DuPont、クロロプレンゴム事業を電気化学に売却

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DuPontは12月10日、DuPont Performance Polymers部門のクロロプレンゴム(商標名:ネオプレン)を電気化学が70%、三井物産が30%出資して新設するDenka Performance Elastomer LLCに売却する契約を締結したと発表した。電気化学も11日、本件の発表を行った。

当局の承認を得て、2015年上半期の買収完了を目指す。約235名の従業員は新JVが引き継ぐ。
売買条件は明らかにしていないが、電気化学では100億円~140億円を想定している。

クロロプレンゴム (polychloroprene) は、クロロプレンの重合によって得られる合成ゴムで、略称CR。
1930年、DuPontのWallace Carothersが開発し、翌1931年から製造を始めた。
ほとんどのゴムがシス型が主たる構造であるのに対し、クロロプレンゴムはトランス型である。

製法にはアセチレン法とブタジエン法があり、大半はブタジエン法である。

電気化学は1962年に青海工場で独自のアセチレン法で製造を開始、現在では世界約80カ国に供給する最大級のクロロプレンメーカーである。

DuPontはルイジアナ州 La Place の Pontchartrain 工場で生産しており、主に北米、南米、欧州で販売している。

電気化学は今回の買収で、アセチレン法の青海工場に加え、北米にブタジエン法の第2生産拠点を持つことなり、高品質で安定的な供給体制が強化される。

三井物産は長年、グローバルネットワークを使って電化のクロロプレンの販売に協力しており、事業パートナーとなる。

他方、DuPontは物言う投資家(activist investor )から非コア事業を売却し、成長の早い分野に集中するよう圧力を受けており、売却を決めた。

なお、Pontchartrain 工場ではパラ系アラミド繊維のKevlar を生産しており、クロロプレンプラントのみを売却する。

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現在のクロロプレンのメーカーは下記の通り。

DuPont

上記の通り、1931年に生産を開始した。

1996年4月にDuPontはDowと50/50JVのDuPont Dow Elastomers を設立し、クロロプレンもこれに移した。

両社は2004年4月にJVの将来に関してDowにオプションを与えたが、2005年1月、Dowが特定資産を買収するオプションを実行し、JVから撤退すると発表した。

Dowはポリオレフィンエラストマー、EPゴム、塩素化ポリエチレンなどのエチレン及び塩素化エラストマーを引き取り、DuPont は残るクロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、フッ素ゴムなどを引き取った。

DuPontはJVのDow 持分を買い取って100%子会社とし、DuPont Performance Elastomersに改称した。

Lanxess

元はBayerの事業で、Lanxess設立時に引き継いだ。ドイツのDormagenで製造している。

2012年末に10%増強し、能力を年産63千トンとした。

海外の生産はこの2社である。

以前はEniが生産していたが、2005年に工場を閉鎖した。

Eni は1992年末にRhone-Poulenc からクロロプレン事業を買収し、100%子会社のPolimeriで事業を行っていた。
(Polimeri はENIとUCCの50/50 JVであったが、UCCとDowの合併に当たり、ENIのポリウレタン事業のDow への売却との交換でENI 100%とした。Eniは現在は Versalis S.p.A.となっている。)

Polimeriは2005年末に唯一の工場(フランスのChampagnier)を閉鎖 した。

昭和電工 20千トン

昭電は1960年にDuPont との50/50 JVの昭和ネオプレンを設立し、事業を開始した。

その後、DuPontとDowがDuPont Dow Elastomer を設立したのに伴い、改組した。

ネオプレン製造:昭和DDE (DuPont Dow 50%、昭電 50%)
エラストマー製品の販売:DDE Japan (DuPont Dow 69.9%、昭電 30.1%)

2002年10月に合弁解消で合意、昭和DDEは昭電の100%子会社に、DDE Japan はDuPont Dowの100%子会社となった。

東ソー 34千トン 

南陽事業所に年産30千トンの生産能力を持っていたが、2007年に34千トンに増強した。

電気化学  100千トン

2012年11月に「デンカクロロプレン50周年感謝の集い」を開催した。

生産開始当時は能力は2000トンであったが、世界最大の10万トンに拡大した。
世界80カ国以上の国で使用されており、「今や販売拠点がないのは、南極大陸のみ」としている。

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州委員会は2007年12月5日、クロロプレンゴムの市場棲み分けと価格操作を理由に5社に総額 247.635百万ユーロ(約390億円)の制裁金支払いを命じたと発表した。
制裁金支払いを命じられたのは、バイエル、電気化学、旧DuPont Dow Elastomers、ENI、東ソーの5社。(昭電は欧州での販売権がなし)

各社の制裁金は以下の通り。(単位:千ユーロ)

  本来の制裁金 減額 実際の制裁金
Bayer     201,000  100%        0
東ソー        9,600   50%     4,800
DuPont/Dow
(うちDow) 
    79,000
    (60,475)
  25%     59,250
    (44,250)
Dow  

25%

4,425

ENI      132,160      132,160
電気化学      47,000       47,000
合計        247,635


2007/12/11 欧州委員会、クロロプレンゴムのカルテルで 247.635百万ユーロの制裁金




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