武田薬品は1月13日、同社の痛風治療剤Colcrys®に関連する訴訟を継続し、争っていくと発表した。
Takeda Pharmaceutical USA は米国で痛風治療剤としてColcrys®(一般名:colchicine)を販売している。
痛風は、全米で800万人以上が罹患しており、その数はさらに増加している。
Colcrysは、米国において初めてFDAに処方薬として承認された単一成分の経口 colchicine製剤で、米国で2009年に発売され、現在、武田薬品の痛風治療ポートフォリオの1つになっている。2028年もしくは2029年まで複数の特許により保護されている。Colcrys®は成人の痛風発作の予防および急性治療、成人および4歳以上の小児における家族性地中海熱の治療の効能を有する。
Colchicineはユリ科のイヌサフランの種子や球根に含まれるアルカロイド。
Colchicineは1820年にフランスの化学者P.S. Pelletier とJ.B.Caventouによって初めて分離された。
2014年9月26日、FDAはヨルダンに本拠を置く Hikma Pharmaceuticals と米国子会社West-Ward Pharmaceutical Corp. が痛風炎予防薬として新薬申請したMitigare (colchicine) Capsules, 0.6 mg を承認した。
武田薬品は2014年10月6日、この承認手続きに行政手続法の違反があったとして、FDAを訴えた。
行政手続法では、FDAのような政府機関が不適切な手続をした場合等に異議を申し立てることができるとされている。
これは別に、同社は10月3日、Hikma社およびWest-Ward社に対し、両社のcolchicine製剤が武田の痛風治療剤Colcrys®に関する複数の特許を侵害しているとしてデラウェア州連邦裁判所に訴訟を提起した。
裁判所は2015年1月9日、両訴訟で Hikma社のcolchicine製剤の発売を認める旨の決定を下した。
(判事の判断理由は公開されていないので、詳細不明)
対FDA
米国コロンビア特別区連邦地方裁判所は2015年1月9日、FDAのHikma社製品承認に対する武田の申立を却下した。
特許違反訴訟
デラウェア州連邦裁判所は11月4日、武田によるHikma社およびWest-Ward社のcolchicine製剤販売に対する仮差止の申立を却下した。
武田は直ちに控訴した。合衆国連邦巡回区控訴裁判所は2015年1月9日、デラウェア地区連邦地方裁判所がすでに下していた仮差止申立却下の判断を支持した。
Hikma ではMitigareブランドでの
colchicine 0.6mg capsules の販売を準備中で、authorized generic(AG)も準備している。
調査会社によると、最近1年間の武田の米国での売上高は688 百万ドルで、Hikmaは少なくとも米国市場の半分を得ると見ている。
武田では、両訴訟を継続し、争っていくとし、「今後の裁判において勝訴するものと確信しています」と述べた。
別途、武田薬品は2015年1月13日、米国の Prasco Laboratoriesに対し、Colcrys®錠のauthorized
generic(AG)の米国における販売を委託する契約を締結したと発表した。
Prascoは、AGビジネスにおける業界リーダーであり、2004年以来65品目以上のAG製品を発売し、米国において最も多くのAG製品に関するパートナー会社を有する企業。
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本件は一般の後発薬を巡る争いと若干事情が異なっている。
Colchicine そのものは昔からある薬で、FDAの承認なしに何十年も販売されていた。
イヌサフランがリュウマチなどの治療に効くということが、紀元前1500年頃のエジプトの医学書Ebers Papyrusに書かれている。
ヒポクラテスは痛風治療薬としてイヌサフランからとれるコルチカム(コルヒチン)を記載していた。
1世紀に書かれたシチリア出身のローマ帝国の医者Pedanius DioscoridesのDe Materia Medica(薬物誌)にも痛風に効くと記載されている。
Benjamin Franklinも全権公使としてフランス滞在中にこのイヌサフラン療法でよくなり、米国へイヌサフランを持ち帰ったとされる。
Colchicineは1820年にフランスの化学者P.S. Pelletier とJ.B.Caventouによって初めて分離された。Colchicine 単剤はFDA による承認はなかったが、尿中の尿酸排泄を促進する薬物を含有する合剤製品は 1939 年に FDA によって承認された。
FDAは2009年にMutual Pharmaceutical Company, Inc.による痛風予防、痛風炎治療、家族性地中海熱(炎症性の遺伝性疾患)治療のColcrys (colchicine) Tablets, 0.6 mg の新薬申請 (NDA) を承認した。
URL Pharma はジェネリック医薬品分野でMutual Pharmaceutical Companyと提携しており、この権利を引き継いだ。
2012年4月にTakeda America がURL Pharma 買収で合意し、その後、URLをTakeda Pharmaceuticals USAに統合した。
このため、承認なしで販売していたcolchicineが問題となり、約1年後にFDAは未承認の colchicine 単一剤を販売しないよう命じた。
各社は後発薬申請(ANDA:Abbreviated New Drug
Application) を検討した。
これに対し、Mutual Pharmaceutical とこれを買収した武田は各社を特許侵害で訴え、後発薬申請を防いできた。
Mutual Pharmaceuticalは2012年に Par Pharmaceutical Companies. Inc.を訴えた。Parは一旦申請を取り止めたが、武田に対し再び申請する旨通知した。
このため、武田は2013年9月に再度Par Pharmaceutical を特許侵害で訴えた。
続いて2013年10月に後発薬申請を計画しているAmneal Pharmaceuticals LLC を特許侵害で訴えた。
2014年2月には、武田はActavis Inc. の子会社のWatson Laboratories を14件の特許侵害で訴えた。
(Actavisは、アイルランドのActavis Group と米国のWatson Pharmaceuticals が統合してできた世界第3位のジェネリック医薬品メーカー)
しかし、2014年9月26日 にFDAは Hikma Pharmaceuticals と米国子会社West-Ward Pharmaceutical Corp. の申請を承認した。
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