ロシアとウクライナ、天然ガス交渉で合意

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ロシアのウクライナ向け天然ガス問題で、両国と仲介役のEUは10月30日、ガス供給を再開することで合意した。

ロシアはウクライナがガス代金を支払っていないとして本年6月にガス供給を停止した。
ウクライナはこれまで、EUからのガス融通で対応してきたが、冬季にはこれでは対応できず、ロシアからの供給が必須であった。

今回、ブリュッセルでのロシア、ウクライナ、EUの閣僚級交渉で、①ウクライナが仮価格により未払代金を支払うこと、②今後のガス代金を前払いすることを条件に、ロシアはフォーミュラ価格で3月末までウクライナに天然ガスを供給することが決まった。

未払代金の最終価格は仲裁裁判所の決定を待つ。来年3月以降の供給については何も決まっていない。

バローゾ欧州委員長は10月30日、「欧州の市民が今冬に凍える理由はなくなった」とし、「合意がウクライナとロシアの信頼醸成につながることを望む」とも述べた。

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本件の経緯は下記の通り。

ロシアとウクライナは天然ガスを巡り、何度も争っており、ウクライナを経由するパイプラインでロシアから天然ガスを受けている欧州も巻き込まれてきた。
(EUは輸入するガスの3分の1をロシア産に頼っており、その多くがウクライナのパイプライン経由で輸送されている。)

2009/1/2   ロシア、ウクライナ向け天然ガス供給停止

2013/2/19   ロシアとウクライナ、天然ガスで再び抗争

2013年のウクライナ向け天然ガス価格は401ドル/1,000m3であった。

ウクライナは2013年にEUとの政治・貿易協定の仮調印を済ませたが、ロシア寄りの姿勢を見せるヤヌコビッチ大統領は2013年11月、EUとの関係を強化する「連合協定」の締結を見送り、ロシアとの協力関係を密にする方針に転換した。

ヤヌコビッチ大統領は2013年12月17日にモスクワでプーチン大統領と会談、ロシアはウクライナに対し150億ドルの金融支援を実施し、天然ガスの価格を2014年1月から約3分の1 引き下げ、268.5ドルとすることで合意した。

しかし、2014年に入り、反政府デモの結果、2月22日にヤヌコビッチ大統領が首都キエフを脱出、政権は崩壊、新政権は欧州寄りとなった。

参考  2014/4/7 ウクライナ問題の背景

この結果、ロシアは4月から大幅値上げを行った。

Gazpromは本年4月、ウクライナ向けのガス価格を3月までの1000m3当たり268.5ドルから485ドルに引き上げた。
ウクライナはこれに反発、代金を滞納している。

ロシアは6月のEUを交えた3者協議では、天然ガスの輸出価格を100ドル下げ、385ドルにすると提示した。

ロシア側は、385ドルはフェアな価格であり、欧州諸国向け価格と同じであるとし、ベストで最終の提案であり、これ以下での契約を結ぶ積もりはなく、欧州がロシア提案価格より安い価格でウクライナに供給すればよいとした。

2014/6/14 ウクライナとロシアの天然ガス供給での対立続く 


今回の合意内容は下記の通り。

1) 未払代金の支払い

ウクライナは11月8日までに14.5億ドルを支払う。
ロシアは入金後48時間以内にガス供給を開始する。

ウクライナは総額31億ドルの残り(16.5億ドル)を年末までに支払うことを約束した。

未払額についてはウクライナは31億ドルを主張、ロシアは53億ドルを主張している。
ウクライナの主張は3月までの価格、1000m3当たり268.5ドルに基づいており、ロシアの主張は385ドルに基づく。

今後、両国はストックホルムの仲裁裁判所で争う見通し。

2) 代金前払い

ウクライナは来年3月までの代金を前払いする。

3) 供給価格

価格は385ドル以下とし、現行契約に入っているフォーミュラに基づくとともに、ロシアの輸出関税の引き下げを折り込んだものとする。
これに基づき、11-12月の価格は378ドルとなった。
来年1-3月については、365ドルとの報道がある。

引取保証(Take or Pay) 条項はなく、ウクライナは必要に応じ発注する。

4) 来年4月以降については今後協議する。

ロシアはウクライナの資金力に懸念を示していたが、EUが支援すると約束した。
具体的には、EUのウクライナ経済支援資金からの支払いを認めた。IMFも支援資金からの支払いを認めている。



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