太平洋セメント、中国のセメント合弁契約を解除

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太平洋セメントは9月8日、子会社の太平洋水泥(中国)投資有限公司が新疆天業(集団)有限公司と新疆ウィグル自治区で準備を進めていたセメント合弁事業に関する契約を解除 したと発表した。(水泥=セメント)

2012 年12 月に天業集団と合意し、2013 年4 月に合弁会社を設立する予定で進めて きたが、2013 年に入り、中国政府により鉄鋼、セメント、ガラス、アルミ業界等、生産能力過剰業種への新増設の抑制政策が強化され、同事業への批准が下りる目途が立たないことに加え、事業環境が悪化したことから 、新疆天業との間で中止で合意した。

天業集団は、新疆ウィグル自治区石河子市を本拠としてPVCを製造販売する大手企業集団で、 カーバイド法PVC 生産過程で発生する廃棄物を利用してセメントも生産している。

太平洋水泥と天業集団は、PVC 製造原料用生石灰を製造する際に発生している生石灰粉や、生石灰生産に使用できずに廃棄されている低品位石灰石等を原料としてセメントを製造販売する合弁会社を新疆ウィグル自治区 で設立することに合意し、2012年12月に合弁契約書に調印した。

  カーバイド法PVCの製法

石灰石を焼いて生石灰に還元
  CaCO
3→CaO+CO2

生石灰とコークスの混合物をカーバイド炉に投入し、カーバイドを製造
  CaO+3C→CaC
2+CO

カーバイドからアセチレンと水酸化カルシウム(消石灰)を製造
  CaC
2+2H2O→C2H2+Ca(OH)2

  アセチレンと塩酸を塩化水銀(HgCl2)触媒下で反応させ、VCMを製造
    C
2H2+HCl →
CH2=CHCl 

       VCMからPVCを製造


合弁会社の概要は下記の通り。

1.会社名: 新疆天業太平洋建材有限公司 (仮称)
2.所在地: 中国新疆ウィグル自治区博尓塔拉蒙古自治州精河県
3.総投資額: 6.25億元 (81億円)
4.出資者: 太平洋水泥(中国)投資有限公司 40%
新疆天業(集団)有限公司               60%
5.事業内容: 普通セメント、混合セメント及び特殊セメントの製造販売
6.生産能力: セメント年産 120万トン
7.設立:  2013年4月(予定)
8.生産開始: 2014年11月(予定)
   

中国では、鉄鋼、セメント、電解アルミ、平板ガラス、コークスなどの分野で、生産能力の活用率は70~75%にとどまっている。

2013年5月に李克強首相は、「行政認可事務の大幅な削減と政府の機能転換、生産能力過剰とむやみな拡張の抑止、これは現在の絶対的任務である。党中央、国務院の統一的指示に従って任務を全うせよ」と地方官僚に指令した。

生産過剰の業界で無駄な投資を抑制しようとする取り組みに対し、地方政府が抵抗を示していたが、工業情報省 は本年8月、業界の各規制当局に対し、セメントと板ガラスに関連する新たな計画を「いかなる理由であれ」認可しないよう指示した。

この動きにより、合弁事業の認可が下りる目途が立たないことに加え、事業環境が悪化したことから、計画の中止を決めた。

ーーー

太平洋セメントは1998年に秩父小野田と日本セメント(旧浅野セメント)が合併し発足した。

中国には3つのJVがあり、順調な業績をあげている。

1989年設立 大連華能-小野田水泥有限公司(現 大連小野田水泥有限公司)

1993年設立 江南-小野田水泥有限公司

1995年設立 秦皇島浅野水泥有限公司

 

 

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