水素液化システムは、播磨工場内の水素技術実証センターに設置され、1日あたり燃料電池車約1千台分にあたる約5トンの水素を液化する能力を有している。
本システムは、同社が独自技術で開発したもので、圧縮した水素ガスを冷凍サイクルで冷やされた水素と液化機内で熱交換しながら冷却することで液化水素を製造する。
開発後の試運転において液化水素の製造が確認され、本格的な性能評価試験へと移行する。
日本では岩谷産業が2006年に関西電力グループと共同で設立したハイドロエッジ に、また2009年に岩谷瓦斯・千葉工場内に、液化水素製造プラントを稼動させている。同社は液化窒素の冷熱を利用して、水素を液化している。
水素の供給地と需要地に一定の距離がある場合には、水素を高圧ガスの形で運搬する方法が広く活用されているが、水素はマイナス 253℃で液化し(天然ガスはマイナス162℃)、体積もガスに比べて約800分の1となり、利用の際は蒸発させるだけで高純度の水素ガスが得られることから、液化水素の形で輸送・貯蔵すると、通常のガスや圧縮ガスに比べて効率が高くなる。
具体的には、水素液化システムのほか、液化水素運搬船や液化水素貯蔵タンク、さらには水素燃料に対応したガスタービンなどの開発および製品化を推進してい る。
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2014年4月に「エネルギー基本計画」が閣議決定され、将来は電気、熱に加え、水素を二次エネルギーの中心的役割を担う存在と位置づけ、"水素社会" 実現に向けた取り組みを加速させるとしている。
2014年6月には経産省が「水素・燃料電池戦略ロードマップ」を公表し、水素の製造・輸送・貯蔵や利用の各段階で、目指すべき目標とそのための産学官の取り組みを提示している。
http://www.meti.go.jp/press/2014/06/20140624004/20140624004-2.pdf
トヨタは11月18日、セダンタイプの新型燃料電池自動車(FCV)「MIRAI(ミライ)」を12月15日より発売すると発表した。
水素を高圧で3分で充填でき、1回の充填で700kmの走行が可能。
大容量外部電源供給システムを備えており、停電や災害などの非常時に家庭での電源として使用できる。
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川崎重工は豪州で産出する低品位石炭「褐炭」から液化水素を作り、タンカーで日本へ運ぶプロジェクトを進めている。
豪州のLatrobe
Valleyは世界最大規模の褐炭
の産地で、石炭のエネルギー量は日本の一次エネルギーの40 年分に相当する。
採掘地に隣接する石炭火力発電所で燃料として使っているが、褐炭は水分の含有量が多く、
発電効率は約28%にとどまる。(日本の石炭火力発電所の平均が40%を超える。)
また積み上げておくと自然発火するため、採掘してから18時間以内にコンベヤーで発電所に運び込んで燃やしている。CO2排出量も非常に多い。
CO2排出量を減らしたい豪州政府と、液化水素を志向する川崎重工と思惑が一致し、褐炭から液化水素を生成し、日本へ運ぶプロジェクトが動き出した。
・Latrobe Valleyで褐炭をガス化する。
・その工程で発生する水素とCO2のうち、CO2 はCCS(Carbon Capture and Storage)で海底の空洞へ押し込む。
この空洞は、かつて天然ガスを採掘し枯渇した跡地で、既に豪州政府は2012年2月に約80億円を投じて、CCSの検証も開始している。
この近海は数あるCCS候補地の中でも最も実用化しやすい適地といわれている。日本では日揮が苫小牧に日本初のCCS トータルシステムの実証設備を建設中。
2013/8/27 日揮、日本初の二酸化炭素の分離回収・貯留実証試験事業にBASFのガス精製技術を導入
・水素は、超低温に冷やして液化し、タンカーで日本へ運ぶ。
現地の安い電力を利用して水の電気分解を行い、その水素も利用する構想もある。
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水素輸送には液化によるほか、有機ハイドライドによる水素輸送もある。
千代田化工の「大規模水素貯蔵・輸送システム」で、 海外の油田等で出る水素をトルエンに反応させてメチルシクロヘキサンとし、常温で日本に輸送し、日本でこれから水素を取り出すもの。これまでメチルシクロヘキサンから水素を取り出すのは不可能とされていたが、同社が開発した触媒がこれを可能にした。
トルエンに水素を固定(水素化反応)させ、メチルシクロヘキサン(常温常圧の液体)に変換して貯蔵・輸送し、同社が開発した脱水素触媒を用いて、このメチルシクロヘキサンから再び水素として取り出し(脱水素反応)、供給するシステムを対象としたもの。
(海外油田等) 3H2+C6H5CH3→ C6H11CH3
↓ (常温輸送)
(川崎) C6H11CH3→3H2+C6H5CH3メチルシクロヘキサンの場合、LNGや液化水素などのような極低温技術を必要とせず、通常の石油タンクやタンカーを利用できる 。
一連の工程を「大規模水素貯蔵・輸送システム」として確立することで、これまで困難とされてきた水素の大量輸送や長期貯蔵が、商業ベースで可能であることを実証できた。
同社は「SPERA水素」(ラテン語で「希望せよ」という意味)の愛称で水素供給事業実現を目指す。
2013/10/29 水素エネルギーフロンティア国家戦略特区
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