DSM、農業廃棄物からバイオエタノールを生産

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DSMは9月3日、世界最大手のエタノール生産会社 POETとの合弁会社「POET-DSM Advanced Biofuels, LLC」が農業廃棄物を原料とする先進型バイオ燃料(セルロース系エタノール)の商業生産を開始したと発表した。

オランダ国王や米農務長官、エネルギー省副次官、アイオワ州知事などの列席のもと、アイオワ州 Emmetsburg の米国初の商業規模の生産工場「Project LIBERTY」の開所式が開催された。

Project LIBERTYの概要は以下の通り。

セルロース系エタノールの年間生産量 2,000万ガロン(将来的には2500万ガロン)
LIBERTY生産のセルロース系エタノールの特徴 ガソリンと比較し、85-95%の温室ガス削減
農業廃棄物の年間購入量 2,000万ドル分 ⇒農業者への追加収入となる。
農作地における農業廃棄物の排除量 1エーカーに対し約1トン (25%相当)
農業廃棄物年間消費量 285千トン(半径45マイルの地域から回収)
アイオワ州への貢献 20年間で244億ドルと推計

* 1ガロンは3.785リットル

セルロース系エタノールは、一般的なバイオエタノールと違いトウモロコシの廃棄されていた非可食部(穂軸、葉、殻や茎など)を原料とするため、農業廃棄物問題の軽減だけでなく、食料供給問題との競合の心配もない。

トウモロコシの農業廃棄物を集め、セルロースを30種の酵素と酵母で糖分に分解し、その糖分を微生物によりバイオエタノールへと変換する。

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POET-DSM Advanced Biofuels, LLC はDSMとPOETの両社の50/50JV。

POETは世界最大手のエタノール生産会社の一つで、設立から25年の歴史をもち、27の生産拠点で年間で16億ガロンを超えるエタノールと、高タンパク質動物用飼料を生産している。

1987 年にトウモロコシ農家のBroin家によって設立され、当初は Broin Companies と称した。

DSMとPOETは別々にセルロース系エタノールの技術開発に取り組んできた。

POETは2008年11月に、サウスダコタ州 Scotlandにある同社研究センター内にパイロット・プラントを稼働させた。
農業事業者と協力して、トウモロコシの非可食部を圧縮梱包、運搬、貯蔵している。

DSM は、この生産技術を商業的に利用可能にするために必要な、エタノール変換効率を高める酵母剤と酵素剤の両方を提供できる唯一の企業であり、それによってセルロースエタノール開発で独自の地位を占めていた。

2012年1月23日、両社の技術を出し合い、セルロース系バイオエタノールを商業的に実証生産し、その技術を第三者にライセンスする50/50出資のJV、POET-DSM Advanced Biofuels, LLC を設立することが発表された。

アイオワ州 Emmetsburg の既存のコーンエタノール工場の隣接地にPOETが建設中のProject LIBERTYをJVに移して開発を進め、完成させた。
総工費は2億5千万ドルとされる。

エネルギー省は工場の設計、建設、バイオマスの回収、インフラなどのコストなどで1億ドルの支援を行い、アイオワ州も20百万ドルの支援を行った。

このバイオ燃料生産技術は、ライセンス化し、世界的に広めていく予定で、POET-DSM Advanced Biofuels では、バイオエタノール販売とライセンス収入により、2020年までに累計2億千万ドルの純売上高を見込んでいる。

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米国のこれ以外の主なセルロースエタノールの開発計画は以下の通り。(単位は百万ガロン/年)

  立地 原料 能力
 
Abengoa Bioenergy US Holdings
(スペインの多国籍企業)
Hugoton, KS 麦わら 25
 

BlueFire Renewables
(旧称 BrueFire Ethanol)

Fulton, MS 間伐材、都市ゴミなど 19
DuPont Biofuel Solutions Nevada, IA Corn stover 30
Fulcrum BioEnergy Reno, NV Municipal solid waste 10
Mascoma / Valero Kinross, MI Wood waste 20

 




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