韓国Samsung Groupは11月26日、Samsung General Chemical や、防衛産業を手掛ける Samsung Techwin などを韓国Hanwhaに1.9兆ウォン(約2000億円)で売却すると発表した。
Hanwha Groupは今後、経営成果によって、1000億ウォンを追加で払うオプション契約も交わした。
売却するのは下記の各社:
防衛関連 | Samsung Techwin の32.4% | 8400億ウォン |
Samsung Thalesの
持分(50%) Samsung Techwinと仏大手電機メーカーThalesのJV |
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石油化学 | Samsung General Chemicalsの57.6% | 1兆0600億ウォン |
Samsung Total Petrochemicals の持分(50%) Samsung General Chemicalsと仏 Total のJV |
HanwhaはSamsung Techwinの筆頭株主となる。
Samsung Techwinが保有する韓国航空宇宙産業(KAI)の10%の持分も確保する。
Samsung TechwinはSamsung General Chemical の持分 23.4%を保有しているため、Hanwhaは実質、Samsung General Chemical の81.0%を買収することとなる。
Samsungは防衛産業から完全に撤退することになる。
買収するHanwha Corpは1974年に防衛産業会社に指定されている。
石油化学については、Hanwha
Chemical とHanwha Energy が共同で買収する。
電子化学素材や精密化学などを扱う Samsung Fine Chemicals は、電子素材との関連性を踏まえ、売却対象から外したとみられる。
Samsung Groupでは、競争力や相乗効果が劣ると判断された企業を思い切って売却することで、グループを電機・電子と金融・サービス、建設・重工業の3部門に再編する作業を本格化するものとみられる。
韓国10位の財閥のHanwha Groupは、株式取得で石油化学や防衛関連事業が強化されると発表した。
買収作業は来年1~2月に承認手続きが行われ、同年前半に終わる予定。
Samsung Groupは総帥の李健煕・サムスン電子会長
の指導の下で拡大を続けてきた。
李健煕会長が5月に急性心筋梗塞で倒れ、後継者の李在鎔・サムスン電子副会長はグループをもっとコンパクトにしたい意向とされる。
なお、オーナー一家はこれら系列会社4社の株をほとんど保有していない。
李健煕は今も意識は完全には回復していないとされ、今回の決定は副会長の意向が反映されたものとされる。
証券界では、副会長のグループに対する支配力強化のための布石と見ている。( この続きは明日)
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売却する事業の概要は下記の通り。
1) | Samsung Techwin の32.4% | ||
同社は1977年に Samsung Precision として設立された。 | |||
1987年にSamsung Aerospace と改称し、2000年に現在のSamsung Techwinとなった。 | |||
光学機器、製造装置、機械、軍事機器、航空エンジンなどを生産する。 | |||
2) | Samsung Thalesの持分(50%) | ||
Samsung TechwinとフランスのThales との 50/50 JV |
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Thales は旧称 Thomson-CSFで、2000年末に英国の防衛機器メーカーRacal Electronics を吸収合併した際に現社名に改称した。 | |||
両社は1978年にSamsung Thomson-CSF を設立、2001年に改称した。 | |||
下記の電子防衛システムの開発を行っている。 | |||
land C2 systems
comprising fire control systems electro-optical tracking systems command, control, and communication systems radars naval combat management systems avionics/electronic warfare systems combat systems. |
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3) | Samsung General Chemicals の 57.6% | ||
4) | Samsung Total Petrochemicals の持分(50%) | ||
韓国では石化の民営化後、各財閥が競争でワンセット主義で石化コンプレックスをつくった。 それまで石化事業を行っていなかったSamsung グループとHyundai グループも、既に供給過剰であったにもかかわらず、業界や政府の反対を押し切って参入した。
両社は、中国向け輸出が主であると主張し、そのために黄海側の大山にコンプレックスを建設した。 1988年5月にSamsung General Chemicals が設立され、1991年9月に大山コンプレックスが完成した。
1998年2月に財閥の構造改革に関する5大課題が発表され、基幹産業における過剰設備・重複投資を解消し、効率化を図る観点から、5大財閥における事業の再編成(通称ビッグディール)が計画された。 しかし、これは破談となり、最終的に2003年1月にHyundaiは分割されて、湖南石化とLGに売却された。 この結果、これまではSamsung GeneralはSamsung Total の株主ということであったが、2014年4月に子会社でPTAを扱っている Samsung Petrochemical を吸収合併した。
このほかに、蔚山にBPとのJVのSamsung BP(1989年設立)があり、酢酸とVAMを生産している。 また、Samsung Petrochemical とSGL Group は2013年6月に炭素繊維製品の販売JV(50/50)を設立している。 今回明記はされていないが、Samsung General Chemicals の 57.6%
の譲渡により、これらのJVもHanwhaの支配下に移ることとなる。
Samsung の石化の現状は下記の通り。
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買収するHanwha Group の基は韓国火薬で、1992年にHanwha (韓火)に改称した。(韓化と記する場合もある)
Hanwha Chemical、ハンファ生命保険(旧・大韓生命)、ハンファ損害保険、ハンファ証券、ハンファ建設、ハンファギャラリアなどを傘下に持つ。
Hanwha Chemical は麗川に大林産業との50/50のエチレンコンプレックス 麗川NCCを持ち、そこでPEとPVCを生産するほか、蔚山のSKのコンプレックスでもPEとPVCを生産している。
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韓国火薬は1984年に、韓国政府とDow のJVで電解~VCMのKorea Pacific
Chemical 及び韓国ダウを買収し、韓洋化学とした。
1988年には、1972年に政府方針で5社のPVCメーカーが合併して設立した韓国プラスチックを吸収合併した。
同社は1972 に韓国で初めてポリエチレンを製造した。その後、PPにも進出した。
1994年に韓洋化学をHanwha Chemical と改称し、1999年に大林産業との50/50のJVの麗川NCCを設立してエチレン製造に進出、合わせて、大林産業にPPとHDPEを渡し、代わりにLDPEとLLDPEを受け取ってLDPE事業を強化した。
今回、更に石化事業を拡大することとなる。
付記
HanwhaはDow Chemicalが売りに出した塩素事業の買収を検討していた。
しかし同社のスポークスマンは12月1日、Samsungの石化事業買収で石化事業が拡大するため、最早Dowの事業を買収する必要はないと述べた。
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