英国、アジアインフラ投資銀行(AIIB)に参加

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英財務省は3月12日、中国が設立を主導する国際金融機関アジアインフラ投資銀行(Asian Infrastructure Investment Bank:AIIB)に参加する方針を発表した。G7からの参加は英国が初めて。

AIIBは中国が年内設立を目指しており、中国政府は3月6日、27か国が参加する見通しを明らかにしていた。楼継偉財政相は、「AIIBは中国が提唱した区域的で開放的かつ多国的な開発機構である。区域内で優先的に創始メンバーを募集するが、開放的でもあり、区域外の国家の加入も歓迎する」と述べた。

3月31日までに参加する国は創始国になるとしており、英国は創始国メンバーになる。

アメリカや日本は、世界銀行やアジア開発銀行など、既存の国際金融体制を揺るがしかねないとして、中国の動きに距離を置いている。

ホワイトハウスは、「英国独自の判断」としながらも、「いかなる国際金融機関も世銀の高い融資基準を備えるべきであり、AIIBがそれに合致するか懸念している」との声明を出し、米政府は引き続き距離を置く姿勢を示した。

麻生太郎財務相も、「誰がどうやって審査するのか分からず、いろんな問題がいっぱいある」と述べ、審査基準の不透明さや融資が焦げ付いた場合のリスクなどへの懸念を示した。

これに対し、訪日中の世界銀行のKim総裁は、「政治的な議論があることは認識しているが、新たな銀行の参入を歓迎する」と述べ、設立を評価する考えを示した。
そのうえで、「新興国や低所得国には、電力を使えない人や必要な衛生サービスを受けることができない人が多くいる」と述べ、新興国などでのインフラ需要は膨大で、開発支援を行う組織が増えることは望ましいという認識を示した。

訪日中のフランスの外相は3月14日、「どういう形で参加できるか検討中」と話し、加盟を検討していることを明らかにした。
「アジアのインフラ整備に金融機関が動くことには反対しない。現存のアジア開発銀行に影響はない」としつつ、「ただし、その仕組みは国際ルールにのっとったものでなくてはならない」と指摘した。

豪州の財務相も、参加するかどうかを検討すると明らかにした。但し、豪州政府内では、財務相らと、米国に配慮し参加に慎重なアボット首相らの間で意見が割れているとされる。

付記

ドイツのショイブレ財務相は3月17日、ドイツとフランス、イタリアの3カ国がAIIBに創設メンバーとして参加する意向であることを明らかにした。

ショイブレ財務相は中国の馬凱・副首相との共同声明で、「われわれは長らく国際金融機関に関わってきた経験を生かし、新たな銀行が国際的に高く評価されるよう、優れた基準を打ち立て設立に貢献することを望む」と述べた。

その後、下記の参加が続く。
3月19日 ルクセンブルグ、3月20日 スイス。

合計33カ国となる。
内訳は、アジアが中国とASEAN全10カ国+7カ国 の合計18カ国、中央アジアが3カ国、中東が5カ国、欧州が6カ国及びニュージーランド。

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中国を中心としたアジアインフラ投資銀行(AIIB)の創設準備の了解覚書は2014年10月24日に調印された。

アジア各国のインフラ整備を支援するAIIB設立構想は2013年10月、習主席が東南アジアを歴訪した際に表明した。日本主導のアジア開発銀行(ADB)に対抗するためとみられた。

当初は、ASEAN 10カ国のほか、韓国などの計16カ国が参加するとされた。中国との国境紛争を抱えるインドなどは交渉に加わっていなかった。

最終的に了解覚書に署名したのは、中国、ASEAN 10カ国と、インド、バングラデシュ、モンゴル、パキスタン、スリランカ、ネパール 、カザフスタン、ウズベキスタンと、アラブ圏のクウェート、オマーン、カタールの計22カ国となった。韓国は現時点では入らず、逆にインドが参加を決めた。

中国は韓国に対し、参加を要請、韓国政府は2015年前半には参加するかどうかについて決定する 。

米国はアジアインフラ投資銀行は国際金融秩序に適合しないと批判、参加を検討する韓国に慎重に検討するよう呼び掛けているとされる。

当初中国の出資比率50%に不満を表したインドは、加盟国間の対話で支配構造を調整することができるという中国の意思を確認し、参加を決めた。

豪財務相は、「AIIB参加を前向きに検討中で、創設準備の了解覚書に署名するだろう」としていたが、署名していない。

その後、2014年中にモルディブが参加、2015年に入り、ヨルダン、サウジアラビア、タジキスタン、更にニュージーランドが参加、合計27カ国となっている。

法定資本金は1000億ドルだが、 当初の資本金は500億ドル規模で、ADB (1650億ドル)の1/3となる。

2014/11/13 中国のシルクロード経済圏構想 

 

現在参加を決めている27カ国は下記の通り。英国の参加で28カ国となる。
内訳は、
アジアが中国とASEAN全10カ国+7カ国、中央アジアが3カ国、中東が5カ国に、ニュージーランドと英国。

 

これに、フランス、韓国、豪州が加わるとすると、日本も参加を考えた方がよいのではなかろうか。

 



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