ニューヨーク州の健康局は12月17日、水圧破砕法 (Fracking)に関する報告書を公開した。
水圧破砕法の環境や健康への影響は「完全には解明されていない」としつつも「環境に影響を及ぼし、潜在的に健康にも有害であることは明らか」とし「ニューヨーク州では継続すべきではない」と結論づけた。
Howard Zucker健康局長は、調査の結果、著しい健康リスクがあると述べた。水と空気の汚染に対する懸念を示し、Frackingの安全性を確認する科学的証拠は不十分であるとした。
自分自身がFrackingが行われている地域に家族がすむことを望むかと自問し、答えは "no"
とした。「潜在的リスクは大き過ぎ、十分にわかっていない」と述べた。
Joe Martens環境局長はFracking禁止を推奨すると述べ、Andrew Cuomo知事は決定を健康局長と環境局長に任せると述べた。
2015年初めに正式に禁止されると見られている。
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水平型のFracking
掘削法は、深いシェール岩層に大量の水や砂、化学物質を一気に注入して、内部にあるガスを抽出する。
注入した大量の水や化学物質を回収できず、地下水脈に流れ込んで水質が汚染される危険がある。
New York 州にはMarcellus shale があるが、この辺りは New York 680万人、Pennsylvania 540万人、Delaware70万人、New Jersey 290万人の合計1,580万人に飲み水を供給する水源である。
Cuomo知事は2011年に就任したが、それ以前に David Paterson 前知事がFracking が環境にもたらす影響に関する環境局の報告がまとまるまでFracking を禁止した。
環境局はFracking を認める報告草案を発表したが、反発する世論を受け、Paterson 知事は第2次草案の作成を命じ、結論は次のCuomo知事に先送りされた。
環境保護団体からの激しい反対と、Frackingを認めよとする保守的な有権者の請願の板挟みとなったCuomo 知事は何度も決定を遅らせ、決定を州保健局に預け、人体への影響に関する報告をまとめるよう命じた。
2010年の米のドキュメンタリー映画「ガスランド ~アメリカ 水汚染の実態~」は大きな反響を呼んだ。
2013年1月にはオノヨーコと息子のショーン・レノンが反対派に加わり、二人は、204千人分の署名をCuomo州知事に提出した。
レノン家ではシェールガスの開発地の近くに農場を購入しており、Frackingによって土壌等に影響が出ることへの反対を表明した。
ニューヨーク州は現在まで、Paterson 前知事から 6年間にわたって実質的にFrackingの一時停止措置を取っている。
Cuomo知事が再選を果たして6週間後に、ようやく報告が発表された。
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米国内でシェールの採掘を禁じるのは、北東部バーモント州(2012年5月に禁止法案を可決)に続いて2例目だが、同州ではFrackingは行われておらず、象徴的な法律であり、実質的にはNew York州が最初の例である。
しかし、New York州では6年前の州による一時停止措置の後、170もの市町村がFracking 禁止の条例を出している。
New York 州北部のDryden と Middlefieldが裁判の対象となった。Norse Energy Corp.と農家が、市町村は石油・ガス産業に制限を加える権利を持たないとして訴えた。
2014年6月30日、州控訴審は3つの下級審判決と同じく、市町村が問題のFrackingを禁じるルールを決めることが出来るとの結論を出した。
New York州が禁止を表明したことで、同様の動きが広がる可能性がある。
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