日本の所得上位10%の実態

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一橋大 森口千晶教授によると、日本の所得上位10%は580万円以上、5%は750万円以上、1%は1270万円以上という。

2015/3/12  日本の所得上位10% 


この根拠が分かった。

元資料は、教授と Emmanuel Saez との共同論文の The evolution of income concentration in Japan, 1886-2002 である。

論文の後にTable 2 "Thresholds and Average Incomes for Top Income Groups in 2002" がある。

20歳以上を対象とし、所得は税務申告のグロスの所得で、所得税控除前だが、キャピタルゲインは除いている。
2002年のドルで表示されており、換算レートは125円としている。

税務所得の階層別の表をつくり、 Pareto interpolation を使って計算したとしている。
別統計から得た、2002年の20歳以上の人口 102,139千人、平均所得252万円を使用した。

下の表は森口教授の表をもとに、ブログ筆者が作り直したものである。

 

最低所得(1$=125円)

対象人数 平均所得(1$=125円) 合計所得(兆円) 累計の
シェア
グループ 累計
上位0.01% $648,543 8107万円 10千人 $1,174,672 14683万円 1.5 1.5 0.6%
0.01~0.1% $264,372 3305万円 92千人 $352,165 4402万円 4.0 5.5 2.1%
0.1~0.5% $137,412 1718万円 409千人 $175,391 2192万円 9.0 14.5 5.6%
0.5~1% $109,649 1371万円 511千人 $121,291 1516万円 7.7 22.2 8.6%
1~5% $  65,672 821万円 4,086千人 $80,346 1004万円 41.0 63.3 24.6%
5~10% $  50,748 634万円 5,107千人 $57,666 721万円 36.8 100.1 38.9%

上位10%合計

    10,214千人          

全体

    102,139千人 $20,152 252万円   257.4 100%


数字から推測すると、中央公論での金額は、1ドル=114円で計算しているが、これはおかしい。
(元々は円で計算したものを、125円でドル換算している)

1ドル=125円で計算すると、上位10%は635万円以上、5%は820万円以上、1%は1370万円以上となる。

さきの厚労省の資料は所帯で計算しているのに対し、この資料は20歳以上の全人口で計算している。

働いていない主婦など、所得の無い人を含めた102百万人を順に並べ、10.2百万人目の人の所得が634万円(580万円ではなく)であるということであり、 所得のある人の中での所得上位10%とは異なる。

 

付記

人数 x 平均所得で計算すると、総合計が257.4兆円、上位10%合計が100.1兆円で、比率は38.9%となり、ピケティの言うとおり、「日本の所得上位10%の得た収入が国民所得に占めるシェアが40%近くまで上昇している」。

ーーー

森口教授が2015/2/11付 日本経済新聞に「格差を考える 戦後日本、富の集中度低く」を書いている。

成人人口の上位0.1%の高額所得者を「超富裕層」と呼び、「上位0.1%シェア」の推移をみている。

ここで所得とは課税および公的移転前の市場所得を指す。キャピタルゲインは、実現時のみの一時的な所得で取得者の変動も激しいため通常は除くが、図にはそれを含めた系列も示すとしている。




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