。
 (明治ホールディングスなどは罰金を免除された。)

東風日産、広汽ホンダ、広汽トヨタは8月8日に一部部品の価格を値下げ調整することを明らかにした
3社とも具体的にどの製品を値下げするか、値下げ幅はどれくらいかを明らかにしていない。

3社はNDRCの調査や問い合わせを受けたと説明しており、補修に使う部品の価格が高すぎるとの指摘を受けたとみられる。

主な動き:

トヨタ 広汽トヨタ自動車(広州汽車集団とのJV)は8月8日、ウェブサイトで一部部品を8月18日から引き下げると発表
「レクサス」をめぐり「当局の問い合わせには前向きに対応している」と説明
ホンダ 広汽ホンダ(広州汽車集団とのJV)は9月1日から一部部品について値下げを行うと説明した。
日産自動車 東風汽車(東風汽車集団とのJV)は、改善方法を積極的に検討していると述べた。
Mercedes-Benz 8月3日、自主的に中国市場の部品価格の調整を発表
(8月4日にNDRCが上海事務所の立ち入り調査)
Audi 8月1日から値下げすると発表した。
TFSIエンジンが22%、マルチトロニック変速機が38%、車体が16%、アンチロック・ブレーキ・システムが25%など。
値下げ後に「A6L」の「零整比」は従来の411%から291%に低下する。  
BMW 中国で提供する約2000個の自動車部品の価格を8月11日から平均20%引き下げると発表した。
空調用コンプレッサーやブレーキ盤など補修用部品が対象
クライスラー クライスラー中国自動車販売有限公司が一部の製品・部品の価格を調整したことを明らかにした。
「Jeepグランドチェロキー ART8」や「チェロキー」を値下げ。
ヘッドライト、バックミラー、スターターなど145種類の部品の価格を20%値下げする。

 

自動車メーカーとは別に、中国国家発展改革委員会(NDRC)は8月6日、自動車部品とベアリングの価格カルテルに絡む日系企業12社に対する調査を完了したと発表した。
近く、
「反独占法」に基づき、12メーカーにはそれぞれ1億元(16.5億円)以下の罰金が科されることになる。

これらは
、クライスラーやアウディが行った「第三者への製品転売価格に制限を加えることに合意した縦方向の独占」とは異なり、「横方向の独占」といえるもので、たとえば入札の過程で複数の企業が密かに示し合わせて、1社が低い入札価格をうち出すと、他社がそれより高い価格をうち出すという方法で、順繰りに落札するというものだったとしている。

中国は日本製自動車部品に対する依存度が高く、2013年の日本からの自動車部品輸入額は95億8千万ドルで、自動車部品輸入全体の27%を占めた。
日本部品が各部品の輸入全体に占める割合はトランスミッションやクラッチがいずれも45%に達し、制動装置は33%に達し、日本はコア部品の輸入でドイツをはるかに上回る。

人民網は日系部品メーカーが部品価格を操作したとして、米国や欧州で摘発され、多額の罰金を課せられたことを伝えている。


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自動車部品については日米欧の独禁法当局が摘発している。

日本 2012/1/28  公取委、自動車用ワイヤーハーネスのカルテルで課徴金 

2012/11/24  公取委、自動車メーカー発注の自動車用部品コンペ参加業者に 排除措置命令と課徴金納付命令

ベアリングカルテルについて2013年3月29日、排除措置命令及び課徴金納付命令

米国 2013/10/1 米司法省、自動車部品カルテルで更に9社、2名と司法取引 

2014/8/11現在で、27社(ほとんどが日系)が罰金支払いで同意。
他に、36名が起訴され、うち26名が禁固刑と罰金支払いで同意、残り10名が起訴段階。

EU 2014/3/22 EU、ベアリングカルテルで制裁金

ワイヤーハーネス、自動車用マットレス・シートでも。
他に、エアバッグ、安全ベルト、ハンドル、エアコン、エンジン冷却製品、照明システムなどで調査を進めている。


 


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