石油化学産業の市場構造に関する調査報告

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経済産業省は11月7日、産業競争力強化法第50条に基づく「石油化学産業の市場構造に関する調査報告」を公表した。

http://www.meti.go.jp/press/2014/11/20141107001/20141107001a.pdf

「産業競争力強化法」 は2014年1月20日に施行された。
アベノミクスの第三の矢である「日本再興戦略」に盛り込まれた施策を確実に実行し、日本経済を再生し、産業競争力を強化することを目的とし、「創業期」、「成長期」及び「成熟期」の発展段階に合わせたいろいろな支援策により産業競争力を強化しようというもの。

産業競争力強化のためには、日本経済の3つの歪み、すなわち「過剰規制」、「過小投資」、「過当競争」を是正していくことが重要で、この法律は、そのキードライバーとしての役割を果たすものであるとしている。

同法第50条(調査等)は以下の通り。

政府は、事業者による事業再編の実施の円滑化のために必要があると認めるときは、商品若しくは役務の需給の動向又は各事業分野が過剰供給構造にあるか否かその他の市場構造に関する調査を行い、その結果を公表するものとする。

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経産省は6月30日、産業競争力強化法第50条に基づく調査報告「 石油精製業の市場構造に関する調査報告」を発表した。

経産省はこれに合わせ、総合資源エネルギー調査会の資源・燃料分科会がまとめた「平成26年度以降の3年間についての原油等の有効な利用に関する石油精製業者の判断基準(告示)案」を公表した。

「残油処理装置装備率」の向上を目標とし、実質的に常圧蒸留装置の処理能力の削減を強制するものである。

2014/7/4 経済産業省、2年続きで石油精製能力削減を強制 

これを受け、各社は具体的な能力削減策を検討していると報道されている。

経済産業省は11月末を期限に、設備最適化と事業再編の方針の提出を求めている。
経産相は、「各社の方針の提出を待って、補助金や産業競争力強化法に基づく税制も総動員して後押ししていきたい」と述べた。

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今回の石油化学産業についての報告概要は下記の通り。

経済産業省が経営コンサルタントのA.T.カーニー㈱に委託した「石油化学産業の市場構造に関する調査」の報告を参考にしている。

1.国内石油化学産業の現状

ナフサクラッカー 14基、生産能力 年 720万トンに対し、2012年国内生産量  610万トン
  住友化学(千葉 38万トン)、旭化成(水島 44万トン)の停止で、能力は640万トンに減少。

 


輸出が生産量の3~4割を占める。

石油化学産業の収益は大きく変動しやすく、総じて利益率は低い。
過去10年の売上高経常利益率は2.5%(製造業平均は4.1%)



  

2. 国際的な需給構造の変化

   日本からの輸出減のリスク

   ① 北米の安価なシェールガス由来化学製品のアジア市場への流入

   ② 中国の安価な石炭を原料とした化学製品増産

   ③ 中東の化学産業への投資拡大による安価な化学製品のアジア市場への流入

随伴ガスの生産量には限りがあるため、2011年以降、エチレン設備能力の伸びは年平均3%程度まで低下すると見込まれる。

但し、若年層の高い失業率への対策などから、国家政策として石化事業拡大を図る可能性がある。

   ④ 最大の輸出先の中国の経済成長減速、需要減


 以上のまとめ

3. 上記リスクの影響

エチレン生産量
 2020年までで 470万トンまで減少
 2030年までで 310万トンまで減少

4. 対応策

① 生産設備集約、再編による生産効率の向上
② 石油精製との連携による生産体制の最適
③ 隣接企業とのエネルギー相互融通、発電設備等の共有化、共通部門の集約統合によるコスト削減
④ 海外展開の促進

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上記の報告は正しく、誰もが分かっていることである。

石油産業の場合は、常圧蒸留装置(トッパー)の削減であり、比較的簡単だが、それでも前回の場合、数社で難航した。

エチレンの場合はエチレン停止はその工場全体を止めてしまうことにもなりかねない。

もともと、多くの誘導品は競争力がないが、 エチレンを止めないために動かしていた。エチレンを止めた場合に、他社のエチレンを買ってまで動かす意味はないものが多い。

誘導品に強い三菱化学、住友化学、旭化成でも、エチレン停止に関連し、多くのプラントを止めている。

  三菱化学:塩ビ事業撤退、スチレン事業撤退、ナイロン事業売却、テレフタル酸事業の国内撤退、その他

  住友化学:日本オキシランのSM/PO、PGの停止、その他
  旭化成   :ANM、SM、ABS等

これは従業員の雇用をどうするかという大きな問題を生む。

これまで、三菱化学の鹿島(第一)が停止し、住友化学の千葉、旭化成の水島が停止を決めたが、これら各社は石化以外の事業を展開しており、なんとか、他の事業への配転で対処できるため、可能となった。

それ以外の多くの企業にとっては従業員対策は難しく、経済産業省が法律で強制しようとしても、実施できないのではなかろうか。

日本をダメにした10の裁判の一つとされる東京高裁判決で、従業員解雇に非常に厳しい条件を付けたのが影響している。)

 

新聞報道では、三井化学や丸善石油化学などの5工場が集中する千葉県内での統廃合が進むかが焦点となるとしている。

しかし、千葉地区では既に統廃合が実施されている。

   ・三井化学と出光興産がエチレンの運営を統合、三井は京葉エチレンから離脱を決定
   ・住友化学がエチレン停止、京葉エチレンから過半を引き取ることを決定

 

 

三井の京葉からの引き取りが無くなるため、三井(or 出光)のエチレン停止の可能性は少なく、残る丸善石化はエチレン停止は会社の解散につながりかねない。

報道では、京葉エチレンの停止を条件に千葉地区のエチレンの統合を三井が提案し、それへの対案として住化のエチレン停止、京葉エチレンからの三井離脱、 住化引き取り増が決まったとされており、これ以上の統廃合は可能性が少ないと思われる。

これ以外の可能性は川崎の東燃化学とJX日鉱日石のみである。


エチレン能力削減は必須だが、実現が難しいというのが実態である。
対策を打てないところがどんどん損益が悪化し、行き詰って撤退するのを待つしかないのだろうか。


 

 

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