10月2日の売却計画の進行状況発表時に、3事業の売却を進めているとしていたが、今回、この一つの子会社Angus Chemical Companyを12.15億ドルでGolden Gate Capital に売却すると発表した。
ANGUS はニトロアルカン関連製品専従の世界唯一の企業で、1936年に最初の特許申請をして以来、ニトロアルカン関連製品を開発、製造している。
現在、ニトロメタン、ニトロエタン、1-ニトロプロパン、2-ニトロプロパンの4つのニトロアルカン製品を製造している。残り2件は、水素化ほう素ナトリウム事業と、Dow AgroSciences部門に属する子会社のAgroFresh。
2014/10/6 Dow Chemical、非戦略事業の売却を進める
今後も、株主価値を高めるため製品群の評価を続け、合弁会社についても出資比率の検討を行うとともに、事業戦略に合わない事業を売却するとしている。
この一環として、同社はKuwaitのPetrochemical Industries Company (PIC) とのJVを再編し、出資比率を下げると発表した。2015年央にも完了させる。
対象となるのは、エチレングリコールのワールドリーダーであるMEGlobal と、Kuwaitの石化コンビナートのGreater EQUATEである。
出資分のどれだけをどこに売るのかは明らかにしていない。
Dowは、売却により戦略的目的に資金を使えるとし、出資は減らすがJVには残留するため、低コスト製品を狙う戦略の一部であり続けるとしている。
1.MEGlobal
Dow Chemical とPICは2004年にDowのMEG、PTA、PET事業をJV化した。ダウの "asset light" 戦略の適用第1号である。
両社は2つの50/50JVを設立した。
(1) MEGlobal
MEG、DEGの製造販売で、ダウのカナダの2工場 (合計能力100万トン)を移管した。
Fort Saskatchewan EO/EG plant 340千トン
PrentissEO/EG plant 2基計 660千トン他社製品の販売も行っており、現在は年間250万トンのEGを世界中で販売している。
(2) Equipolymers (現在はMEGlobal の100%子会社となっている)
工場 PTA PET Schkopau, Germany 335千トン
No.1:160千トン
No.2:175千トンOttana, Italy (190千トン) (160千トン) 売却
イタリアの工場は2010年7月、同地で発電所と用役工場を運営しているOttana Energia とタイのIndoramaのJVに売却した。
1995年にダウ(当時のUCC)が45%、PICが45%出資のJV、Equate
Petrochemical Company
を設立した。
その後、出資比率は若干変更されている。(下記参照)
立地はKuwaitのShuaiba Industrial Areaで、当初の製品及び能力は下記の通り。
エチレン 65万トン LL/HDPE 45万トン EG 30万トン PP 10 万トン PIC単独の事業、但しEquateが操業を受託
その後、両社は第2期計画(Equate II)を実施した。これは3つの会社に分かれる。
社名 出資 製品 Kuwait Olefins Company Equateと同じ エチレン、PE、EG Kuwait Aromatics Company PIC 80%
Qurain Petrochemicals 20%ベンゼン、パラキシレン The Kuwaiti Styrene Company Dow 42.5%
Kuwait Aromatics Company 57.5%EB、SM
実際にはEquate Petrochemical が全体を一体として運営している。
各社の出資関係と製品は下記の通り。
以上の通り、Dowが出資しているのは、Equate Petrochemical Company (42.5%)、Kuwait Olefins (42.5%)、Kuwaiti Styrene(42.5%)である。
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DowとPetrochemical Industries Company (PIC) の間には大きな抗争があった。
Dowは2007年12月13日、Kuwait国営石化会社 PIC との間で50/50のグローバルな石化JV K-Dow Petrochemical を設立すると発表した。
DowのPE、PP、PC、エチレンアミン、エタノールアミンなどの事業を移管するもので、Dowは事業売却額マイナス出資で75億ドル、配当15億ドルで、合計90億ドル(税引後では70億ドル)を受け取ることとなっていた。
しかし、2009年1月1日のスタートを目前にして、2008年12月28日、クウェートの最高石油評議会がK-Dow Petrochemicals 設立承認を取り消し、破談となった。
この問題は最終的に仲裁裁判所はPIC側に責めがあると認定し、PICに対しDowへの21.6億ドルの損害賠償支払いを命じた。
2012/5/25 Dow、石化JV中止問題での調停で勝利、21.6億ドルを獲得
今回の判断はこれとは直接関係はないと思われる。
Dowとしては、国内のシェールを利用した石化事業を中心としつつも、中東の安価な原料による事業も捨てていない。
Dowは今後、Saudi AramcoとのJVのSadara Chemical Companyに全力投球すると思われる。
2011/7/26 DowとSaudi Aramco、石油化学JV設立を最終決定
なお、同社は11月12日、第4四半期の増配を発表した。
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