Dow Chemical、ポリウレタン独禁法違反の集団訴訟で控訴審でも敗訴

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1999年~2003年にDow Chemical、Bayer、BASF、Huntsman、Lyondell の各社がポリエーテルポリオール、MDI、TDI、MDI-TDI ブレンドなどの Polyether Polyol 製品で価格カルテルを結んだとして 、2005年に米国の需要家が集団訴訟を行ったが、2013年2月20日に陪審員はDowを有罪とし、4億ドルを支払えとする決定を行った。

Bayerは2006年に、違法行為はなかったとしながらも、和解し、55百万ドルを支払った。
2011年にHuntsmanは同様に和解し、33百万ドルを、BASFも同様に51百万ドルを支払った。
破産処理中のLyondellも和解した。
いずれも違法行為はなかったとしながら和解している。

原告側は1999年1月1日からの違法行為を問題としたが、男性2人、女性5人の陪審員は2000年11月以前については認めず、原告の11億25百万ドルの損害の主張に対し、4億ドルの損害を認定した。

Dowは裁判長に対し、有罪の証拠がないとして判決を取り消すように求めるとともに、集団訴訟の原告同士の被害が異なるとし、集団訴訟の要件である"共通性" がないため、集団訴訟扱いを取り消すことを求めた。

 2013/2/27   Dow Chemical、ポリウレタン独禁法違反裁判で有罪

しかし、Kansas City地裁の判事は2013年5月15日、陪審員決定を退けるよう求めたDowの要請を却下し、3倍賠償の12億ドルを支払うよう命じたが、その後、別の事情で12億ドルから10.6億ドルに減額された。

Dowは控訴した。

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コロラド州Denverの控訴裁は9月29日、一審判決を支持した。

Dow社員がカルテルを認めたこと、Bayerの証人が競争相手と不適切な会話をしたこと、会話を聞かれないよう公衆電話を使ったり、喫茶店やホテルで会ったりしたと述べたことを証拠とした。

Dow Chemicalは判決を批判し、司法省が徹底的に捜査したが、起訴されなかったとし、これまで常にカルテル参加を否定しており、これについても徹底的に争うとしている。

もう一つの争点の「集団訴訟」を認めるかどうかについては、控訴裁は集団訴訟を認めた。

Dowの需要家が集団訴訟の原告になることについて、仮にその一部が交渉したり、ライバルの製品を使うことなどで値上げを防ぐことが出来たはずであったとしても、最近の最高裁の判決を基にしても、 集団訴訟の要件である "争点の共通性" はあると認め、個別に訴えることは必要でないとした。

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米最高裁は2011年と2013年の判決で、集団訴訟に厳しい制限を加えた。

米国の集団訴訟(Class Action)は、一個人が同じような立場にある多数の人々を代表して訴訟提起し、集団的な請求を行うことを可能とする。

クラス構成員の定義(例えば某社の某製品を特定期間内にアメリカ国内で購入した者全員)に該当する者は、自ら参加する意思表明を行わなくとも、その訴訟から離脱する意思を積極的に表明しない限り、集団訴訟の原告になるため、原告の数が膨らみ、請求金額の合計も膨大なものとなる。

集団訴訟は裁判所に認められる必要があるが、その条件は下記の通り。

・クラス構成員が十分に多数であること (多数性)
・クラス構成員が共通の事実問題又は法律問題を有していること (争点の共通性)
・クラス代表者がそのクラスに典型的な請求又は防御を有していること (代表者の請求・防御の典型性)
・クラス代表者が公平適切にクラスを代表できること (代表の適切性)

個人に固有の争点に対し、共通の争点が支配的であること (共通争点の支配性)
・クラスアクションが当該紛争解決の方法として、他の方法に比して優れていること (紛争解決方法としての優越性)

これまでは、裁判所は、中味の審理が重要として、集団訴訟を認めるかどうかについては厳しくなかった。

しかし、最高裁は最近の判決で、これを厳しくした。 

1) Wal-Mart Stores 事件

連邦最高裁判所は2011年6月20日、米小売大手Wal-Mart の女性従業員が同社を相手取り、待遇面で性別による差別を受けたとして損害賠償などを求めた訴訟について、集団訴訟として扱うことは認められないとの判断を下した。

この裁判が集団訴訟になれば原告資格を持つ人が約150万人という史上最大規模の集団訴訟になる可能性があったため注目を集めていた。

最高裁は、ウォルマートの女性従業員に対する雇用方針は包括的ではなかったため、女性従業員が受けたと主張する差別の内容はひとりひとり違う可能性があると判断した。

「争点の共通性」は一つで足りるが、中心的な争点について具体的に共通することが必要であるとした。

原告は、(1)給与及び昇進についての男女差別を示す統計データ、(2)社会学者による分析、(3)差別を受けたことを述べる数百の女性従業員による陳述書、という証拠によって、ウォルマート全店舗に共通の差別的方針があるとしたが、最高裁は、これらでは全米3400店舗を包括する差別方針があることの立証としては足りないと判断し、「共通の争点」に欠けるため、クラスアクションの承認は認められないとした。

2)Comcast Corp 事件

フィラデルフィア地域の住民が、ケーブルテレビのサービス料金が高すぎるのは、CATV米最大手コムキャストが競争相手を買収し、競争を制限したのが原因として集団訴訟を申し立てたことについて、連邦最高裁判所は2013年3月26日に申し立てを認めない決定を下した。

連邦最高裁の多数意見は、「共通争点の支配性」の要件を満たす為には、クラス全体に適用される損害算定方法を提示しなければならず、損害の算定方法は、法的責任(liability)についての主張と一貫性がなければならないと述べた。

原告は「反競争的な効果」について4つの理論を主張したが、地裁はこのうち3つは否定、1つは認めた。しかし、損害賠償額の算定では4つの理論によるものが混在していた。

地裁は、原告の住民が勝訴した場合の損害賠償額の算定方法に関して、原告側が提示した方法を吟味しなくとも集団訴訟は進められるとしたが、最高裁は原告提示の方法ではクラス全体に共通する方法で損害を算定できるものではないと判断し、地裁の決定は誤りであるとの判断を示した。

今回のコロラド州Denverの控訴裁は、上記の最高裁判決を勘案しても、集団訴訟として認められると判断した。


 

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