伊藤忠商事は1月20日、タイのCharoen Pokhand Group (CP) 及び中国最大の政府系企業グループ「中信集団」(CITIC Group) の3社間で戦略的な業務・資本提携を行うと発表した。
伊藤忠は下記の通り、両社とそれぞれ提携しているが、今回、3社間で戦略的な業務・資本提携を行うもので、伊藤忠とCPが共同でCITICグループの中核企業「中国中信」(CITIC) に約20%出資する。出資金額は合計で約1兆2040億円で、伊藤忠の約6千億円の投資は日本企業の対中出資としては過去最大となる。
中信集団は、金融から不動産、資源開発まで手がける中国最大の政府系企業グループで、伊藤忠は今回の提携により、成長が見込める食料事業や活発化している商業施設の開発などの不動産事業を一段と強化したい考え。
中信集団としても、今回の提携を通じて海外ビジネスを加速させるねらいがあるものとみられる。
ーーー
報道では、日本の総合商社の出資額も、中国の国有企業への外国企業の出資額もいずれも過去最大という異例の巨額投資が実現するのには、習近平指導部の強い意向があるという。
日中関係の悪化を受けて、日本から中国への直接投資実行額は2年連続で減少しているが、習指導部としては、海外企業の対中投資を再び増やす呼び水として、また、国有企業改革の目玉として、今回の出資を後押ししており、伊藤忠に決断を迫っていたという。
伊藤忠は丹羽宇一郎前会長が中国大使を務めるなど中国政府と関係が深く、タイのCPグループも習政権と近いとされる。
ーーー
伊藤忠は1972年に総合商社では初めて、中国から友好商社に指定された。
2011年4月 に中信集団との間で幅広い事業分野での提携検討を目的とする「包括戦略提携協議書」を締結するとともに、第1号案件として、CITICグループ傘下の金融事業会社であるCITIC International Assets Managementに25% 出資した。
協業可能性として、中国国内や金融事業分野に限定せず、全ての地域及び幅広い分野において実施するとし、下記を想定した。
- 中国における中間所得者層拡大を見据えたリーテイル金融分野における共同取り組み
- 日中間クロスボーダーM&A及び日本企業の中国進出サポートに関するアドバイザリー業務
- 住宅、オフィスビル、商業施設、物流施設等の不動産共同開発・運営・ファンド事業
- 新車販売事業等自動車関連事業における共同取り組み
- 海外における資源開発及びニューエナジー分野における共同取り組み
- 中国における消費市場拡大を見据えた生活消費関連分野での共同取り組み
伊藤忠はまた、2014年7月にタイのCharoen Pokphnad Group (CP)と資本・業務提携契約を締結している。
CPは1979年、中国改革開放直後の中国に最初に進出した外資企業で、農業と食料品を中心に、情報通信、流通、金融、医薬品等の事業を手掛け、アジア地域で更なる事業展開を推進中である。
今回の3社間の戦略的な業務・資本提携の概要は下記の通り。
(業務提携)
強み 伊藤忠 総合商社トップクラスの非資源分野収益力
幅広い分野における総合力
グローバルな調達・販売網と事業展開CP 非資源分野(農業・食品、小売、通信他
中国・アジアでの強固な地場事業基盤
中国・アジアにおける華僑ネットワークCITIC 中国における総合金融サービス
中国政府との強固な関係
中国におけるブランド力シナジー創出可能分野
(資本提携)
伊藤忠とCPの50/50JVのChia Tai Bright Investment (CTB)がCITICグループの中核会社の中国中信(CITIC Limited) に出資する。
2段階で総額 約803億HK$(約1兆2040億円)で、20.61%を取得する。株主関係
現状 2015/4 2015/10 CITIC Group 77.90% 67.90% 10%分購入
約5150億円
既存1%は売却59.89% CTB 1.00% 10.00% 20.61% 優先株引き受け・転換
約6890億円一般株主 21.10% 22.10% 19.50% 合計 100% 100% 100% 優先株で13.36%増
出資するCITIC Limited の事業は下記の通り。
金融事業 中国第1位の信託会社、第1位の証券会社、第7位の銀行 不動産・インフラ 中国29都市のオペレーション 建設・プロジェクト 中国第6位の建設業 資源・エネルギー アジア、豪州、南米での石油、石炭、鉄鉱石事業 製造業 世界第1位のアルミホイール製造
中国第1位の建材製造機器
中国第1位の特殊鋼製造その他 IT、通信、医療、運送、出版、旅行、スポーツ等
2013年度の連結純利益は約7300億円。
伊藤忠にとっても巨額投資であるが、今後、どのような形で提携が効果を生み、投資を回収できるのか、注目される。
コメントする