三井化学ファインは8月21日、抗生物質が効かない多剤耐性菌にも抗菌・除菌効果を発揮する高分子コロイドの販売を開始すると発表した。
世界初の抗菌・除菌メカニズムである。
今後、多剤耐性菌による感染の効果的な防止対策として、抗菌・除菌スプレーやウエットティッシュ、衛生衣服などの製品開発を需要家と共に進めるとしている。
多剤耐性菌とは細菌のうち、変異して、多くの抗菌薬(抗生剤)がきかなくなった細菌のことで、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)、VRE(バンコマイシン耐性腸球菌)、MDR-TB(多剤耐性結核菌)などさまざまなものが全国に広がっている。
従来の抗菌・除菌剤は、薬理作用によって細菌の組織合成を阻害したり、機能を阻害することで効果を発揮する。
しかし、細菌が抗菌成分を無効化する酵素を作り出すことなどで、耐性菌へと変化する可能性がある。
今回の高分子コロイドは、城武昇一・高知大学医学部特任教授(元横浜市立大学大学院客員教授)が、細菌の構造と増殖過程に着目し開発したもの。
外科的用瞬間縫合剤のn-Butylcyanoacrylate と重合安定剤として糖類を使って粒径数百ナノメートル程度のナノ粒子を合成し、水に安定的に分散させたもので、特異な網目構造を持ち、菌の細胞壁のペプチドグリカンと特異的に結合する。
細菌は成長しようとするが、吸着した部分の細胞壁部が成長できず、アンバランスな成長となり、細胞の内圧を保つことができず、風船が破れるように自己融解する。
動画 https://www.youtube.com/watch?v=MdfV-Hfo2JM&feature=youtu.be
黄色ブドウ球菌や大腸菌などの細菌に加え、多剤耐性菌に対しても抗菌活性を有する。
また、これはエステラーゼ等の水解酵素によって生分解されるの、身体のなかで蓄積等の懸念はない。
エタノールや次亜塩素酸などの従来の抗菌・除菌特性を持つ低分子量化合物と異なり、高分子体であるため、揮発せずに安定的に留まり、抗菌・除菌機能が持続する。
通常の明所実験室・室温で3年間保存しても安定で、抗菌活性も保存前と変わらず、一般生活環境において実用化が可能な抗菌・除菌剤用原料として期待される。
城武教授はこの高分子ナノ構造体の国際特許を出願済みで、植物の病原細菌用抗菌剤としての特許も出願している。
また、同系列の作用機序を活かした抗腫瘍効果を有する高分子ナノ構造体も開発中。
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