日本、中国原産の輸入TDI にダンピングの仮決定

| コメント(0) | トラックバック(0)

 

経産省と財務省は12月4日、中国産TDI に係る不当廉売関税の課税に関し、不当廉売 と日本の産業に与える損害等の事実を推定する仮の決定を行ったと発表した。

2013年12月17日に三井化学から要請を受け、本年2月14日より、不当廉売関税の課税の可否に関する調査を実施 、利害関係者からの証拠の提出、意見の表明等の機会を設け、中国メーカー等に対する客観的な証拠の収集等を行った結果、今回の決定を行った。

付記 

12月19日、不当廉売関税を賦課する政令が閣議決定した。

中国産TDIに対して、69.4%のアンチダンピング関税を暫定的に課す。
実施期間は2014年12月25日から2015年4月24日までとする。

今後、利害関係者からの証拠の提出、意見の表明の機会を設けるとともに、引き続き調査を行い、最終判断を行う。

実施されれば、2008年の南アフリカなど4か国から輸入された乾電池材料の「二酸化マンガン」以来となる。

ーーー

中国からのTDI輸入は2011年は1,001トンだったが、2012年は13,163トンに急増した。
(2013年は10,546トンだが、2014年1-10月は3,121トンに減っている。)

日本のTDI及びMDI事業は、中国を中心とするアジアでの大規模な新増設による市況悪化のため収益が低迷しており、三井化学のウレタン部門の営業損益は2012年度が -26億円であったが、2013年度は -52億円と悪化している。

三井化学は2014年2月、ポリウレタン材料事業及びフェノール事業、高純度テレフタル酸(PTA)の再構築を発表、これに伴い、事業構造改善費用として206億円を特別損失に計上した。

汎用ウレタン原料については、国際競争力が劣位の鹿島TDI、大牟田MDIを2016年12月末に停止し、国際競争力を十分有する他のプラントで、最適生産体制による同事業での勝ち残りを図る。

2014/2/10 三井化学の事業構造改善計画

ーーー

皮肉なことに、中国商務部は11月20日、三井化学を含む日本・米国・韓国減産のTDIに対するダンピング課税を終了すると発表した。

中国は2002年5月に調査を開始し、2003年11月22日にダンピング課税を行った。
5年の課税期間が過ぎ、再調査を行って、2009年11月20日に課税延長を行った。

今回、更に5年が経過し、再々延長の要請がなかったため、課税を終了した。

日本メーカーのダンピング税率は下記の通り。(2006年1月に税率が変更された)

三井化学(当初は三井武田ケミカル)   4%→12.45%  
日本ポリウレタン   5%→60.02%  
その他  49%→60.02%  

米国メーカーはBASFとBayer、韓国メーカーはOCIケミカル(当初はDCケミカル)、韓国ファインケミカル、韓国BASFがダンピング課税の対象となっていた。

ーーー


現在日本がダンピング課税中の案件は電解二酸化マンガンのみ。

課税期間 2008年9月1日~2019年3月4日(2014年3月5日から5年延長)
原産地・ダンピング税率 スペイン 14.0%
中国 貴州紅星発展大龍錳業有限責任公司:34.3%、
         他社 46.5%
南ア 14.5%

他にオーストラリアがあったが、2013年8月に終了した。(延長なし)


過去のダンピング調査は以下の通り。
 
カットシート紙(インドネシア産)  2012年に調査を開始したが、2013年に調査終了、課税せず。
ポリエステル短繊維の一部(韓国、台湾) 2002年課税、2012年課税終了。
綿糸20番手等(パキスタン) 1995年課税、1999年課税終了。
フェロシリコンマンガン(中国) 1993年課税、1998年課税終了

 


参考 中国のダンピング課税については https://www.knak.jp/japan/china.htm#ichiran


    


トラックバック(0)

トラックバックURL: https://blog.knak.jp/knak-mt/mt-tb.cgi/2717

コメントする

月別 アーカイブ