伊藤忠は11月25日、同社が出資するブラジルの鉄鉱石生産・販売会社Nacional Minerios S.A.(NAMISA) とブラジル鉄鋼大手Companhia Siderurgica Nacional (CSN) が保有する鉄鉱石事業関連資産 Casa de Pedra 鉱山及びロジスティクス (鉄道株式及び港湾) の資産統合に関して合意した と発表した。
CSNも同様の発表をしたが、発表はこの事実だけで、双方とも詳細については一切述べていない。
この取引は12月のCSNの取締役の承認と、当局の同意(手続きに1年程度かかる)が必要となる。
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NAMISAは伊藤忠が国内製鉄会社と共に設立した日伯鉄鉱石㈱ と韓国、台湾の大手製鉄会社で形成する日韓台コンソーシアムが40%を保有し、CSNが60%を保有する。
NAMISAは2006年にCSNの100%子会社として設立され、ブラジル南東部ミナスジェイラス州の大鉄鉱床地帯である「鉄四角地帯」にEngenho 鉱山とFernandinho 鉱山を保有する。両鉱山は今回統合する Casa de Pedra鉱山に隣接する。
NAMISAの鉱石はイタグアイ港まで鉄道で約440km運搬され、輸出される。
鉄道会社は MRS Logística で、CSNは20%を出資している。
他に、Vale が39.26%、Ujiminas が19.92%出資する。
2008年4月にCSNがNAMISAの拡張計画推進のため、株式の一部を売却することとなり、伊藤忠と日本の高炉メーカーがコンソーシアムを結成し、国際入札に参加、韓国のPOSCOもこれに加わり、NAMISAの40%を取得した。日本の鉄鋼各社はNAMISAとの間で2009年から15年間の長期引取契約を締結している。
2011年6月に新日鉄と住友金属工業が離脱した。
同社の持分は伊藤忠とJFEが肩代わりするとともに、2011年10月に台湾のCSC (China Steel Corp.) が参加した。
新日鉄は「NAMISAの能力拡張が当初計画に対し3年遅れており、将来の能力拡張に確信が持てなくなったため」とし、住友金属も「拡張計画が遅れており、出資継続について総合的に判断して撤退を決めた」としている。
これに対し、伊藤忠は「収益拡大に寄与する優良なプロジェクトと位置付けている」とし、JFEスチールも「環境問題などでNAMISAの生産能力の拡張に遅れは生じているものの、販売量については2009年の1500万トンから2014年に3900万トン体制まで拡張する計画で、優良な案件との見方は変えていない」とした。
NAMISA株主推移 |
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2013年5月にブラジル紙が、コンソーシアム側がNAMISAの株をCSNに売却する可能性があると報じた。
当初の契約で、コンソーシアムは買収額の30.8億米ドルで売り戻すput-option
をもっている。
背景には、CSNが株主間協定に含まれていた事業拡張や物流プロジェクトを長年延期してきたことがあり、コンソーシアム側は鉄鉱石の生産量を年内に1300万トンまで増やしたい意向だったがCSNが前向きな姿勢を示さなかったとされる。
当初は、NAMISAは2013年に 3800万トンを生産する予定であった。
しかし、生産量は2011年が640万トンで、2012年には460万トンに減っている。
この報道に対し、伊藤忠は売却は検討していないとしたが、その後、解散を避けるため話し合いを続け、今回の結論に達したとみられる。
Casa de Pedra 鉱山は能力2100万トン。CSNではNAMISAの生産能力を現在の680万トンから2016年には3300万トンに拡張するとしている。
今回の統合でコンソーシアム側の出資比率は低下するが、日系各社は大幅な追加出資をする予定はないとみられる。
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