既報のとおり、韓国と中国は11月10日にAPEC首脳会議の開かれていた北京でFTA交渉が実質的に妥結したと発表した。
2014/11/11 中韓FTA、首脳会談で妥結
その韓国と中国がG20首脳会議参加のための訪豪中に新たなFTA交渉を妥結させた。
韓国の朴大統領は11月15日、ニュージーランドのJohn
Key首相と記者会見を行ない、両国間のFTA交渉妥結を宣言した。
韓国は豪州、カナダに続き、11月の中国とニュージーランドとのFTA締結で、GDP基準で世界の73.45%に拡大した。
また、中国の習近平国家主席は11月17日、オーストラリアのTony Abbott 首相と会談し、両国の自由貿易協定(FTA)の妥結に合意したと発表、同日午後に署名した。
豪州とニュージーランドの日中韓とのFTA締結は下記の通りで、2013年9月に就任した豪州の Abbott 首相は1年ちょっとの間に韓国、日本、中国のアジア3強とのFTAを決めたこととなる。
豪 NZ 日本 2014年7月8日調印 中国 2014/11/17調印 2008/10/1 発効 韓国 2013/12 実質合意 2014/11/15妥結
豪州の貿易・投資相は11月19日、「日中韓でバランスをとった」と説明した。「豪州の酪農業者は韓国では多くの成果を得られないが中国には大きな機会があると分かっていた」とし、3カ国との交渉をほぼ同時に進めることで、国内生産者の利益を調整できたと強調した。
なお、豪州訪問中のインドのModi首相は11月18日、Abbott 首相と会談し、EPA交渉を加速させることで一致した。
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韓国・ニュージーランドFTA
中国とニュージーランドのFTAは2008年10月に発効したが、最近の統計では、ニュージーランドの酪農品の中国向け輸出は2008年以降10倍以上増えている。
朴大統領がFTAを重視するのは通商政策だけでなく安保外交に活用しようとする意図も込められているといわれる。
今回妥結した内容は以下の通り。
関税については、下記の通り。
NZ | 7年以内にニュージーランドの関税100%撤廃 輸入額基準で92%に当たる2013品目に対し関税を即時撤廃
タイヤ(関税5~12.5%)、洗濯機(5%)などの関税はすぐに撤廃 |
韓国 |
20年以内にニュージーランド製品 96.5%に対する韓国の関税撤廃
アルミニウム、羊皮、ワインなど7160品目、輸入額基準で48.3%に対し即時関税を撤廃
乳製品については、チーズは7年or12年、バターは10年、育児用粉ミルクは13年かけて撤廃、粉乳は削減対象外。 |
NZの生産者団体であるNZ農業者連盟は、「韓国とのFTAは、何もないよりまし」という冷ややかな声明を発表している。
両国はFTA発効後、関税縮小により輸入国の産業に深刻な影響が現れたりその恐れがある場合には関税引き下げを中止したり関税を引き上げたりできるセーフガードを発動できる。
開城工業団地生産製品を韓国製と認定するかどうかは域外加工地域委員会を設立し別途協議する。
投資については、ニュージーランドは韓国の投資家に対する事前投資審査基準金額を、既存のFTAではに設定してきた2000万NZドル以下から5000万NZドルに引き上げた。
また、WTOの政府調達協定で開放していないBOT(Build
- Operate -
ワーキングホリデーの年間定員をこれまでの1800人から3000人に拡大し、年間200人の一時雇用入国割当、年間50人の農畜産業訓練ビザを確保した。
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中国・豪州FTA
中・豪両国は2005年に交渉入りした。
豪州の農産物や鉱物資源を中国に、中国の工業製品を豪州に輸出する際の関税を下げることや、中国企業が豪州へ投資しやすくなることへの効果が期待された。
一方で、中国の安い労働力が豪州に流入することや、中国の農業が打撃を受けることへの国内の警戒などで、交渉が長引いていた。
ニュージーランドも中国とFTA を締結しているが、最近の統計では、ニュージーランドの酪農品の中国向け輸出は2008年以降10倍以上増えていることが豪州に影響を与えた。
豪州の対中輸出はGDPの5.3%を占め、先進国で最も中国への依存度の高い国となっている。両国間の貿易額は2013年に1510億豪ドルに達した。
アボット豪首相は会談後の声明で、「歴史的協定だ」と強調。習国家主席も連邦議会で演説し、「両国関係を強化できた」と成果を誇示した。
今回妥結した内容は以下の通り。
豪州 | 輸入品の85%以上が直ちに関税撤廃、4年で93%を撤廃 |
中国 | 最終的に95%が関税撤廃 乳製品:4~11年で撤廃(乳幼児用粉ミルクは4年内に撤廃) |
豪州のサービス分野の中国向け輸出は2013年に70億豪ドルとなっているが、中国はこれまでに他国に与えた待遇のうちの最恵の待遇を認めた。
法務、金融、教育、通信、旅行、設計建設、健康・高齢者ケア、採掘、製造サービス、建設・都市設計、等々の事業の中国での事業での進出が著しく改善される。
以上の詳細:http://www.dfat.gov.au/fta/chafta/fact-sheets/key-outcomes.html
中豪FTAの特長として、3年内のレビューなどにより、更に自由化を進め、市場アクセスを拡大するメカニズムが折り込まれている。
相互の投資を拡大、多様化する投資条項が含まれており、中国政府は10年間で合計1兆2500億米ドルの投資を予想している。
豪州政府が自国への外国投資について国益にかなうかどうかを審査する手続き(Foreign
Investment Review)の緩和でも合意、中国民間企業が無審査で投資できる基準額を現在の2億4800万豪ドルから、日米企業対象と同等の10億7800万豪ドルに引き上げる。
(中国が求めていた国有企業の対豪投資にかかる審査基準の緩和は盛り込まなかった。)
これは、投資家が相手国政府の政策により被害を受けた際、当該政府を国際投資紛争センターに提訴できる制度。
人民日報は中国の一般市民への影響を以下の通り報じている。
粉ミルク:豪州からの輸入関税が4年以内に撤廃されるため、粉ミルクを買うためにわざわざ香港に行く必要はなくなる。
観光:渡航ビザの手続きがより簡略化され便利になる。
ショッピング:10億元の関税が免除されることになり、バッグや靴もよりお手ごろな値段で手に入れられるようになる。
飲食:オージービーフやオーストラリアの魚介類が手軽に食べられる。
乳製品、肉製品、アルコール類、鉱物製品、農産物も中国市場に入りやすくなる。投資:豪州の鉱物投資家が中国で投資したり、中国の投資家がオーストラリアで農場主になることができる。
豪州の大草原での暮らしが待っている。生活、シルバーサービス:豪州の病院や老人ホーム、ホテル、保険会社などが中国で支店を開設する。
中国人はより低価格で高品質のオーストラリア式サービスを受けられるようになる。
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中国がこれまでに締結し、発効済みのFTAの相手国は以下の通り。
1 シンガポール | 2004/11 発効 | |
2 チリ | 2006/10/1 発効 | |
3 パキスタン | 2007/7 発効 | |
4 ニュージーランド | 2008/10/1 発効 | |
5 ASEAN | 2010/1/20 発効 | |
6 ペルー | 2010/3 発効 | |
7 コスタリカ | 2011/8/1 発効 | |
8 アイスランド | 2014/7/1 発効 | |
9 スイス | 2014/7/1発効 | |
2014/7/10 中国、アイスランド、スイスとのFTAが発効 |
今月に入り、韓国、豪州とのFTAをまとめた。
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