スイス国立銀行(中央銀行)は1月15日、対ユーロでのスイス・フランの上昇を抑えるため導入していた無制限介入を終了し、1ユーロ=1.20スイスフランの上限を撤廃した 。
これにより、急激なスイスフラン高が進み、ユーロ/スイスフランは短時間のうちに大暴落した。
(毎日新聞 2015/1/17)
2011年9月以降、スイス国立銀行はフランのレートが上限を超えると外国為替市場で無制限にスイスフランを売り、ユーロを買ってフラン高を防いできた。
スイスは永世中立国で地域紛争の影響を受けにくく、国民1人あたりの金保有高も世界一であることから、スイスフランは「有事の際の避難通貨」とされる。
当時は欧州危機で、ユーロを売ってフランを買う動きが高まっており、輸出企業も多いスイス経済にとって、フラン高は大きな脅威であり、国立銀行はたびたび「為替レートの上限値は、金融政策の柱」と繰り返してきた。
しかし、欧州中央銀行(ECB)理事会の開催を1週間後に控え、量的緩和の可能性を考え、異例の政策の継続を断念したとみられる。
量的緩和が行われば大量のユーロが出回ってフラン買いの圧力が高まり、ユーロを買い続ける為替介入で抑えきれなくなる恐れがある。
膨大なユーロを抱えてから上限を撤廃すれば、ユーロ急落でスイス中銀が巨額の含み損を抱えかねないリスクがあった。
この決定は大きな衝撃を生んだ。
通貨高による輸出下押しへの懸念からスイス株は急落した。
国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は米CNBCの番組で「事前に私に連絡がなかったのは驚きだ」と苦言を呈した。
自国通貨より金利が低いスイスフラン建てで住宅ローンを組むことが珍しくない東欧にも及んだ。ポーランドは住宅ローンの約4割がスイスフラン建てという。
英国の外国為替証拠金取引業者Alpari は、スイス・フラン相場が急激に変動した影響を受けて、1月16日付で破綻したと発表した。
日本の金融庁はAlpari の破綻を受け、日本法人のアルパリジャパンに対して、顧客から預かった資産が流出しないように求める命令を出した。
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