出光興産、昭和シェル買収へ

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出光興産が昭和シェル石油買収に向け交渉に入ったと報じられた。
2015年2月にも基本合意書を交わし、公正取引委員会の審査などを経て出光がTOBを実施するという。

今夏以降、出光の月岡社長と昭和シェルの会長兼CEOが会談するなど、両社は調整を重ねており、昭和シェルの筆頭株主のシェルもTOBに応じる意向。
また、出光は主力行の三井住友銀行から買収資金を調達するめどをつけたという。

昭和シェルの時価総額は約3800億円で、仮に3割のプレミアムをつけると5千億円程度となる。

両社の3箇所ずつ、合計6箇所の製油所は地域的に重複しておらず、それぞれの設備に最適な石油製品をつくり生産効率を高める。
販売面でも計約8千カ所ある給油所網を統廃合し、収益力向上をめざす。

出光興産の首脳は12月20日朝、記者団に対し交渉の事実を認めたうえで、連携を図る相手企業について「昭和シェル石油とだけということはない。ドアをオープンにして交渉している」と述べた。他の交渉相手についての質問に対しては、東燃ゼネラル石油などの名前を挙げた。

付記 東燃ゼネラルは12月22日、出光興産との具体的な交渉の事実はないと発表した。

なお、エネルギー供給構造高度化法に基づき、JXは室蘭製油所の原油処理を、出光は徳山製油所における原油処理機能を停止したが、両社は年間約230万KLの石油製品をスワップすることで合意している。

出光による昭和シェル買収後も、このスワップは維持される見込み。

2013/2/28 JX日鉱日石エネルギーと出光興産、製油所停止で製品スワップ 


今後は、残るコスモ石油と東燃ゼネラル石油の去就が注目される。

コスモ石油と東燃ゼネラルは、コスモの千葉製油所(220千B/D)と東燃ゼネラル傘下の極東石油工業の千葉製油所(152千B/D)の共同事業に関する検討を行ってきた。

2013/10/4 コスモ石油と極東石油工業、千葉製油所の共同事業検討

コスモ石油と東燃ゼネラルは12月19日、下記内容の基本契約書を締結した。

 ・2015年1月に両社で共同事業会社「京葉精製共同事業合同会社」を設立する。
 ・両製油所を結ぶパイプライン敷設を正式合意。
 ・パイプライン完成に先行して両製油所の生産計画を一体的・総合的に立案し、生産効率の向上を目指す。
   また、常圧蒸留装置を含めた設備の最適化についても併せて検討する。
 ・パイプライン完成後、共同事業会社へ精製設備を一元化し、パイプラインを活用することで、
    年間100億円程度の収益改善を見込む。

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ガソリンなど燃料油の国内需要は最盛期の1995年に比べ20%超減少しており、中長期的にはさらに2~3割の減少が見込まれる。

エネルギー供給構造高度化法による告示(2014年3月末期限)により、日本の原油処理能力は日量395万バレルとなった。

一方、生産量は2013年度で335万B/Dであるが、5年後の2018年度の見通しは306万B/Dで、大幅な過剰能力となる。

総合資源エネルギー調査会・第5回石油・天然ガス小委員会(2014/6/10)資料


経産省は6月30日、産業競争力強化法第50条に基づく調査報告「石油精製業の市場構造に関する調査報告」を発表した。

我が国の石油精製業は「概ね過剰供給構造にある」と認められる。
今後、現在の収益状況や精製能力が継続するとすれば、本格的な過剰供給構造に陥るおそれが大きい状況にある。

課題
1)製油所の生産性の向上
  ①過剰精製能力の解消
  ②統合運営による設備最適化
  ③設備稼働率を支える稼動信頼性(設備保全)の向上
  ④エネルギー効率の改善
  ⑤高付加価値化(残油処理能力の向上、石油化学品等の得率向上)
2)戦略的な原油調達
3)公正・透明な価格決定メカニズム等の構築
4) 国際的「総合エネルギー企業」への成長

以上の課題を解決するため、今後、石油精製業者は「資本の壁」や「地理的な壁」を超えた事業再編等に積極的に取り組むことが期待される。

経産省はこれに合わせ、総合資源エネルギー調査会の資源・燃料分科会がまとめた「平成26年度以降の3年間についての原油等の有効な利用に関する石油精製業者の判断基準(告示)案」を公表した。

2014/7/4 経済産業省、2年続きで石油精製能力削減を強制 

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石油精製各社の最近の業績は下記の通り。


 


エネルギー供給構造高度化法による告示による処理後のトッパー処理能力は下記の通り。(千B/D)
両社が合併すると、能力シェアは25%となり、JXに次ぐ2位となる。

出光興産 北海道 160  
千葉 220
愛知 175
徳山 0
合計 555 14%
昭和シェル 昭和四日市石油・四日市 255  
西部石油・山口 120
東亜石油・京浜 70
昭和シェル・扇町 0
合計 445 11%
統合の場合の総合計 1,000 25%
 
JXグループ  1,311 33%
コスモ石油 452 11%
東燃ゼネラル(極東石油を含む) 708 18%
富士石油 143 13%
太陽石油 118
大阪国際石油精製 (ペトロチャイナ 49%) 115
南西石油 (PetroBras) 100
総合計 3,947 100%
* JXグループの鹿島と水島はコンデンセートスプリッターを含む。

石油製品販売シェアは下記の通り。
両社が合併すると、シェアは30.2%となる。なお、
東燃ゼネラルは三井石油を合併 しており、シェアは15.7%。


   http://www.noe.jx-group.co.jp/binran/data/pdf/42.pdf

 注)キグナスは三愛石油が2004年に東燃ゼネラル石油とニチモウから買収した。
    (キグナス石油精製は2001年7月に東燃ゼネラル石油が吸収合併している)

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昭和シェルは1985年に昭和シェルとシェル石油化学が合併して生まれた。

シェルが50%を所有していたが、2004年に9.96%をSaudi Aramcoに売却、翌年さらに5%を追加売却した。

なお、これまでの石油業界の変遷は下記の通り。

 

 

 

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