河野太郎衆議院議員のメールマガジン「ごまめの歯ぎしり」(2014/12/29) は「ありえない数字」というタイトルで、経産省と電力会社が出した「再生可能エネルギーの受け入れ量」について書いている。
電力会社による事実上の再生可能エネルギーの買取拒否を受けて、経産省が対応策なるものを出してきた。
今回の受け入れ量は、「ベースロード」と称する原発や地熱をフルに利用し、その残りに「ベースロードではない」再生可能エネルギーを受け入れ、差分を火力発電で調整するという前提で、再生可能エネルギーを受け入れることができる量だという。
そのベースロードである原発は、老朽原発を含め全ての原発を最大限に稼働させるという前提だ。
しかも2021年度までは完成しない大間原発や再稼働は難しい日本原電の東海第二まで計算に算入されている。東北電力は、東京電力の柏崎刈羽の電力まで算入している。
それでいて、電力会社間の連系線の利用は無視されている。
太陽光や風力の発電量は、過去の実績値でも何でもない想定出力を使い、過大に想定されている。
自民党のエネルギー資源調査会やその傘下の再生可能エネルギー小委員会の幹部会でもこのままの受け入れはできないという結論に達している。
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九州電力などが再生可能エネルギーの受け入れ手続きを中断している問題で、経済産業省と7社は12月16日、専門部会で太陽光発電の受け入れ可能量の試算を公表した。
それによると、原子力、地熱、水力(下図のB)を「ベースロード」とし、更に火力の最低出力(C)を超える分を風力、太陽光発電(D)の受入可能量としている。
需要(A)を超える余剰能力を揚水発電の揚水用(E)に使用し、更に余れば、太陽光の出力抑制(F) を行う。
臨時の需要増は揚水発電(E)で賄う。
ベースロードの原子力については下記の通り、保有する原発がすべて震災前の30年間の平均稼働率で発電するという非現実的な前提である。
東北電は東日本大震災で被災した女川原発や日本原子力発電東海第二原発の稼働を見込む。建設中の大間も含むほか、何故か柏崎刈羽や福島第二まで入っている。
北陸電も、活断層問題に揺れる志賀原発や日本原電敦賀原発の再稼働を想定している。まさに「ありえない数字」である。
この結果、再生エネの受け入れ可能量は少なくなり、中国電力、北陸電力を除く 5社で、政府が認定した事業計画が受け入れ上限を上回っている。
太陽光発電の接続可能量(万kW)
北海道 東北 北陸 中国 四国 九州 沖縄 風力接続可能量 56 200 45 100 60 100 2.5 太陽光接続可能量 117 552 70 558 219 817 35.6 合計 173 752 115 658 279 917 38.1
以上 http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/shoene_shinene/shin_ene/keitou_wg/pdf/003_09_00.pdf
東京電力や関西電力は一部地域を除き、再生可能エネルギー発電設備の接続申込みへの回答保留は行っておらず、まだ余力があるが、電力会社間の連系線の利用は無視されている。
北陸電力は自社分としての70万kWに加え、関電や中部電力に送電できる40万kWを加え、合計110万KWを受入可能量としている。
現時点での太陽光は接続契約済み、接続検討分を含め、97万kWとなっている。九州で発電し、関電や中部電力に送電することを考えるべきではないか。
北海道、東北、四国、九州、沖縄電力の太陽光受入可能量は合計 1,740.6万kWだが、国が認定した再生エネの発電能力は計約3,600万kWで、受入可能量の2倍もある。
河野代議士によると、「ヨーロッパや北米では自然エネルギーによる優先的な給電が行われる。そして、もちろん、再生可能エネルギーの導入が進んでいるので供給が需要を追い越せば、出力抑制はおこなわれる。しかし、365日24時間のなかで出力抑制が行われた時間の割合は、スペインで 0.46%、イタリア 1.24%、イギリス 1.6%にすぎない。」
それに対し日本では、国が固定価格買取制度を設定して推進している再生可能エネルギーを、電力会社と経産省が妨害している形である。
河野代議士は、「年明けに、きっちりと自民党案が議論されることになる」としているが、どうなるか注目したい。対策として、資源エネルギー庁は12月18日、「再生可能エネルギーの最大限導入に向けた固定価格買取制度の運用見直し等について」を発表した。
http://www.meti.go.jp/press/2014/12/20141218001/20141218001-B.pdf
発電側で出力を落とす「出力制御」の制度を見直す。
これまで500kW以上の大規模ソーラーだけを対象にしていたのを変え、 全ての太陽光発電に出力抑制を求められるようにする。
また、出力抑制は「年間30日まで」としていた枠を外し、無制限で求められるようにし、この条件をのんだ事業者だけを受け入れる。
需要を超えているこの時間帯に出力を抑えるものだが、今後は、電力会社側から遠隔操作で、時間毎に調整できるシステムを開発する。
今後の導入拡大策としては下記を挙げている。
1) 蓄電池の活用
再生可能エネルギー発電側の導入支援、電力会社の大規模蓄電池実証事業の支援2) 更なる系統の活用・増強
3) ローカルな上位系統の制約がある場合の増強費用負担方法
固定価格買取制度の運用見直しも行う。
NHKの時論公論「曲がり角に来た再エネ買い取り制度」(2014年12月24日 (水) 午前0:00~)が分かり易い。
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