中国の習近平国家主席と、APEC首脳会議のため訪中している韓国の朴槿恵大統領は11月10日、北京の人民大会堂で首脳会談を行い、両国は中韓自由貿易協定(FTA)交渉が「実質的に妥結した」と発表した。
重要な争点の交渉は終わり、後は協定に書き込む表現など技術的な問題が残っているだけで、年内の仮署名、年明けの正式署名を経て、来年中の発効を目指す。
商品、サービス、投資、金融、通信など両国経済全般を包括する計22分野でFTAが締結された。
中国は初めて金融、通信、電子商取引をFTAの対象に含めた。
概要は以下の通り。
商品では、両国は品目数ベースで90%以上を開放することで合意した。
中国は品目数91%、輸入額85%(1371億ドル)、韓国は品目数92%、輸入額91%(736億ドル)について20年以内に関税を撤廃する。
協定発効後直ちに関税撤廃に応じる割合は、中国が輸入額44%、韓国が52%で、韓国がやや高い。
自動車は両国が共に市場開放対象から除外した。
液晶パネルは10年以内に関税を撤廃する。
農水産物は品目数ベース70%、輸入額ベース40%で合意し、FTA史上最低水準となった。
超敏感品目(輸入額ベース60%)は開放除外30%、関税割当制度適用16%、関税削減14%で調整が行われた。
コメはFTAから完全に除外することで合意した。トウガラシ、ニンニク、タマネギなど韓国で消費量が多い野菜類と牛肉、豚肉、リンゴ、ナシなど610品目余りは開放除外対象となった。
サービス分野では、FTA発効後2年以内に相互開放しないことで合意した分野を除き、全て自由化する「ネガティブリスト方式」の後続交渉を始めることで一致した。中国の韓国企業に対する差別法執行防止にも合意した。
2012年の日中韓サミットで三首脳は日中韓FTAの年内の交渉開始につき一致、その後、事務レベル会合を重ねた。
9月1日から5日まで、北京で第5回会合が開催されているが、政治問題もからみ余り進展せず、韓国は中国とのFTA交渉を優先した。
しかし、中韓交渉も難航した。
衛生と検疫、技術障壁、競争、環境、電子商取引など8項目に対しては合意、通信と投資・知的財産権など8項目に対しては比較的進展したが、韓国の農水産物市場開放を求める中国と、工業製品・サービス市場の開放を要求する韓国の利害関係がぶつかり、首脳会談の行われた10日の早朝まで交渉が行われた。
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韓国にとっては中国は最大の貿易相手国で、昨年は全輸出額の約26%、全輸入額の約16%を占めた。
韓国は今後、中国の巨大市場で低い関税の恩恵を受けられることになる。
韓国は米国やEUともFTAを締結済みで、FTA締結国との貿易額が全体に占める割合は中国を加えると6割近くとなり、2割前後の日本を大きく上回る。
欧州―東アジア―米国をつなぐ「東アジアのFTAハブ」が実現する。
韓国 (12) 中国は13番目 |
日本 (14) | TPP参加国 (日本含め12) |
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ASEAN | 物品貿易 2007年6月1日発効 サービス貿易 2009年5月1日発効 投資分野2009年9月1日発効 |
2008年12月から順次発効 | ||
シンガポール | 2006年3月2日発効 | 2002年11月発効 | ○ | |
マレーシア | 個別には発効していないが、ASEANとして既に発効済み | 2006年7月発効 | ○ | |
タイ | 2007年11月発効 | |||
インドネシア | 2008年7月発効 | |||
ブルネイ | 2008年7月発効 | ○ | ||
フィリッピン | 2008年12月発効 | |||
ベトナム | 2009年10月発効 | ○ | ||
インド | 2010年1月1日発効 | 2011年8月発効 | ||
オーストラリア | 2013/12 実質合意 | 2014年7月8日調印 | ○ | |
ニュージーランド | --- | --- | ○ | |
トルコ | 2013年5月1日発効 | --- | ||
米国 | 2012年3月15日発効 | --- | ○ | |
カナダ | 2014年3月11日妥結 | --- | ○ | |
メキシコ | --- | 2005年4月発効 | ○ | |
チリ | 2004年4月1日発効 | 2007年9月発効 | ○ | |
ペルー | 2011年8月1日発効 | 2012年3月発効 | ○ | |
コロンビア | 2013年2月21日 正式署名 | --- | ||
EFTA | 2006年9月1日発効 | --- | ||
スイス | (EFTAとして締結) | 2009年9月発効 | ||
EU | 2011年7月1日暫定発効 | --- |
なお、中国と豪州とのFTA交渉も進行しており、11月15-16日にブリスベンで開かれるG20首脳会議に合わせ、農産物輸出の拡大を盛り込んだ正式な合意を発表するとの見方が強まっている。
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