中国の習近平主席は11月4日、中央財経指導グループの第8回会議を招集し、「シルクロード経済ベルト」 と「21世紀の海のシルクロード」計画 (一帯一路構想)、アジアインフラ投資銀行(AIIB)およびシルクロード基金の設立という「中国版マーシャルプラン戦略」(中国メディア)について検討を行った。

主席は2013年9月7日、訪問先のカザフスタンの大学での講演会で、「シルクロード経済ベルト」と呼ぶ中央アジア諸国などとの経済協力の構想を明らかにした。

「人口30億人のシルクロード経済ベルトの市場規模と潜在力は他に例がない」と述べ、太平洋からバルト海に至る物流の大動脈の整備や、人民元と各国通貨の直接交換取引の拡大を挙げた。
中国と中央アジアのほか、ロシアやインド、パキスタンなども含めた広範な地域を想定しているとみられる。

2013/9/18  中国の習近平主席、「シルクロード経済ベルト」を提唱 

習主席は11月9日、アジア太平洋経済協力会議(APEC)の関連会議で基調講演し、「各国と協力して二つのシルクロード経済圏の建設を進める」と述べた。
アジアインフラ投資銀行(AIIB)などを通じ、中国自らの資金で地域経済の一体化を主導する意欲を示した。

APEC閣僚会議が開かれた11月8日にバングラデシュ、タジキスタン、ラオス、モンゴル、ミャンマー、カンボジア、パキスタンの首脳と「相互接続パートナーシップ強化対話会議」を開催した。

習主席は「『シルクロード経済圏』と『21世紀の海のシルクロード』を建設しよう」と呼びかけ、中国が400億ドルの「シルクロード基金」を創設すると表明した。

なお、中国を中心としたアジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立が10月24日に 決まった。

AIIB、BRICS開発銀行、シルクロード基金がシルクロード経済圏構想を資金面でサポートする。

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習主席は10月11~19日の日程で、タジキスタン、モルジブ、スリランカ、インドの4ヵ国を歴訪した。
中国はこれを、「一帯一路構想を実現する旅」と位置づけている。

「一帯一路構想」は、中国から中央アジアを経て欧州に至る「シルクロード経済帯」と、中国沿岸部からアラビア半島までを結ぶ海上交通路の「21世紀海上シルクロード」を中国が中心になって開発していくという構想である。

人民元の流通、政策の共通、道路の開通、貿易の盛通、民心の相通という「五通」を目指している。

習主席はこう述べている。

シルクロード経済ベルトと21世紀の海のシルクロードというイニシアティブは時代の要請と発展加速という各国の願望に順応しており、包括性の高い発展プラットフォームを提供し、しっかりした歴史的淵源と人的・文化的基礎を備え、急速に発展する中国経済と沿線国の利益を結びつけることができる。

力を結集してこの重大事をうまく運び、『親、誠、恵、容』の周辺外交理念を堅持し、近睦遠交、沿線国がわれわれに対してさらに賛同し、親しくし、支持するようにする必要がある。

この地域は、世界総人口の63%を占める44億人の人口を有し、GDP規模も世界全体の29%を占める21兆ドルに達する。
沿線には多くの新興市場と途上国があり、発展の伸びしろは大きい。
中国はこの地域と緊密な経済貿易協力を展開しており、その貿易額は中国の対外貿易総額で4分の1以上を占めている。

既に、Eurasian Land Bridges 計画(江蘇省の連雲港を出発点として、西安、ウルムチ、中央アジア、ロシアを経由して、アムステルダムまで鉄道を建設する計画)を筆頭に、中国・シンガポール経済回廊、 バングラデシュ・中国・インド・ミャンマー経済回廊など、「一帯一路」の基幹通路案の検討が進んでいる。

広西チワン族自治区は向こう5年で、南寧からベトナムを通過しシンガポールを結ぶ高速鉄道建設計画を進める。

バングラデシュ・中国・インド・ミャンマー経済回廊は2013年5月の李克強総理のインドを訪問時に提案したもので、既に合同作業部会が開かれている。

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中国を中心としたアジアインフラ投資銀行(AIIB)の創設準備の了解覚書が10月24日に 調印された。

アジア各国のインフラ整備を支援するAIIB設立構想は2013年10月、習主席が東南アジアを歴訪した際に表明した。日本主導のアジア開発銀行(ADB)に対抗するためとみられ た。

当初は、ASEAN 10カ国のほか、韓国などの計16カ国が参加するとされた。南シナ海の領有権をめぐり中国と対立するフィリピンも参加する。 中国との国境紛争を抱えるインドなどは交渉に加わっていない。カナダや豪州なども参加を示したとされる。日本には参加の打診もないという。

10月24日に了解覚書に署名したのは、中国、ASEAN10カ国と、インド・バングラデシュ、モンゴル、パキスタン、スリランカ、ネパール 、カザフスタン、ウズベキスタンと、アラブ圏のクウェート・オマーン・カタールの計22カ国。当初、バングラとインドネシアは参加をためらっていた。

韓国は現時点では入らず、逆にインドが参加を決めた。

中国は韓国に対し、参加を要請していた。訪韓した唐家セン元国務委員も朴大統領を表敬訪問した席で、韓国のAIIB参加を繰り返し要請したと伝えられた。

韓国政府は来年前半には参加するかどうかについて決定するとされている。

最大の懸念は中国の出資比率で、中国が圧倒的多数の出資比率を掌握し、韓国がアジアインフラ投資銀行の決定に参与できない可能性も あるとみている。
また、米国はアジアインフラ投資銀行は国際金融秩序に適合しないと批判、参加を検討する韓国に慎重に検討するよう呼び掛けているとされる。

当初中国の出資比率50%に不満を表したインドは、加盟国間の対話で支配構造を調整することができるという中国の意思を確認し、参加を決めた。

豪財務相は、「AIIB参加を前向きに検討中で、創設準備の了解覚書に署名するだろう」としていたが、署名していない。米国の立場を考慮して観望していると見られている。

当初の資本金は500億ドル規模で、ADB (1650億ドル)のADBの1/3となる。

当初は中国が50%超を負担する方向だったが、中国色が強まるのを嫌う参加国に配慮し、中国は出資比率を抑えることを検討している。