米国、包括的歳出法案が可決するも、問題を残す

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米上院本会議は12月13日深夜、2015年9月までの大半の政府支出を賄う内容の総額1兆1000億ドルの包括的歳出法案を賛成56、反対40で可決した。

下院は12月11日夜に219対206の賛成多数で可決しており、オバマ大統領の署名を経て成立する。

しかし、オバマ大統領の移民制度改革(不法移民の大量受け入れ)の所管事項が多い国土安全保障省の予算については、来年2月までとされた。

今回の選挙で民主党は上院でも過半数を取れず、来年1月3日からは共和党が上下両院を握ることとなる。
移民関連の予算については否定される可能性があり、2月末に混乱が起こることが予想される。

また、2015年3月には債務上限の期限がくる。
共和党は医療制度改革(Obama Care)などオバマ大統領の政策の変更を上限引き上げの条件にすると見られ、またデフォルト寸前までいくと思われる。

共和党のTea Partyグループは、予算不成立による政府機関の閉鎖、連邦債務上限の据置きによるデフォルトも辞さずという強硬姿勢のため、今後も不毛な争いが続くこととなる。

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オバマ政権は成立以来、予算案と債務上限問題で苦しんでいる。

2013年末まで本予算が一度も通らず、それまでの支出のペースを維持する短期の暫定予算をつないだ。

背景については 2013/3/25 米議会が暫定予算可決 

2012年末には連邦債務は上限16.4兆ドルに達し、減税の期限切れと政府支出の強制削減がほぼ同時に訪れる「財政の崖(Fiscal Cliff)」問題が発生した。

米与野党幹部は2012年12月31日夜、 「財政の崖」への対応で、当面の回避案で合意した。

2013/1/4   米国、「財政の崖」問題を当面回避

しかし、2013年5月には2月に認められた債務上限に達し、デフォルトを回避するためさまざまな緊急措置を実施し、資金をやりくりした。

その後、米与野党は2013年10月以降の暫定予算案で合意できず、10月1日、政府は1996年以来、17年ぶりとなる政府機関の一部閉鎖を開始した。
また、資金のやりくりも限度にきて、デフォルト寸前となった。

米議会の上・下院は2013年10月16日深夜、米政府の債務上限を2014年2月7日まで引き上げ、政府の一部閉鎖も解消する法案を可決、米政府のデフォルトがギリギリで回避された。

2013/10/17 速報 米国、政府デフォルトを直前に回避 

 

2013年12月10日、米議会の民主党代表を務めるPatty Murray上院予算委員長と共和党代表のPaul Ryan下院予算委員長は民主・共和両党の超党派委員会が2015会計年度末(2015年9月末)までの予算決議案で合意したことを発表した。

財政支出の削減を求める野党・共和党への配慮から、富裕層への増税を避けつつ、連邦職員の退職手当の削減や空港利用料の増額案などを盛り込んだ。
一方、民主党の要求に応じ、3月に始まった歳出の強制削減措置で圧縮するはずだった630億ドル分を復活させた。

2013/12/18  米国、予算案成立の見込み → 成立 

米議会上院は12月18日の本会議で、超党派の財政協議の合意を踏まえた修正予算決議案を民主、共和両党の賛成多数で可決、オバマ大統領は12月26日、法案に署名した。しかし、これは「予算方針」であり、具体的には各年度の歳出法案を可決する必要がある。

2014会計年度については、米上院は2014年1月16日に、2014年9月30日までの歳出法案を可決した。

債務上限については、2014年2月12日に上院が債務上限の適用を2015年3月まで凍結する法案を可決し、成立した。

2014/2/14  米債務上限上げ法案可決 デフォルト回避確定

2015会計年度の予算案は、相変わらず2014年10月1日の年度開始時には成立せず、上院は2014年12月11日までの暫定予算を可決した。

今回、与野党は暫定予算の期限切れ直前の12月9日に新たな歳出法案をまとめた。

オバマ大統領が議会を通さず、大統領権限で移民制度改革に乗り出したことに野党・共和党が反発したため、移民制度改革の所管事項が多い国土安全保障省の予算については、来年2月までとする変則的なものである。

下院は12月11日に可決したが、上院では共和党のTea Party系グループがオバマ大統領による移民制度改革に反対しため、同日中に採決できず、2日間の暫定予算を通し、ようやく13日深夜に採決した。

 


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