JCRファーマ、「細胞医薬品」の製造販売承認を申請

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JCRファーマ(旧称 日本ケミカルリサーチ:2014/1改称)は9月26日、ヒト間葉系幹細胞(MSC)を利用した細胞性医薬品について、「急性移植片対宿主病(急性GVHD)」を効能、効果として、厚生労働省に製造販売承認申請を行ったと発表した。

同社では、承認を取得した際には、JR-031が日本初の細胞性医薬品として、移植片対宿主病の治療における新たな選択肢となることを期待している。

本製品は本年11月施行の改正薬事法に則り、再生医療等製品として製造販売承認申請を行っている。

 改正薬事法では、医薬品や医療機器とは別に「再生医療等製品」を新たに次のように定義した。

人の細胞に培養等の加工を施したものであって、
・ 
身体の構造・機能の再建・修復・形成や、疾病の治療・予防を目的として使用するもの
・ 遺伝子治療を目的として、人の細胞に導入して使用するもの

均質でない再生医療等製品については、有効性が推定され、安全性が確認されれば、条件及び期限付きで特別に早期に承認できる仕組みを導入する。
その場合、承認後に有効性・安全性を改めて検証する。

JR-031は2013年12月に、厚生労働省より希少疾病用医薬品の指定を受けた。

 

JCRファーマは、JR-031を造血幹細胞移植時に発生する重篤な合併症である急性GVHDの治療薬として、日本国内において開発を進めてきた。

急性移植片対宿主病(急性GVHD)は造血幹細胞移植後の患者の予後を左右する移植関連合併症の一つ。

移植された造血幹細胞に含まれる免疫担当細胞(リンパ球など)が、患者の身体を異物とみなして攻撃する疾患で、日本造血細胞移植学会によると年間約1200人が重いGVHDを発症 、このうち約500人は治療薬が効かず、死に至ることがある。

急性GVHDに対しては、第1段階の治療としてステロイドが投与されるが、ステロイド抵抗性急性GVHDに確立した治療法はな く、死亡率は70%に達すると言われている。

JR-031は、健康なドナーから採取した骨髄液から間葉系幹細胞を分離し、拡大培養して製造する細胞性医薬品である。
静脈内から細胞が投与され、その細胞自体が有する性質を利用して治療する。

 2014年4月25日の「NHK おはよう日本」で、ヒトの「治す力」使う "細胞性医薬品" として紹介されている。

白血病の治療を受けた患者が、副作用で全身に激しい炎症が起きた。炎症は全身の皮膚や肝臓、さらに腸まで広がり、深刻な症状を引き起こした。
最後に細胞性医薬品を使用した。

幹細胞を生きたまま点滴で投与すると、炎症を起こしている患部(赤い部分)を自から見つけ、集まっていく。(「ホーミング効果」)

幹細胞(黄色)は「サイトカイン」という物質を出し、炎症を抑えたり、傷ついた細胞を修復する。



いったんは命が危ぶまれる状況になった患者は、1ヶ月の投与で症状は消えた。


臨床試験を通じてJR-031がステロイドに対して抵抗性の患者に効力を発揮することが示された。

一般に細胞治療では、患者自身の細胞を用いる自家細胞治療が行われる。

臓器移植において移植された他人の細胞をリンパ球が外からの異物と判断し、これを攻撃し、破壊するため、機能喪失と壊死に陥る。

輸血では逆に、体内に入った他人のリンパ球が輸血を受けた人の細胞を攻撃するため拒絶反応が起こる。
最近ではこれを予防するため、輸血用血液からリンパ球を除いたり、放射線を照射しリンパ球の働きを弱めてから輸血することが多くなっている。

それに対してMSC製剤は、他人の細胞を移植しても免疫拒絶されにくい免疫調節機能を有するため、通常の医薬品と同様に、原料(健康なドナーから採取した骨髄液)を培養して大量に製造が可能であり、血液型等を合わせることなく不特定多数の患者への投与が可能である 。

また、自家細胞治療では細胞の加工の時間がかかるのに対し、MSC製剤はあらかじめ製造し凍結保存が可能なため、緊急時にすぐに対応できる。
同社では、緊急時にも速やかに臨床現場に届けられるよう、超低温輸送システムをメディパルホールディングスと共同開発を行っている。

日本医科大学の岡田教授は、幹細胞が炎症部分に集まるホーミング効果 に注目、癌の治療にも使えるとして研究を進めている。

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JR-031は米国のOsiris Therapeutics, Inc. が開発したもの(同社の製品名はProchymal®)で、小児におけるステロイド抵抗性急性GvHDに対する治療薬として、2012年5月にカナダ販売承認を取得、翌6月にニュージーランドでも承認を取得した。世界初の細胞性医薬品となる。

Osirisによると、小児患者の80パーセントまでが診断後わずか数週間で亡くなるとされる。

日本国内においては、JCRファーマが2003年8月にOsirisからMSCの利用および製造について技術提携契約を締結した。

なお、その後、OsirisがMSCに関する権利を豪州のMesoblast Limited に譲渡したことに伴い、JSRファーマの権利のライセンサーもMesoblast に変更された。

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JCRファーマは希少疾病に特化したバイオ医薬品企業として、ライソゾーム病も含めた様々な希少疾病に対するバイオ新薬の開発を進めている。

ライソゾーム病は、細胞内にある小器官の一つであるライソゾーム (lysosome)に関連した酵素が欠損しているために、分解されるべき物質が老廃物として体内に蓄積してしまう先天代謝異常疾患の総称。

数あるライソゾーム病の中には、既に治療薬が存在しているものもあるが、効果が限定的であったり治療自体の負担が大きい。

JCRでは、これまで培ってきた独自のバイオ技術やノウハウを活かして、付加価値の高い新薬の研究開発に取り組んでいる。

同社は2009年にGlaxoSmithKlineとの間でバイオ後続品を中心としたバイオ医薬品の生産・開発・販売に関する包括的な契約を結んでいるが、2014年2月に、これまでのGSKグループ主体のグローバル市場での同時開発からJCRファーマが日本及びアジア・オセアニア地区をターゲットとして開発を進めることに修正するとともに、JCRファーマが研究を進めている技術に関する研究支援契約を新たに締結した。

今回の契約で、同社は研究リソースの支援を受けて新規技術の開発を促進させるだけでなく、ライソゾーム病の1種であるファブリー病治療薬のバイオ後続品の開発進捗に伴い、最大で25億円のマイルストンを受領することになる。

GSKとの新しい協業の第1号として、JCRファーマが開発中のライソゾーム病治療薬にGSKが権利を有する米国Amicus Therapeuticsの低分子シャペロン技術(標的化技術)を応用した新たな医薬品の共同開発を開始した。

 

 

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