2014年イグ・ノーベル賞

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イグ・ノーベル賞の2014年の授賞式が9月18日、米マサチューセッツ州ケンブリッジのハーバード大で行われ、「バナナの皮を踏むとなぜ滑りやすいのか」を実験で解明した北里大医療衛生学部の馬渕清資教授と、健誠島大地、利奈の各氏のチームが物理学賞を受賞した。

日本人のイグ・ノーベル賞受賞は8年連続。

「バナナの皮を踏むと滑る」のはよく知られているが、「摩擦係数」を、実際に調べた研究はこれまでなかった。数十本のバナナを買い込み、むいた皮を測定器の上で踏みつけて、摩擦係数を測定した。その結果、皮の内側を下にして踏みつけると、皮がないときの約6倍も滑りやすくなることが判明した。

馬渕教授らは、バナナの皮の内側にたくさんあるゲル状物質(小胞ゲル)を含んだカプセルのような極小組織が、靴で踏まれた圧力でつぶれ、にじみ出た液体が潤滑効果を高めることを突き止めた。

バナナの皮の滑りやすさは、リンゴやオレンジの皮より数倍高く、雪の上に乗せたスキー板の滑りやすさに迫るほどだった。バナナは、甘みを増すために品種改良を重ねたことで、粘液成分が多く含まれるという。

馬渕教授は、人の関節が滑らかに動く仕組みなどを研究する「バイオトライボロジー」(生体摩擦学)が専門で、研究成果は人工関節への応用に役立てている。

授賞式で馬渕教授は、関節の摩擦を減らす原理はバナナの皮の粘液による滑りやすさと共通していることを、歌やパネルで示して会場を沸かせた。

過去のイグ・ノーベル賞については、下記を参照。

2006/10/13 ノーベル賞とイグ・ノーベル賞
2007/10/8  2007年イグ・ノーベル賞
2008/10/4  2008年イグ・ノーベル賞
2009/10/3 
2009年イグ・ノーベル賞
2010/10/7  2010年ノーベル化学賞とイグ・ノーベル賞
2011/10/1  2011年度イグノーベル賞 
2012
/9/25   2012年 Ig Nobel 賞に日本人の「スピーチジャマー」

2013/9/16   2013年 Ig Nobel 賞、日本の2チームが受賞

このうち、中垣俊之教授らのチームは、2008年に真正粘菌変形体という巨大なアメーバ様生物が迷路の最短経路を探し当てることができることを発見し認知科学賞を受けたが、2010年にはその延長で、粘菌が交通網を整備することを発見し、交通計画賞を受賞した。

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授賞式では、2005年に「栄養学賞」を受賞した発明家のドクター・中松(中松義郎氏 86歳)が、闘病中のがんの新たな治療法の「発明」について基調講演した。

2005年「栄養学賞」
     36年間にわたり自分が食べたすべての食事を撮影し、食べ物が頭の働きや体調に与える影響を分析

中松氏は本年6月に「前立腺導管がん」の末期状態であることを明らかにしているが、式後、「世界に向かってがんを克服する決意を述べました」と話した。

同氏は5歳の時に発明を始めて以来、14歳で灯油の給油ポンプをつくり、大学2年生でフロッピーディスクの基本原理を考案した。 「治療法がないんだから、自分で発明するしかない」とし、自らの体を使って、がんの治療法を研究している。

今回の基調講演で発表した「発明」もその一つで、がん細胞が好むたんぱく質などの栄養素を排除したという食品。


また、2013年にSoylentをつくった米国のRob Rhinehartも スピーチした。

Soylentは生存に必要な栄養素が粉末になっており、これを水に溶かして飲む。

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今回の受賞一覧は下記の通り。

  受賞者 受賞理由
物理学賞 日本  床の上のバナナを踏んだ時の、靴とバナナの皮、バナナの皮と床の間の摩擦係数の測定
参考文献:Frictional Coefficient under Banana Skin
神経科学賞 中国・カナダのチーム トーストの焦げ目がキリストの顔に見える脳の仕組み解明
Seeing Jesus in Toast: Neural and Behavioral Correlates of Face Pareidolia
心理学賞 豪・英・米のチーム 習慣的に遅くまで起きている人は、習慣的に朝早く起きる人と比べて、平均して、より自画自賛的で、より巧みに人を操作し、より精神病質であることの証拠を集めた。
Creatures of the Night: Chronotypes and the Dark Triad Traits
公衆衛生賞 チェコ、米、インドのチーム 人が猫を飼うことは精神的に有害であるかどうかの調査
Changes in personality profile of young women with latent toxoplasmosis ほか
生物学賞 チェコ、独、ザンビアのチーム  犬が排泄するときに、地球の南北の磁力線に体を向けることを発見
Dogs are sensitive to small variations of the Earth's magnetic field,
芸術賞 イタリア 強力なレーザービームを手にあてられながら、醜い絵画を見るときと、美しい絵画を見るときとの人間の苦痛度の測定
(美しい絵画の方が苦痛が少ない)
Aesthetic value of paintings affects pain thresholds
経済学賞 イタリア政府統計局 EUの基準の達成のため、売春、麻薬取引、密輸や、その他の違法な資金取引を入れてGDPを引き上げた。
European System of National and Regional Accounts (ESA 2010)
医薬賞 米・インドのチーム 塩漬け豚で鼻をパックして、ひどい鼻血を治療
Nasal Packing With Strips of Cured Pork as Treatment for Uncontrollable Epistaxis in a Patient with Glanzmann Thrombasthenia,
北極科学賞 ノルウェー・独のチーム 北極熊の扮装をした人間を見たトナカイの反応の調査
(ハイキング姿の時よりも2倍の距離を逃げた)
Response Behaviors of Svalbard Reindeer towards Humans and Humans Disguised as Polar Bears on Edgeøya
栄養学賞 スペイン 発酵ソーセージ用のバクテリアの種培養としての、幼児の排泄物から分離した乳酸菌の評価
(幼児の排泄物からは109種の乳酸菌が見つかったが、どれが最適かを調査)
Characterization of Lactic Acid Bacteria Isolated from Infant Faeces as Potential Probiotic Starter Cultures for Fermented Sausages

 

 



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