中国国家発展改革委員会(NDRC) は2014年8月20日、日本の自動車部品メーカー12社にカルテルで総額約200億円の制裁金を課したと発表した。
2014/8/20 中国が日本の自動車部品メーカー12社にカルテルで制裁金
NDRCは9月18日、日系企業12社に対して発行した行政処分決定書を公表し、法律違反の事実を明らかにした。
それによると、2001年1月から2010年2月にかけて、日立オートモティブシステムズ、日本電装、愛三工業、三菱電機、ミツバ、矢崎総業、古河電工、住友の日系自動車部品メーカー8社は、競争を避け、最も有利な価格で自動車メーカーから部品を受注できるようにするため、日本で2社間や多社間の話し合いを頻繁に行い、価格を協議し、たびたびオファー価格を示し合わせ、示し合わせた価格をうち出してきた。
また、不二越、日本精工、ジェイテクト、NTNのベアリングメーカー4社は、2000年から2011年6月にかけて、日本でアジア研究会を発足させ、上海で輸出市場会議を開き、アジア地域と中国市場での価格引き上げの方針、引き上げのタイミング、引き上げ幅について話し合ったとしている。
発表は各社ごとに、独占行為を行っていた期間、価格操作の方法、具体的な製品名、処分の根拠、裁量の基準などについて詳しく説明している。
既に日立オートモティブシステムズと不二越が「最初に通報し、重要証拠を提出した」としてリニエンシー制度で制裁金を全額免除されたことが明らかになっているが、他の企業も全てが自主申告していることが分かった。
通常は申告の早さや情報の重要度が考慮され減免を受けるが、今回の場合、制裁金の売上高比率(2番目通報以外は違反の程度による)と対応しているのが面白い。
中国語しか入手できていないが、Google翻訳で中国語から英語に翻訳すると大意が分かる。
中国進出企業の間では、中国当局が独禁法を国内産業保護のための「外資たたき」に利用しているとの懸念が強まっている。これに対し、李克強首相は天津の夏季ダボス会議の席上、これを否定した。
参加した国際ビジネス界の関係者の多くから、中国政府が反独占措置を採用する際には、法執行の透明性を高めると同時に、企業とのやりとりにもっと力を入れるべきであり、こうすれば誤った見方を減らすことができるとの声が上がった。
NDRC価格監督検査・反独占局副局長は、「これまで行政処分責任書を全文公開したことがなかったのは、主として企業が企業秘密の漏洩や名誉の毀損を懸念することに配慮したためだ。独占行為に対する罰金を申し渡された企業は、一般的に政府機関にあまり情報を公開しないでほしいと考える。
このたび関連の処分決定書の全文を公開したのは、法執行の情報を公開し、社会の監督を受け入れる一つの試みであり、今後は公開度がより高まり、社会の監督を受け入れるようになる」と述べた。
今回の発表は、「外資たたき」の批判に対し、中国の透明性を示すためのものと思われる。
特に、全12社が自主申告していることを明らかにしたことは、「外資たたき」ではないことを強調するためと思われる。
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自動車部品については、日本、米国、EU、カナダなどでもカルテルが摘発されている。
米司法省は2014年9月18日、三菱電機の元幹部社員2人と現役幹部社員1人、日立オートモティブシステムズの現役幹部社員4人の合計7人を起訴したと発表した。
三菱電機の2人は証拠隠滅の罪でも起訴された。
三菱電機は既に190百万ドル、日立オートモティブシステムズは195百万ドルの罰金を払っている。
一連の事件で、25社(+外国企業3社)が司法取引で罰金を払っており、個人としては43人(うち日系企業の外人1人、外国企業の日本人1人)が起訴され、うち26人が司法取引で禁固刑と罰金刑を受けた。(17人は未決)
2013/10/1 米司法省、自動車部品カルテルで更に9社、2名と司法取引 に現在までのものを付記している。
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別件で、湖南省長沙市中級人民法院(地裁)は9月19日、GlaxoSmithKline
の現地法人GlaxoSmithKline (China) Investmentに対し罰金30億元(約530億円)を科す判決を言い渡した。
同社幹部だった被告5人(英人1人と中国人4人)は執行猶予付きの懲役2~3年とした。そのうち中国事業トップであったMark
Reillyは執行猶予付き懲役3年で、国外退去とした。
中国で科された罰金額としてはこれまでで最高で、同社と各被告側は罪を認めており、上訴しない方針。
2013年7月、当局は GlaxoSmithKlineの上海市、湖南省長沙市と、河南省鄭州 市の事務所を急襲し、社員を拘束した。公安部はその後、4人の役員を深刻な経済犯罪を犯したとして刑事強制措置を行った。
同社は市場の拡大と医薬品価格の引き上げのため、政府の役人や医薬協会、病院や医師に多額の賄賂を支払ったとされる。
更に、違法行為のための現金を得るために増値税(付加価値税)専用の虚偽の伝票を使用した、旅行会社を通じて偽の伝票を発行した、虚偽の普通伝票を発行して現金を詐取したといった犯罪行為があったという。また、その地位を利用して、旅行業者から賄賂やキックバックを受け取っていた。
2013/7/18 中国、GlaxoSmithKline を贈賄の疑いで捜査
本件や、自動車及び自動車部品カルテルの摘発は、外資企業への不正監視を強める習指導部の方針の表れと見る向きが多い。
(中国の立場で見ると、外資企業に限らず、国内企業も含めた企業の不正監視を強めるということとなる。)
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