4月から年金のマクロ経済スライドが実施される。
年金の改定率は前年の全国消費者物価指数(2.7%)と過去3年間の賃金変動率(2.3%)の低い方を取ることとなっており、2015年度は本来なら2.3%のアップとなる。
但し、2000~2002年の過払い分の解消分(0.5%)とマクロ経済スライド分(0.9%)を差引し、年金は0.9%のアップにとどまることとなる。
1) 全国消費者物価指数 2.7%
総合指数 前年比 2.7%の上昇 生鮮食品を除く総合指数 前年比 2.6%の上昇 食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数 前年比 1.8%の上昇
2) 名目手取り賃金変動率 2.3%
物価変動率(2.7%) × 実質賃金変動率(▲0.2%) × 可処分所得割合変化率(▲0.2%)
(2014年) (2011~2013年度平均) (2012年度の変化率)
3) 過去の過払い分の解消 0.5% 本年で完了
2000~2002年の3年間は物価が下落したため、本来は年金を下がるべきところ、特例的に据え置いた。
その後の差異を含め、過払い分は2.5%分となる。これを下記により解消する。
2013年10月から 1%
2014年4月から 1%
2015年4月から 0.5%
4) マクロ経済スライド 0.9% 本年から(少子高齢化により、2004年の年金制度改正で導入、初適用)
公的年金被保険者数の変動率(▲0.6%) × 平均余命の伸び率(▲0.3% :固定)
(2011~2013年度の平均)
公的年金被保険者数の減(現役人口の減) → 保険料収入の減少(収入減)
平均余命の伸び → 年金給付費の増加(支出増)
この合計分が年金会計を悪化させることとなるため、この分だけ給付水準を調整する。
なお、2014年の財政検証では、2015年度のスライド調整率は▲1.1%と見込んでいたが、60歳以上の高齢者雇用が見込みよりも進んだことなどにより、厚生年金被保険者が増加したことで、スライド調整率は0.9%となった。
マクロ経済スライドは、下記の例のごとく、消費者物価(or 賃金上昇率)を下回らないこととなっている。
消費者物価 本来のスライド調整 実際のスライド調整 年金改定 2.3 0.9 0.9 1.4 0.8 0.9 0.8 0 -1.0 0.9 0 -1.0
マクロ経済スライドは物価スライド特例措置による物価下落率の累積分(1.7%)が解消された後に開始されることとされている。
制度発足時からデフレが続いたため、これまで発動されず、今年が初の適用となる。
付記
厚労省は2014年6月の年金財政の検証で、物価にかかわらずマクロ経済スライドを実施するとの案を出したが、自民党が反対していた。
厚労省は2015年2月24日、改革案を自民党に示し、了承を得た。
デフレ時はマクロ経済スライドを凍結する現在の仕組みを続けるが、調整不足分を繰り越し、物価が大きく上がれば、複数年の繰り越し分をまとめて実施する。
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