中国の外資系企業に対する独占禁止法調査

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昨日の記事で自動車および自動車部品についての中国の独禁法調査について述べた。

中国商務部は「独占調査を受けた企業には国内企業もあれば外資系企業もある。反独占法の前にすべての企業は一律に平等で、『排外的状況』などというものは存在しない」とするが、外資が高いシェアを握る業種が標的になるケースが多く、外資企業には、『外資たたき』で自国企業を保護する思惑では、との警戒感も出ている。

2013年以降の調査対象は以下の通り。

独禁法違反企業に対しては、調査協力や是正の程度に応じて、罰金を軽減している。

なお、中国の独禁法執行機関は、企業結合が商務部、独占的協定(カルテル)が国家発展改革委員会(NDRC)、支配的地位の濫用行為については国家工商行政管理総局(SAIC)となっている。


1)液晶パネル価格カルテル

中国国家発展改革委員会は2013年1月4日、LG電子、サムスン電子など韓国、台湾の液晶メーカー6社がカルテルを結んで液晶パネルの販売価格を不当につり上げていたとして、総額353百万人民元(約49億円)の制裁金を科したと発表した。

制裁金353百万元のうち、144百万元が罰金となっている。不当利得208百万元のうち、172百万元は需要家に返却させ、37百万元は没収された。

各社の期間中の販売個数と制裁金は以下の通り。

      販売個数     制裁金 個数当たり
制裁金割合
LG電子 192.70 万片 118.00

百万元

     0.5
三星電子 82.65   101.00        1.0
群創光電 156.89   94.41        0.5
友達光電 54.94   21.89        0.33
中華映管 27.06   16.20        0.5
瀚宇彩晶 0.38   0.24        0.5


三星以外は協力し、制裁金が減額された。友達光電は最初に違反行為を認めたため、需要家への返却は命じられたが、罰金は免除された。

2013/1/9  中国政府、価格カルテルで外資に制裁金


2)粉ミルク価格操作

国家発展改革委員会(NDRC)は2013年8月7日、乳児向け粉ミルクの価格操作と独占禁止法違反をめぐる調査の結果、米Mead Johnson Nutritionほかの計6社に合計109百万ドルの罰金支払いを命じた。

各社は卸売業者に対する契約で最低販売価格を制限し、違反者に罰金を課したり、リベートをカットしたり、商品供給を制限するなど行ったとしている。

  罰金
(千人民元)
売上高比
(2012年)
備考
Mead Johnson Nutrition(米) 203,800  4%

積極的に協力せず。

Dumex Baby Food(仏)Danone 子会社 172,000 3% 調査に協力
Biostime International (香港)
合生元国際
162,900 6%

違反行為がひどく、是正措置を取らなかった。

Royal FrieslandCampina(蘭) 48,000 3% 調査に協力
Fonterra Co-operative Group (NZ) 4,000 3% 調査に協力
Abbott Laboratories (米) 77,000 3% 調査に協力
Wyeth Nutrition(スイス)Nestlé 子会社 免除 「独占禁止法執行機関に対して、独占に関する取り決めの関連情報を自発的に報告し、重要な証拠を提供し、かつ自発的に改善を行った。」
Zhejiang Beingmate Technology Industry and Trade
貝因美科工貿(中国)
免除
明治ホールディングス 免除
合計 667,700
(109百万ドル)
   


2013/8/9   中国で販売価格を巡る2つの独禁法違反事件


3)無線通信技術(調査中)

NDRCは2014年2月に、携帯電話向け半導体大手の米Qualcommが無線通信市場での地位を乱用し、価格の吊り上げなどに関与した疑いがあるとして調査に着手する意向を明らかにした。
中国はQualcommが収益の約半分を稼ぎ出す主要な市場。

2014年7月24日、NDRCはQualcommが市場を独占しているとの判断を示したと報じられた。

NDRCが独占的地位の乱用を認めた場合、Qualcommは10億ドル以上の制裁金を科される可能性がある。


付記

NDRCは8月22日、Qualcommが価格設定を是正する方針を示したと明らかにした。


4)無線通信技術

NDRCは2014年2月、上記のQualcommに加え、米InterDigitalについても独占禁止法に基づく調査を行っていることを明らかにした。

InterDigitalは2014年5月22日、NDRCが同社の調査を停止したと発表した。

同社は条件として、中国の携帯電話メーカーに標準規格必須特許をFRAND(Fair, Reasonable, and Non-discriminatory)条件でライセンスすること、中国の携帯電話メーカから特許等の無償ライセンスを受ける条項を入れないことなどをコミットした。


5)メガネ用レンズ、コンタクトレンズの販売価格維持

NDRCは2014年5月29日、眼鏡用レンズ及びコンタクトレンズのメーカー計5社による再販売価格維持に関する処分を公表した。罰金合計は1,957万元。

  罰金 万元 売上高比 備考
上海Essilor光学(フランス系) 879.02 2% 自主的に違法行為を改めた。
北京ニコン眼鏡 168.48 2% 調査にあまり協力しなかったが、自主的に違法行為を改めた。
カールツァイス(広州) 176.6 1% 調査に積極的に協力し、自主的に違法行為を改めた。
北京ボシュロムアイケア製品
 
369 1%
ジョンソン視力健商貿(上海) 364.37 1%
HOYA(上海)光学 免除 執行機関対し独占合意を達成した関係状況を自主的に報告し、重要な証拠を提供し、かつ積極的、自主的に違法行為を改めた。
上海衛康眼鏡(中国系) 免除


ボシュロム(Bausch+Lomb)は2013年8月に
カナダの特殊医薬品メーカーのValeant Pharmaceuticals Internationalが買収した。


6)ソフトウエアの抱き合わせ販売(調査中)

中国の国家工商行政管理総局(SAIC)は2014年7月29日、Microsoft中国法人に対し、独占禁止法j違反の疑いで抜き打ちの立ち入り検査をしたと発表した。
北京と上海、広州(広東省)、成都(四川省)の4事務所を予告なしに訪れて幹部から事情を聴き、パソコンや文書などを押収したという。

SAICは8月6日、北京と遼寧省、湖北省、福建省のMicrosoft事務所を強制捜査したことをウェブサイト上で認めた。同時にITコンサルティング企業でマイクロソフトが財務関連の業務を委託しているAccentureの複数の事務所を強制捜査した。

基本ソフトWindowsと「Microsoft Office」に関する互換性などの問題に絡み、2013年6月以降独占禁止法に違反している疑いがあるとしている。
同社の製品は互換性と文書認証に関する中国の規則に違反しているおそれがあり、事実上、中国の消費者は必要以上に多くのMicrosoft製品の使用を強いられているとする。

 

 

 

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