大塚ホールディングスは12月2日、米製薬ベンチャーのAvanir
Pharmaceuticals
を35億3900万ドルで買収する契約を締結したと発表した。
12月15日までにTOBを開始、完全子会社化を目指す。
Avanir Pharmaceuticalsは1988年の設立で、中枢神経疾患領域に集中しており、情動調節障害(人前で突然泣き出すなど自分の感情がコントロールできなくなる症状)の治療薬
Nuedexta を世界で初めて(また世界で唯一)開発し、2011年に米国で発売した。
2013年7月から2014年6月の1年間で9400万ドルを売り上げた。
また、アルツハイマー型認知症、パーキンソン病、偏頭痛やその他の中枢神経系の分野の開発を行っている。
アルツハイマー型認知症に伴う行動障害の適応をターゲットにフェーズ3臨床試験の準備を進めている。アルツハイマー型認知症は世界に3千万人の患者がいるとされる。
買収によりAvanir
の
① 情動調節障害という未開拓な市場の中で創造した治療薬
Nuedexta
②
アルツハイマー型認知症に伴う行動障害の治療を目的とした AVP-786
③ 「神経疾患領域」の臨床開発力及び市場開拓力
の新たな価値が大塚製薬に加わる。
大塚製薬が強みとする「精神疾患領域」に「神経疾患領域」が加わり、中枢領域全体に広がる。
精神疾患は心の症状(不安、抑うつ、不眠、イライラ、幻覚、幻聴、妄想など)を扱う。
神経疾患は脳神経系の疾患(脳血管障害、パーキンソン病、ニューロパチーなど)を扱う。
大塚製薬は2013年10月に安定同位体等研究用試薬を製造する米国のCambridge Isotope Laboratoriesを100%子会社としており、これのフラグメント創薬技術を加えることで、3つの創造性に満ちた会社の強みが融合してシナジーを生み出すことを期待している。
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大塚製薬は中枢神経領域における研究開発を1980年代に開始し、世界で初めてのドパミンD2受容体パーシャル・アゴニストである抗精神病薬ABILIFYを創製している。
ABILIFYは世界60カ国・地域で販売され、世界の全医薬品売上ランキングで7位となった。
特に米国では大うつ病補助療法や双極性障害への処方が拡大し、初の全医薬品売上1位となった。
日本では統合失調症に加え双極性障害躁症状、うつ病・うつ症状の適応が広がった。
このほか、循環器領域では、14カ国・地域で発売しているバソプレシンV2-受容体拮抗剤サムスカ、胃の粘膜保護・改善する胃炎・胃潰瘍治療剤ムコスタなどを持ち、がん領域では、Bristol-Myers Squibbと日米欧で共同事業を進めている抗悪性腫瘍剤スプリセル、造血幹細胞移植前治療薬ブスルフェクスを持つ。
更に、「健康な人を更に健康にする」をうたい文句にしたニュートラシューティカルズ(nutrition+ pharmaceuticals)事業では、水分・電解質補給飲料ポカリスエット、大豆が地球上の健康問題、環境問題などの解決になるとする「Soylution」製品(ヘルシー大豆スナック ソイカラ、大豆バー ソイジョイ、大豆炭酸飲料 ソイッシュ)、「肌の健康」をテーマにした健粧品(コスメディクス)を扱っている。
世界で5700億円を売り上げている大塚製薬の精神疾患の治療薬ABILIFYの特許は今年10月から切れ始めている。
このため、先行きの減収を補う新薬候補の獲得が必要で、同社は中期経営計画で「収益構造の多様化」を掲げている。
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