サウジアラビア、米・アジア向け原油値下げ

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サウジアラビアは12月4日、米国とアジア向けの2015年1月積みの原油価格を大幅に引き下げると発表した。
アナリストは、「サウジアラビアは市場シェアを失いたくないとの姿勢を明確に示している」と指摘している。
 

Saudi Aramcoは代表油種 Arabian lightの米国向け公式販売価格(OSP)を12月から0.70ドル引き下げ、Argus Sour Crude Indexより1バレル当たり0.90ドル高い水準とする。


アジア顧客向けの価格は1バレル当たり1.90ドル引き下げ、ドバイ原油とオマーン原油の平均価格より2ドル安い水準とする。


一方、欧州向けのOSPは1バレル当たり0.20ドル引き上げたが、ブレント加重平均価格より3.15ドル低い水準である。


OPECは11月27日の総会で原油の減産見送りを決定した。

5カ月連続の原油価格下落を受け、最も打撃を受けているベネズエラ、アンゴラ、ナイジェリアなど8カ国が減産を提案した。
これに対し、サウジなどが異議を唱えたため、全会一致の賛成が必要な減産の提案は退けられ、日量3000万バレルの生産目標を据え置いた。

ベネズエラは経済が悪化の一途をたどり、深刻な外貨不足のなかで対外債務の支払いをまかなうため、輸入削減を余儀なくされている。
「ベネズエラの物資不足はシリアより深刻だ」とされる。
原油価格の下落で、債務不履行の可能性への懸念さえ出てきている。

一方、サウジアラビアなどは財政赤字になる価格水準が相対的に低く、財政的にも余裕がある。

Forbes 誌によると、歳入と歳出が均衡する原油価格は 以下の通り。
 サウジ 100$、クウェート 75$、カタール 71$、UAE 80$
    ベネズエラ 162$、イラン 134$、ナイジェリア 126$、ロシア 100$

さらに、サウジ側には、過去に減産を決めても、イランやベネズエラが原油収入を確保するため「ヤミ生産」を繰り返してきたことへの不信感も強かった。

また、OPEC減産で原油価格を回復させても、米国のシェールオイルなど非OPECの原油生産が増加すればシェアを奪われるという危機感がある。

2013年の原油生産量シェアはOPECが42.5%、非OPECは57.5%で、うちロシアが12.4%、米国が11.5%となっている。

報道によると、サウジアラビアのヌアイミ石油鉱物資源相は、米国のシェールオイルブームに対抗する必要があるとし、減産を見送ることで原油価格を抑制し、米国のシェールオイル生産業者の収益を圧迫すべきと強調したという。

関係者は、「ヌアイミ氏は米国との市場シェア争いに言及した。サウジが市場シェア争いを望んでいるため、減産を主張していた加盟国はサウジの意向に沿うしか選択肢がなかった」と明かした。


OPECの減産見送り決定を受け、値下がりを続けていた原油価格は更に下がり続けている。

今回のアジア向け及び米国向け値下げは、サウジがシェア防衛に出たと受け止められ、WTI原油価格は約5年ぶりの安値となった。


ナフサ価格も同様である。

 



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