エーザイは1月27日、オランダを拠点とする非営利団体「医薬品アクセス財団」が実施する2014年の医薬品アクセス貢献度(Access to Medicine Index)調査で、調査対象となったグローバル製薬企業20社のうち11位となり、前回の15位から4位順位が上がったと発表した。
日本企業では他に、アステラス製薬が18位、第一三共が19位、武田薬品が20位に入っている。
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貧困や医療システムの不備などから、必要な医薬品が必要とされる患者のもとに届かないという問題を医薬品アクセス問題と言う。
アフリカ等途上国を中心とした感染症(特にHIV/AIDS、マラリア及び結核)の蔓延を背景に、特許制度により医薬品が高価になったり、コピー薬の生産・使用・輸入等が制限される結果、医薬品へのアクセスを阻害しているとの指摘もなされている。
世界中には、1日1ドル以下で生活する最貧困層が14億人以上、さらに1日2ドル以下で生活する人々が13億人いると推定されている。
これらの約27億人の人々の多くが、有効的な治療法があるにも関わらず、必要な医療を受けることができず、必要な医薬品を入手できない状況にあり、医薬品アクセス問題は、各国の政府、世界保健機構(WHO)などの国際機関、非政府組織(NGO)のみならず、製薬企業にとっても各方面と連携して解決すべき国際的な課題となっている。
ATMインデックス調査は2年毎に実施され、グローバル製薬企業20社の主に開発途上国における医薬品アクセスに対する取り組みに焦点をあて、企業の格付けを行うもの。
オランダの実業家 Wim Leereveld の提案で2004年に始まった。Bill & Melinda Gates Foundation
と英国及びオランダ政府が資金を提供している。
具体的には、①医薬品アクセスを推進するマネジメント体制、②パブリックポリシー、③開発途上国で課題となっている疾患に対する新薬開発、④価格政策や供給体制、⑤知的財産に関するポリシーならびにその実践、⑥開発途上国における医薬品開発・製造技術確立への支援、⑦医薬品の無償提供や慈善活動の7つの観点を、それぞれコミットメント、透明性、実績、イノベーションの4つの側面から総合的に評価してい
る。
2014年の各社の評価は下記の通り。
順位 | 医薬会社 | ① 体制 |
② Policy |
③ R&D |
④ 供給体制 |
⑤ 知財 |
⑥ 支援 |
⑦ 寄付 |
総合 | |
2014 | 2012 | |||||||||
1 | 1 | GlaxoSmithKline | 4.9 | 2.1 | 3.7 | 3.0 | 2.8 | 3.5 | 3.4 | 3.3 |
2 | 6 | Novo Nordisk | 4.7 | 2.7 | 2.4 | 3.3 | 1.5 | 3.9 | 3.6 | 3.0 |
3 | 2 | Johnson & Johnson | 4.4 | 1.1 | 3.3 | 3.2 | 1.3 | 3.3 | 3.1 | 2.8 |
4 | 7 | Novartis | 4.8 | 1.4 | 3.0 | 2.6 | 1.9 | 3.8 | 3.3 | 2.9 |
5 | 5 | Gilead Science | 2.9 | 2.8 | 2.1 | 3.8 | 2.8 | 2.5 | 2.4 | 2.9 |
6 | 8 | Merck KGaA | 3.8 | 1.3 | 3.0 | 2.9 | 1.9 | 3.0 | 3.4 | 2.8 |
7 | 4 | Merck & Co. | 4.3 | 1.3 | 2.5 | 3.1 | 0.9 | 3.3 | 3.5 | 2.7 |
8 | 3 | Sanofi | 3.3 | 1.0 | 2.5 | 3.0 | 1.7 | 3.8 | 2.6 | 2.6 |
9 | ー | AbbVie | 1.9 | 2.4 | 3.0 | 3.4 | 1.2 | 2.8 | 2.3 | 2.6 |
10 | 9 | Bayer | 2.7 | 1.7 | 2.1 | 3.2 | 1.8 | 3.0 | 2.8 | 2.5 |
11 | 15 | エーザイ | 3.3 | 1.8 | 2.4 | 2.9 | 1.9 | 2.0 | 2.7 | 2.5 |
12 | 10 | Roche | 2.7 | 1.4 | 1.8 | 2.9 | 1.8 | 2.6 | 2.8 | 2.3 |
13 | 12 | Bristol-Myers Squibb | 1.6 | 2.4 | 2.2 | 2.6 | 2.6 | 1.8 | 1.7 | 2.2 |
14 | 17 | Boehringer Ingelheim | 1.6 | 1.4 | 1.9 | 2.5 | 1.5 | 3.5 | 2.0 | 2.1 |
15 | 16 | AstraZeneca | 2.1 | 1.7 | 2.5 | 1.3 | 1.2 | 3.1 | 2.5 | 1.9 |
16 | 11 | Pfizer | 2.1 | 1.4 | 2.0 | 1.8 | 1.6 | 2.9 | 2.1 | 1.9 |
17 | 14 | Eli Lilly | 2.6 | 0.8 | 2.0 | 1.5 | 1.4 | 2.0 | 2.0 | 1.7 |
18 | 20 | アステラス製薬 | 1.0 | 1.6 | 1.6 | 2.3 | 0.8 | 1.5 | 1.4 | 1.6 |
19 | 19 | 第一三共 | 0.7 | 0.4 | 2.2 | 1.7 | 1.7 | 1.2 | 1.3 | 1.5 |
20 | 18 | 武田薬品 | 1.0 | 1.3 | 2.6 | 1.1 | 0.6 | 2.0 | 1.7 | 1.5 |
1位のGlaxoSmithKlineは2010年も1位。
2012年に13位だったAbbott Laboratories Inc.が落ち、選外だったAbbVieが新しく 9位に入った。
エーザイについては、下記が評価された。
リンパ系フィラリア症の制圧に向けて治療薬DEC錠のWHO(世界保健機関)への供給開始
グローバルプライシングポリシーの設定
インドにおける転移性乳がん治療薬ハラヴェンの所得別段階的価格設定での提供
顧みられない熱帯病などの感染症に対する新薬開発プロジェクトの推進
インデックスの対象疾患であるてんかん領域へのファイコンパの上市等
グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)設立に関わる活動
同社の医薬品アクセスへの取り組みは http://www.eisai.co.jp/company/atm/index.html
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