BP、メキシコ湾岸原油流出事故の補償費増大

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2010年のBPのメキシコ湾岸原油流出事故に関し、BPが補償に関する米国の地裁と高裁の判断の見直しを求めて最高裁に上告していたが、最高裁は12月8日、理由を述べずに上告を却下した。

BPの補償額が際限なく増える恐れがある。

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BPは2012年3月、New Orleansでの個人や企業を原告とする訴訟の併合審理手続き(Multi-District Litigation)で、原告側の運営委員会との間で和解に達したと発表した。

提案された和解条件は承認のため裁判所に提出され、4月18日、和解が最終決定した。

基金からの賠償額に不満を持つ個人や企業が訴訟を起こしたもので、漁業関係者、清掃業者、ホテル、不動産会社など10万以上に及ぶ。弁護士は340人。

和解は2つの部分に分かれる。
一つは経済的損失で、これには
メキシコ湾の海産物業界への経済的損害(補償額 23億ドル)やメキシコ湾岸の観光促進のための宣伝費支援などが含まれる。

もう一つは医療費で、現実の健康被害の補償や、21年間の健康相談、今後の健康被害への対応など。更に地域の(原告以外の人も含めた)ヘルスケアの幅、質の向上のための資金(105百万ドル)が含まれる。

BPの推定では和解で払われる総額は約78億ドルで、全額が被害補償のための200億ドルの基金(Gulf Coast Claims Facility)から払われる。

2012/3/5 BP、メキシコ湾岸原油流出事故で漁業関係者などと和解 

具体的には裁判所が任命した管理人が個別の補償額を決めるが、BPはこの管理人が和解協定を誤って解釈し、補償を決めているとの不満を持った。

問題は「経済的損失」についてで、被害が立証されていないのに補償がなされているというもの。

例えば、ミシシッピーのホテルの場合、無関係の火災事故で数ヶ月営業を停止しているのに450千ドル以上が支払われた。
ルイジアナの養老院の場合は原油漏洩事故の前に閉鎖されたのに、662千ドルが支払われたという。

他にも、原油流出が起きる前の時点ですでに車両の数を減らしていたトラックリース会社や、フロリダ州から支払いを受ける時期をずらした非営利のカウンセリングサービスなどもある。

BP側の訴えに対し、地裁も高裁も、BPが結んだ和解協定では事業者は直接的に原油漏洩事故で被害を受けたと立証する必要はなく、漏洩事故の後の3~8ヶ月に漏洩前の期間と比較して収入が減少していることを示すだけでよいとの判断を示した。

英政府と米商工会議所などの経済団体は米最高裁に審理を始めるよう求めていた。
英政府は、BPが支払う補償金の件で「深刻な」懸念が生じており、下級裁判所の判決により「国際通商に不可欠な信頼」が損なわれるリスクがあると指摘した。

今回最高裁は、理由を述べずにこれを却下した。

BPは当初、この和解で78億ドルの支払いを見込んだが、今回の上告却下で、補償額は97億ドルを超えてどんどん膨らむと懸念している。

BPでは「原油流出事故の被害を受けていない原告にも補償金を支払うことになると憂慮しており、それにより、こうした原告の弁護士たちが不当な利益を得ている」と述べ、「補償の対象とはならない不正請求に応じる考えはなく、疑わしい請求に対する調査はこれからも続ける」としている。

ニューオーリンズの裁判所がBPに一つの方法を示した。
原油流出事故で被災しなかった原告を個別に偽証罪で訴えることである。補償金額の請求書類は原告を「原油流出事故による経済的損失を受けた者」として
おり、事故による損失を受けていなければ偽証したこととなる。

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もう一つ、大きな問題がある。

米政府による水質浄化法(Clean Water Act)に基く民事訴訟の裁判で、New Orleansの District Court のCarl Barbier 裁判官は9月4日、BPに「重大な過失」(gross negligence )と「故意の不法行為」(willful misconduct)があり、これが大量流出の原因となったとし、BPは水質浄化法によるバレル当たり4,300ドルの罰金に値するとの判決を言い渡した。

水質浄化法では原油の流出量 1バレルに対して、1,100ドルの罰金が決められている。
但し、重大な過失による場合は、罰金は4,300ドルとなる。

流出量については双方に大きな差があり、具体的な罰金額については、2015年1月以降に審理する見通し。

BPは35億ドルと見込み、引き当てをしているが、最悪180億ドルにもなるとされる。

2014/9/8    2010年の原油流出事故、「BPに重大な過失」と認定

BPは10月に裁判所に対し判断を見直すか、新たに審理をするかを求めたが、裁判官は11月13日、これを拒否した。
BPは上告するとしている。



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