2015年4月号の中央公論の特集は「ピケティの罠~日本で米国流格差を論じる愚」で、ピケティの指摘は、本当にそのまま日本にも当てはまるのかとの疑問からスタートしたという。
同社のホームページの「編集長から」は以下のとおり述べている。
来日したピケティは、日本の所得上位10%の得た収入が国民所得に占めるシェアが40%近くまで上昇していることを指摘し、日本の格差拡大に警鐘を鳴らしました。
それでは、日本の所得上位10%って、どれくらいの年収なのでしょうか。ピケティのデータ収集を日本で唯一手伝った(一橋大教授)森口千晶さんが、(阪大教授)大竹文雄さんとの対談で明かしてくれました。
答えは「年収580万円以上」。「そんなに低いの?」と驚いた方も多いのではないでしょうか。
ちなみに、米国の上位 10%は「年収1335万円以上」(1ドル=119円換算)。
こうした実態をどうみるのか。猪木武徳、竹森俊平、原田泰らの各氏が様々な視点を示し、最後にピケティが「みなさんの疑問に答えましょう」で解説します。ビジネスマン必読です。
記事で、森口教授が、「日本では所得上位 5%~10%の層が増えている」と述べたのに対し、大竹教授が「800万~1000万円の層ですか」と質問。
それに対し、森口教授は、「もっと低い。所得上位10%は580万円以上、5%は750万円以上、1%は1270万円以上ですから (580万~750万円の層となる)」と答えている。
計算は税務統計によると思われる。
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しかし、どう考えても所得580万円で上位10%に入るとは思えない。
厚労省が「国民生活基礎調査の概況」を発表している。
平成24年分は2013年7月発表で、東日本大震災の影響で福島県を除外している。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa12/dl/12.pdf
それによると、所得金額別の所帯数の割合は下記の通り。(別グラフから筆者作成)
平均所得は5,482千円、中央値は4,320千円となっている。
所得1000万円未満が全体の88.4%、1100万円未満が91.3%となっており、上位10%以上は1000万円強以上の人である。
また1300万円未満が94.7%となっており、上位5%以上は1300万円超である。
所得2000万円以上が1.3%もある。(森口教授は、1%は1270万円以上とするが)
所得が600万円未満の人は、上位33.6%より下である。
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対比すると次のようになる。
森口教授 厚労省 上位1% 1270万円以上 2000万円超 上位5% 750万円以上 1300万円超 上位10% 580万円以上 1000万円超
実感からしても、森口教授の数値は低すぎると思われる。
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