2014年10月20日に、Joko Widodo大統領が誕生した。
大統領は就任後、しばしば公の場で「過去5年の燃料補助金は700兆ルピアを超えたが、保健支出は220兆ルピア、インフラ支出は574兆ルピアにすぎない」と述べ、燃料補助金を削減し、港湾や道路、発電など社会インフラ整備や、教育・保健水準の向上へ予算を重点配分すると述べた。
インドネシア政府は11月17日、石油製品の販売価格を抑えるための補助金を削減し、ガソリン価格を3割引き上げると発表した。インドネシアは初代大統領スカルノの時代から燃料補助金政策を採っている。
2010年に82兆ルピアだった燃料補助金の支出は、2015年予算では3倍以上の276兆ルピアに膨張した。
値上げにより100兆ルピア(80億ドル)を確保し、インフラ等の投資に充てる。
大統領は「資金を生産的なセクターに振り向け、より国民の役に立つようにする」と強調した。
2013/6以前 2013/6以降 2014/11/8~ レギュラーガソリン 4,500ルピア 6,500ルピア
(52セント)
8,500ルピア
(68セント)軽油 4,500ルピア 5,500ルピア 7,500ルピア 1,000 ルピアは$0.08で、値上げ後でも 68セント/リッターで極めて安い。
前回のユドヨノ政権下の燃料値上げ直前の2013年5月に5.47%だったインフレ率は、2013年8月に8.79%まで上昇した。
2014年10月は4.83%と落ち着いているが、燃料値上げにより年内にインフレ率が7.3%に高まる見通しで、ルピア安による輸入物価の上昇も企業や家計の重荷になっており、経済成長率が5%台と5年ぶりの水準に減速するなか、補助金の削減に反対が強まるのは必至だった。
しかし、OPECが11月27日の総会で原油の減産見送りを決定し、原油価格は下がり続けた。
インドネシア政府は11月以降の世界な原油価格の下落からガソリンの補助金の必要性がなくなったと判断、2015年1月1日、石油燃料向け補助金の新たな政策を導入した。
新補助金 | 2014/12価格 | 2015/1 価格 | ||
レギュラーガソリン | 付与しない | 8,500ルピア | 7,600ルピア | 「価格は毎月見直される」 |
軽油 | 1,000ルピアに固定 | 7,500ルピア | 7,250ルピア |
バンバン財務相は、今回の補助金燃料の新政策で、今年の燃料補助金の支出を予算の276兆ルピアから60兆ルピアに減らすことができるとの試算を明らかにした。
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インドネシアの燃料補助金政策は初代大統領スカルノの時代に始まったもので、国内の燃料価格を市場のそれよりも安く提供するという一種の福祉政策である。
燃料のほかに電気料金その他の補助金もある。
最近になって、市場価格の高騰が補助金政策のための予算を容赦なく吊り上げ、政策自体を維持できなくなった。
みずほ総合研究所の「インドネシアの燃料補助金の弊害」に詳しく書かれている。
ガソリン価格が抑えられた結果、自動車販売台数が急増、更に燃料消費が増えるとともに、公害が増えるという逆効果が出ている。
電気料金補助金等を加えた補助金合計は政府予算の30%弱にまでなり、社会インフラ整備などが遅れる結果となっている。
インドネシアは産油国だがエネルギーの内需が拡大し、約10年前に石油の純輸入国に転落している。 | |
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補助金は麻薬のようなものであり、一度始めると簡単には止められない。
燃料補助金→自動車増→燃料使用量増→補助金増というような逆効果が出てくる。
結果として政府の財政を悪化させ、経済成長に必要な社会インフラ整備や、教育・保健水準の向上のための支出を抑えることとなった。
Joko Widodo大統領はこの連鎖を断つべく、11月に補助金削減に踏み切った。
本来なら、国民の不満が爆発し、デモが多発して、経済を麻痺させる恐れもあった。
原油安がこれを防いだ。
これを機にガソリンの補助金を廃止し、軽油補助金を1000ルピアに固定したのも、今後、原油価格が再び上昇に転じた際にはプラスに効いてくることとなる。
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