AbbVie は3月4日、同業のPharmacyclics Inc
を210億ドルで買収することで合意したと発表した。
買収は58%が現金、42%がAbbVieの普通株式で行われ、Pharmacyclicsの株主は現金、株式、その組み合わせの選択が出来る。
これにより、AbbVie はPharmacyclicsの血液癌治療薬
Imbruvica ®(一般名:ibrutinib)を手に入れる。
Pharmacyclicsはこれ以外に3つの候補薬を持つ。
AbbVieは世界ナンバー1のブロックバスターの関節リウマチ薬Humira
®に依存している
(2014年の総売上高の60%を占める) が、2016年の特許切れにより2017年頃から販売の減少が予想されており、今回の買収で癌分野へパイプラインを広げ、これに備える。
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AbbVie Inc.は米国の製薬会社で、2013年初めに、米Abbott Laboratoriesからスピンオフして誕生した。
同社はアイルランドの製薬大手Shire Pharmaceuticalsに買収提案をしていたが、Shireは2014年7月、買収で合意した。
AbbVieはShireの取締役会に現金と株式を組み合わせた買収案を3度提示したが、Shireの取締役会は安すぎるとして拒否した。
最終的に買収金額は従来の総額約270億ポンドから約310億ポンドに引き上げられた。
しかし、AbbVie は2014年10月15日、Shire
Pharmaceuticals 買収を撤回すると発表した。
米政府が9月22日に節税目的の本社移転の抑制を狙った新規則を発表したため、国外に会社を設立することを含む買収効果が不透明になったと判断した。
2014/10/20 買収・合併による節税目的の海外移転禁止の動き強まる
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Imbruvica®は慢性リンパ性白血病など3種の血液癌の治療薬として2013年にFDAに承認されたブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤 で、FDAが「画期的治療薬:Breakthrough Therapy」に指定している。現在、40カ国以上で承認されている。
ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)とよばれるタンパク質はシグナル伝達分子で、腫瘍化Bリンパ球の生存と転移において重要な役割を果たす複合体のシグナルを伝達する。
Ibrutinibは腫瘍化Bリンパ球に対し増殖および転移を指令するシグナルを阻害する。
Ibrutinib は、Johnson and JohnsonグループのJanssen Pharmaceutical の子会社 Cilag GmbH International とPharmacyclics Switzerland GmbHにより共同開発された。
Janssen Pharmaceutical の関連会社が欧州、中東、アフリカおよび米国以外のその他の地域で販売し、米国ではPharmacyclics とJanssen Pharmaceutical が共同販売している。
Imbruvica®はPharmacyclics の登録商標。
Pharmacyclicsについては、この関連で Johnson and Johnsonが買収寸前であると見られており、他にNovartis
も関心を示していた。
Ibrutinib
の権利の半分を持つJohnson
and Johnsonは、残り半分の権利を法外な価格で買うことを辞退したとされる。
2011年にその権利を獲得したときの価格は10億ドル未満で、AbbVie
の買値の210億ドルは余りにも高過ぎると考えた模様。
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製薬会社の買収が続いている。
Pfizer は2月5日、同業の米 Hospira, Inc.を170億ドルで買収する契約を締結したと発表した。
2015/2/11 Pfizer、米製薬会社 Hospira, Inc. を買収
カナダの製薬大手Valeant Pharmaceuticals International は2月22日、米同業Salix Pharmaceuticalsを借入金込みで145億ドルで買収することで合意したと発表した。
2015/2/28 Valeant Pharmaceuticals、米同業Salix Pharmaceuticalsを買収
今回の案件で年初来の約2ヶ月で米製薬会社によるM&Aの総額は542億ドルに達した。
これは1995年以降で買収総額が最も大きかった2014年のM&Aの4分の1以上である。
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