Corning Inc.、Dow Corning から撤退へ

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Bloombergは11月14日、Dow Chemical のAndrew Liveris 会長が株主への説明会の席上、Corning Inc. がDow Corningの持株の売却を希望しており、Dowが購入することになるだろうと述べたと報じた。

CorningはSamsung Electronics とのJVであったSamsung Corning Precision Materialsを100%子会社にしており、Dow Corning よりもこちらに重点を置きたい意向であるとしている。

これに対し、CorningはDow Corning の株主であることに満足していると述べ、Dowの報道担当も、Liveris会長は相手持分を買うことについて何も確定的なことは言っていないとしているが、Dowが購入するのは間違いないと見られている。

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Dow Corning は1943年にDow Chemical とCorning の50/50JVとして設立された。

当時の航空機は、エンジンの水分による電気系統からのコロナ放電のため高高度での飛行が不可能であったが、1942年にShailer Bassが開発したシリコーングリースにより解決を見た。シリコーンの可能性を追求すべく1943年にDow Corningが設立された。

シリコーン製充填材、接着剤、潤滑剤、離型剤、吸音材、半導体やソーラーパネルに使用されるシリコンウェハーなど約7000品目を製造する。

シリコーン(Silicone)は、ケイ素と酸素からなるシロキサン結合(≡Si-O-Si≡)を骨格とし、そのケイ素(Si)にメチル(-CH3)を主体とする有機基が結合したポリマーで、天然には存在しない。

無機質のシロキサン結合と有機基との結び付きにより、有機化合物やポリマーと比較し、耐熱・耐寒性、耐候性、電気絶縁性、化学的安定性、撥水性、消泡性、離型性など数多くの優れた特性をもっている。

形状はオイル、エマルジョン、レジン、ワニス、ゴムおよびパウダーなどと極めて多様で、用途も多岐にわたり、いろいろな分野で利用されている。

これに対し、シリコン(Silicon)はケイ素(Si)のことで半導体材料、太陽電池材料などに使われる。

1980年代から1990年代にかけ、豊胸手術に使用されたDow Corning製シリコーンバッグにより乳癌や関節リウマチ、全身性エリテマトーデスなどの健康被害が生じたとして集団訴訟が提起された。訴訟は1984年に始まり、1995年に20億ドルの損害賠償訴訟を受け同社は連邦破産法 Chapter 11を申請した。

2000年に被害者に30億ドルを払うことで和解が成立し、2004年6月に Chapter 11 から離脱した。


日本では1966年に東レとの共同出資でトーレ・シリコーン(現 東レ・ダウコーニング)を設立している。

1966/12   トーレ・シリコーン設立
1967/4   Dow Corning製品の輸入販売開始
1989/12   東レ・ダウコーニング・シリコーンに改称
2004/9   日本ユニカーのシリコーン事業(1967年に生産開始)を買収
2005/4   ダウコーニングアジアと統合、東レ・ダウコーニングに改称

ダウコーニング・ホールディング・ジャパンが 65 %、東レが 35 %出資する。 

Dow CorningはHemlock Semiconductor Corporationのマジョリティ株主である。

Hemlock は 1960年に設立され、半導体や太陽電池に使われる様々な純度の多結晶シリコンを製造している。

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Corning は特殊ガラス及びセラミックの世界的リーダーで、160年以上に亘り培われてきた材料化学やプロセス工学の知識により、コンシューマーエレクトロニクス、自動車排ガス制御製品、テレコミュニケーション及び、ライフサイエンス向けに高度な製品を開発、製造している。

同社は5つの重要な市場分野で世界をリードしている。

 Display Technologies:液晶テレビ、コンピュータモニタ、ノートパソコン、その他家電製品向けガラス基板
 Environmental Technologies:排ガス浄化システム用のセラミック担体およびディーゼル微粒子フィルタ
 Optical Communications:光ファイバ、ケーブル、ハードウェアおよび電話・インターネット通信ネットワーク向け機器
 Life Sciences:ガラス・プラスチック製実験器具、細胞培養・ゲノム研究・バイオプロセス用ラベルフリー技術、培養基および試薬
 Specialty Materials:家電用カバーガラス、先進光学、各種産業向け特殊ガラスソリューション


2014年1月15日、CorningはSamsung Display と
戦略的契約を締結し、Corningが50%、Samsung Display が42.64%出資する液晶パネル向けガラス素材の合弁会社 Samsung Corning Precision Materials のSamsung持株を買い取った。

このJVは営業利益率が50%を超え、利益のほとんどを配当に回しており、2013年10月にSamusungが売却を発表した際には産業界では驚きの声が上がった。

Samsung は売却により Corning から額面約19億ドルの新規転換権付優先株を受け取るとともに、さらに4億ドルの新規転換権付優先株を購入した。
7年間は普通株への転換はできない条件がついているが、転換すれば、SamsungはCorningへの出資が7.4%となり、筆頭株主となる。
また、今後 Corningの新たな技術や製品に早い段階からアクセスできるようになるとされる。

Corning の会長兼CEOは、「この非常に素晴らしい機会を活かして、私たちは歩みを進め、特殊ガラス分野におけるリーダーシップを拡大し、収益の伸長に弾みをつけるとともに、今後も世界有数の家電メーカーであるSamsungとの協力強化を図っていくことを強く願っている」と述べた。

付記

サムスン電子は12月2日、光ファイバーや光ケーブルなどを生産する亀尾(クミ)素材工場など韓国内の光素材事業分野と中国海南省にある生産法人(SEHF)などを米 Corningに売却すると明らかにした。

米Corningは2014年3月、スマートフォンなどで主に用いられている「Corning Gorilla Glass」の生産を、静岡工場からSamsung Corning Precision Materials の韓国の牙山工場に移管することを決定したと発表した。
牙山工場がフルに活用されていないことを受けて、より低コストな生産が可能な同工場へ移管する。


Gorilla Glassはアルカリアルミノケイ酸塩の素材を使用しており、高い透明度と強度を誇っており、特に強度はプラスチックの数十倍と言われ、衝撃や傷に耐えることが可能である。
スマートフォンやタブレットに採用されており、2010年には世界の携帯電話のうち約20%、約2億台に採用されている。

Corning にとってはDow Corning の事業は今や戦略的事業ではなくなったとみられる。




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