米ルイジアナ州連邦地方裁判所の陪審は2014年4月、武田薬品の2型糖尿病治療剤「アクトス®」に起因する膀胱癌を主張する製造物責任訴訟において、武田に60億ドル、米国でアクトスを共同で販売しているEli Lillyに30億ドル、合計90億ドルの懲罰的損害賠償の支払いを命じる評決を出した。
既に、原告Terrence Allenの主張を認める陪審評決があり、損害賠償として 147.5万米ドル が命じられている。
武田とEli Lillyの契約では、訴訟に係る費用および損失は武田が負担することになっている。
2014/4/11 米連邦地裁の陪審、武田薬品に60億ドルの懲罰的賠償支払の評決
武田薬品はこの評決を不服とし、審理後申立てならびに上訴を含め、可能なあらゆる法的手段で対抗する方針を表明した。
ルイジアナ州連邦地方裁判所に対しては、陪審認定を無効とする請求と、再審の請求を別々に行った。
その一つの懲罰的損害賠償金の陪審認定を無効とするよう求めた請求に対し、米ルイジアナ州連邦地方裁判所のRebecca Doherty判事は8月28日、これを退ける決定を行った。
Doherty判事は今回の決定に関する101ページに及ぶ文書で、武田とEli Lillyの行為を判断する上で、陪審が「自らの役割と裁量の範囲内で行動した」と指摘した。
両社がアクトスと膀胱がんの関連性を把握していたにもかかわらず患者と医師への適切な警告を怠ったことを示す証拠について、陪審は適正な検証を行ったと判断した。
付記
米ルイジアナ州の連邦地裁は9月3日、陪審員評決を支持する判決を下した。
武田は再審理か大幅な減額を求めており、今後、数週間以内に結論が出る見通し。
両社は再審の申し立てに対する判断を待っている。
この結果次第では、当然、控訴すると思われる。
武田の長谷川会長は「和解も選択肢だが、我々が勝つための最善の努力をしたい」とする一方、「過去の判例に基づくと賠償は減額されると考えている」と述べた。
これまでの高額懲罰的賠償の10例では全てが破棄または大幅減額となっており、陪審の決定通りのものはない。
米国の最高裁は、懲罰的賠償は補償的損害賠償や実際の被害額に見合ったものでないといけないとしており、いくつかのケースでは補償的損害賠償額の10倍なら認められるとした。
なお、アクトスに関しては、これまでこれまで6件の陪審員評決や判決が出ているが、本件を除く5件は全て却下となっている。
カリフォルニア州とメリーランド州の州裁判所では陪審員が合計820万ドルの支払いを命じたが、裁判長がこれを却下 した。
ラスベガスの州裁では本年、陪審員が原告の訴えを却下した。
本年5月に80歳と81歳の女性が10億ドルの損害賠償を求めた裁判では、発ガン時にはアクトスを飲んでいなかったとされており、陪審員が訴えを却下した。
その前週に行われたシカゴの男性(既に死亡)のケースでも、陪審員は2時間以内の審議で却下した。
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米国食品医薬品局(FDA)、欧州医薬品庁(EMA)および日本の厚生労働省と医薬品医療機器総合機構など各国の規制当局に対し、アクトス®錠(一般名:ピオグリタゾン塩酸塩)などピオグリタゾン含有製剤に関して市販後に課された10年間の疫学研究の完了に伴い、そのデータを提出した 。
この研究は10年間の疫学研究で、ペンシルベニア大学と全米でも最大規模の医療保険グループ法人のKaiser Permanente の医療保険グループの研究部門により実施された。
ピオグリタゾン投与と膀胱がん発生リスクとの間には関連性は認められ なかった。
膀胱がん発生リスクとピオグリタゾンの投与期間、累積投与量あるいはピオグリタゾン投与開始からの期間との間のいずれにおいても関連性は認められ なかった。
詳細なデータはまだ開示されておらず、研究チームが2014年中に論文投稿する予定という。
厚労省は、まず医薬品医療機器総合機構でデータを評価し、その結果を踏まえ対応を検討する。
膀胱がん患者にはアクトスを使用しないこと。
膀胱がんを患ったことがある患者は使用時に注意すること。
患者に血尿、排尿障害、尿しぶり(頻尿に尿意切迫感・下腹部痛・残尿感が出現した状態)があった場合直ちに報告させること。
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