米国、自動車部品カルテルの摘発続く

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米司法省は11月14日、ベアリングの価格調整に関与したとして連邦大陪審が日本精工とジェイテクトの幹部社員を1人ずつ起訴した、と発表した。
一連の事件で、米国で刑事責任を問われたのは日本人45人を含む46人になった。

アイシン精機は11月14日、米国での自動車用エンジン部品販売で米独占禁止法に違反したことを認め、米司法省との間で罰金3580万ドルを支払う司法取引に合意したと発表した。

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古河電工は2011年9月29日、米国司法省との間で、自動車用ワイヤーハーネス係るカルテルに関して司法取引に合意した。

起訴事実を認め罰金200 百万米ドルを支払うとともに、社員3名が有罪を認め、禁固刑に服した。

FBIは2010年にデンソー、矢崎総業、東海理化にも立ち入り検査をしており、今後、決定がなされると想定された。

実際にはこれら各社に加え、次から次に多くの企業が司法取引に合意して罰金を払うとともに、社員が起訴されたり、司法取引で禁固刑・罰金刑に服した。

2014年に入っても摘発は止まらず、下記の各社が罰金を支払った。

・ 1月16日、小糸製作所が自動車用ランプ及び自動車HID ランプ用バラストの価格カルテルで有罪を認め、罰金5660万ドルの支払いに同意。

・ 2月3日、愛三工業が電子スロットルボディーの価格カルテルで有罪を認め、罰金686万ドルの支払いに同意 。

・ 2月13日、ブリヂストンが自動車の防振ゴム部品の価格カルテルで有罪を認め、罰金425百万ドルの支払いに同意 。

同社はマリーンホース事件で有罪となったが、本件について開示しなかったため、高額の罰金となった。

・ 4月23日、ショーワが パワーステアリング部品の価格カルテルで有罪を認め、罰金19.9百万ドルの支払いに同意。

8月19日、日本特殊陶業はスパークプラグやセンサーのカルテルでの有罪を認め、52.1百万ドルの罰金に同意。

・ 9月29日、豊田合成はホース、エアバッグ、ハンドルでのカルテルを認め、26百万ドルの罰金支払いに同意 。

・ 10月31日、日立金属は自動車用ブレーキホースでのカルテルを認め、125万ドルの罰金支払いに同意。

・ 11月13日、アイシン精機は可変バルブタイミング機構でのカルテルを認め、35.8百万ドルの罰金支払いに同意。

これらにより、自動車部品のカルテルで摘発された企業は31社に及び、罰金額は2,434百万ドルに達した。
このうち、外資系は3社のみで、残りは全て日本の企業である。

また、刑事責任を問われた個人は46名(うち外人は1名のみ)で、このうち、26名(うち外人1名)が禁固刑と罰金刑(殆ど全てが1人2万ドル)を受けている。

残りの20名は起訴された状態で、司法取引の最中か、若しくは日本に居たままで米国の処罰を避けているかのどちらかかと思われる。

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自動車部品カルテルが摘発される以前は、カルテルで刑事罰を受けた日本人は2人だけであった。

社名 事件 社員 禁固刑 罰金
ダイセル ソルビン酸価格カルテル H. H. 3ヶ月 2万ドル
ブリヂストン マリンホース国際カルテル M. H. 2年 8万ドル

ダイセルの場合、チッソの提出した詳細情報のために役員とともに若い担当者が起訴されることとなった。
役員は日本から出ず、時効中断のままとなっているが、担当者の場合は今後海外に行けないのでは仕事にならないため、自ら渡米し、服役を選んだ。

米国司法省は、独禁法を有効に施行するという司法省の能力を示すものとして、「日本人で最初に服役」と誇らしげにこれを発表している。
自ら服役を選んだことを評価し、刑期や扱いについて特別の扱いをしている。

http://www.usdoj.gov/opa/pr/2004/August/04_at_543.htm

ブリヂストンのマリンホース事件の場合は、本人が談合現場で逮捕されたため、刑事罰を避けられなかった。

2008/12/12 マリンホース国際カルテル事件で日本人に有罪判決

これ以外にも、これまで多くの日本人が訴追されているが、これまでは、日本在住であれば米国から見ると国外逃亡で時効中断となり、刑事罰を避けてきた。

米国はもちろん、他の国(の多く)に入国しても、犯罪人引渡し条約で米国に引き渡される。
 
   
2014/5/8  マリーンホース国際カルテルでのイタリア人被告の米国への引渡し

但し日本の場合は1980年の条約で、両国でいずれも処罰の対象となり両国の法律で死刑、無期懲役、1年以上の拘禁刑に当たる罪の場合は引渡しが可能となっているが、独禁法違反の場合には日本政府は該当せずとし、引渡しは行われなかった。

