帝人はシンガポールのポリカーボネート子会社を撤収、松山のDMTを生産停止するなどの構造改革を行い、2014年9月中間決算で、減損損失305億円、事業構造改善費用111億円の合計416億円(年間では440億円)の特別損失を計上した。
同社の損益推移は下記の通りで、過去も多額の当期損失を計上している。
同社は過去にも毎年、多額の減損損失・事業構造改善費用を計上している。
2002年3月期 | -191億円 | |
2003年3月期 | -158億円 | |
2004年3月期 | -82億円 | |
2005年3月期 | -404億円 | 北米ファイバー、欧州的スタイル整理損 -375 |
2006年3月期 | -81億円 | |
2007年3月期 | -42億円 | |
2008年3月期 | -322億円 | 米国PETフィルム -244、日本PET樹脂設備 -47 |
2009年3月期 | -149億円 | |
2010年3月期 | -250億円 | インドネシア繊維子会社譲渡ほか -206 |
2011年3月期 | -28億円 | |
2012年3月期 | -26億円 | |
2013年3月期 | -294億円 | 炭素繊維のれん -173、同米独の設備 -50、米国ヘルスケアのれん等 -54 |
2014年3月期 | -112億円 | 樹脂シンガポール工場2系列休止、フィルム茨城事業所休止、パラキシレン生産中止等減損損失 -88 |
2015年3月期予 | -440億円 |
本年度の440億円の内訳は下記の通り。
1. 電子材料・化成品事業に係る損失
-310億円 |
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① |
ポリカーボネート樹脂事業で、高付加価値品へのシフトを図ることで競争優位性を再構築すべく、エネルギーコスト競争力で劣り、汎用品ビジネス主体のシンガポール子会社について2015年12月末をもって事業撤収する。為替調整勘定の引当損失も計上する。 2014年3月期決算で、4系列のうちの2系列を休止すると言うことで減損損失を計上していた。 今後の生産は、競争力を有する中国子会社と、高機能品開発に適した松山事業所の2拠点体制に移行する。
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② | ポリエステルフィルム事業においても、アジアの後発メーカー台頭による競争激化で収益が悪化しており、岐阜事業所設備等について減損処理を行う。 | |||||||||||||||||||||
2.原料・重合部門に係る損失 -60億円 |
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ポリエステル製品に関し、コスト競争力の観点から原料からの生産モデルを見直し、DMTの生産を停止、同時に松山地区でのポリマー重合工場の再編を実施する。 帝人は松山のパラキシレン(290千トン)を2014年3月で停止している。
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3. ヘルスケア事業に係る損失
-42億円 |
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米国で在宅医療事業を営む連結子会社Braden Partners L.P.においては、米国での医療制度改革に伴い、保険価格の大幅な引き下げが継続していること等の環境変化により、収益状況が悪化しているため、2008年に買収した際に生じたのれん等の未償却残高の一部約42億円を減損処理する。 | ||||||||||||||||||||||
4. 高機能繊維・複合材料 -28億円 |
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高機能繊維事業の競争力強化に向け、高成長が見込まれるASEAN地域へのシフトを加速し、同時にポリエステル繊維の国内拠点の再編を図る。 同素材の生産についてはタイ子会社と松山事業所に集中するため、徳山・岩国・三原地区より生産機能を移管し、徳山事業所は閉鎖する。 加えて、研究・開発機能の再編・強化を図るため、大阪研究センターの機能を松山事業所に統合し、同センターは閉鎖する。 |
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帝人は11月5日、修正中期計画(抜本的構造改革と将来に向けた発展戦略)を発表した。
赤字体質事業に対して抜本的な対策を講じるとともに、将来の発展に向けた基盤整備のため、踏み込んだ事業構造改革、および発展戦略の実行体制の再整備を行う。
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