2009年改正により、独禁法の最高が懲役5年となったため、執行猶予の対象外となり、条約上の引渡し対象となる。

条約第5条では、「被請求国は、自国民を引渡す義務を負わない。ただし、被請求国は、その裁量により自国民を引き渡すことができる」となっており、日本政府の判断で引渡しを行うかどうかを決めることとなる。

今回、自動車部品カルテルで今までに25名の日本人が禁固刑を受け、合計27名となった。上記の前例があるにも係わらず、自動車部品カルテルで急に多数の日本人が禁固刑を受けたのは驚きである。

米司法当局が強硬で、企業としての司法取引で個人の処罰を条件にしているのかも分からない。

 

自動車部品カルテルの米国での摘発状況は下記の通り。

  百万$  決定日   個人 禁固刑 決定日
古河電工 200 2011/9   I.F. 1年+1日 2011/10/24
H.N. 15か月 2011/10/13
T.U. 18か月 2011/11/10
矢崎総業 470 2012/1   T. H. 2年 2012/1/30
R. K. 2年 2012/3/26
S. O. 15か月
H. T. 15か月
T. S. 14か月 2012/8/16
K. K. 14か月 2012/9/26
デンソー 78 2012/1   N. I. 1年+1日 2012/3/26
M. H. 14か月 2012/4/26
Y. S. 16か月 2013/5/21
H. W. 15か月
S. H. 1年+1日 2014/6/30
K.F. 1年+1日 2014/2/20
ジーエスエレテック 2.75 2012/4   S.O. 13ヶ月 2014/7/31
フジクラ 20 2012/4   R.F. 起訴段階 2013/9/19
T.N.
Autoliv Inc
(Stockholm)
14.5 2012/6   T.M.
日本人
1年+1日 2013/7/16
TRW Deutschland
(米社独子会社)
5.1 2012/7        
日本精機 1 2012/8        
東海理化 17.7 2012/10   H.H. 起訴段階 2014/5/22
ダイヤモンド電機 19 2013/7   S.I. 16ヶ月 2014/1/31
T.I. 13ヶ月
パナソニック 45.8 2013/7   S.K. 起訴段階 2013/9/24
日立オートモティブシステムズ 195 2013/9/26   T.T. 起訴段階 2014/9/18
K.F.
K.T
T.I.
ジェイテクト 103.27 M.I. 起訴段階 2014/11/13
ミツバ 135      
三菱電機 190 A.U. 起訴段階 2014/9/18
M.K. 
H.S.
三菱重工 14.5      
日本精工(NSK) 68.2 H.H. 起訴段階 2014/11/13
ティラド(T.RAD) 13.75      
ヴァレオジャパン
(仏Valeoの子会社)
13.6      
山下ゴム 11 H. Y. 1年+1日 2012/11/16 
タカタ 71.3  2013/10/9   G.W.
米国人
14か月 2013/9/26
Y.U. 19 ヶ月 2013/11/21
S.I. 16ヶ月
Y.F.   14ヶ月
G.N. 起訴段階 2014/6/5
東洋ゴム 120.0  2013/11/26   T.K. 1年+1日 2013/9/26
M. H. 起訴段階 2013/1121
K. N.
スタンレー電気 1.44  2013/11/27        
小糸製作所 56.6  2014/1/16        
愛三工業 6.86  2014/2/2        
ブリヂストン 425.0  2014/2/13   Y.T. 起訴段階 2014/4/15
Y.R.
I.Y.
Y.S. 18ヶ月 2014/4/16
ショーワ 19.9  2014/4/23   A.W. 起訴段階 2014/10/15
日本特殊陶業 52.1  2014/8/19        
豊田合成 26  2014/9/29        
日立金属 1.25  2014/10/31        
アイシン精機 35.8  2014/11/13        
累計(31社)  2434.42     46名 罰金
各2万ドル
 


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