公取委、新潟のタクシー事業者の独禁法違反事件で審判請求を棄却

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公取委は2月27日、新潟のタクシー事業者の独禁法違反事件で審判請求を棄却する旨の審決を行った。

本件は、新潟市等に所在するタクシー事業者26社が2010年3月に北陸信越運輸局から運賃値上げの認可を受けたが、これに関し、公取委が2011年12月、タクシー事業者が共同して運賃を決定したとして、25社に対し排除措置命令及び総額2億3175万円の課徴金命令を出したもの。

新自動認可運賃で上限は据置き、下限は引き上げられたが、これについて、中小型については新自動認可運賃の下限、大型・特定大型については上限とすると決めたとしている。

課徴金は最高が3479万円、次が1423万円、他9社が1000万円以上となっている。

これに対し16社が審判請求を行い、2012年4月に審判が開始されたが、2014年10月に審判請求を棄却する旨の審決案が出された。

これを受け、新潟県では2014年12月2日、業界の置かれている窮状を踏まえ、課徴金納付により、タクシー事業者の廃業やそれに伴う従業員の失業を始め、労働条件の悪化が懸念され、地域社会全体にも大きな影響を及ぼす恐れがあることから、公正取引委員会に対し、要望書を手交した。

本ブログは下記コメントを書いた。

タクシー業界の苦境は小泉政権下の2002年に施行された「改正道路運送法」でタクシー事業への参入が原則自由化され、タクシー会社が乱立したことにある。

本件についてカルテルの事実関係は分からないが、こういう状況が背景にあり、これ以上の混乱を生まないための苦肉の策ではなかろうか。

特に今回の場合、一般市民に影響を与える中小型については新自動認可運賃の下限とすると決めたとされる。
この場合、最低の値上げで済むこととなり、一般市民には有利な結果となる。

合意により、「取引分野における競争を実質的に制限していた」としても、「公共の利益に反して」はいない。
料金を下限にすることによる不当利益はなく、課徴金をとることは不当利益を取り戻すという趣旨に反する。

法律上、免除の規定がないから出来ないというなら、上限に設定して「公共の利益に反して」いると思われる大型、特定大型の売上高についてのみ、課徴金を求めるということも可能である。

欧州委員会の言うとおり、制裁金の目的は経済的苦境にある企業を倒産に追い込むことではない」。


今回の棄却審決で、26社の共同行為に正当化理由があるかに関する公取委の主張は下記の通り。

認定した新潟運輸支局等の担当官の発言からは、新潟運輸支局等がタクシー事業者が新自動認可運賃に移行することが望ましいとの考えを有していたことが認められ、担当官が、新自動認可運賃へ移行することを促す方向で何らかの働きかけをしたことがうかがわれるが、一律に新自動認可運賃への移行を強制するようなものであったとは認めることができない。

26社が新自動認可運賃へ移行するか否かについて意思決定の自由を失っていたとは認められず、また、新潟運輸支局等が行政指導をした事実も認めることはできない。

26社は、新自動認可運賃への移行を合意したばかりでなく、その意思で新自動認可運賃の枠内の特定の運賃区分に移行すること及び小型車について初乗距離短縮運賃を設定しないことまで合意したものである。

「法的解釈」はその通りである。「自動認可運賃」は地域ごとに設ける上限と下限の範囲内に収まれば、申請がすみやかに認められるものであり、強制するものではない。当局は絶対に「行政指導」であるとは言わない。

但し、下限より安い運賃を設定する場合、従業員の勤務や車両の運行状況はじめ、コスト構造に無理がないか厳しい査定が課せられるため、京都のMKタクシーのように強い意思でこれに反する行動を取る企業でない限り、これに従うのが普通であろう。経営の苦しいなか、 そんな企業はなく、あったとしても査定に通る企業があるとは思えない。

このため、「行政指導」とは絶対に言わないが、一般のタクシー会社にとっては実質的には従わざるを得ない行政指導である。

そうであれば、どちらにせよ「自動認可運賃」で値上げすることとなるが、中小型については下限を採用しており、一般市民には有利な結果となる。

合意により、「取引分野における競争を実質的に制限していた」としても、値上げを制限するものであり、「公共の利益に反して」はいない。
料金を下限にすることによる不当利益はなく、課徴金をとることは不当利益を取り戻すという趣旨に反するのではなかろうか。

公取委の主張はあまりにも「法解釈」中心であり、本ブログ提案のように、上限に設定して「公共の利益に反して」いると思われる大型、特定大型の売上高についてのみ、課徴金を求めるということで収めるも一つの手である。

本件に関しては、弱いもの苛めの感がある。

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公取委は売り手側のカルテルは徹底的に取り締まるが、買い手側の値上げ阻止、値下げ要求の行動はカルテルでない限り、問題としない。

自動車メーカーによる部品価格の値下げ要求が一つの例である。

公取委の「不公正な取引方法」の1つに下記を挙げている。カルテルでなくても、違反である。

自由な競争の基盤を侵害するおそれがあるような行為で、大企業がその優越した地位を利用して、取引の相手方に無理な要求を押し付ける行為。

この行為の形態から直ちに違法となるのではなく、それが不当な場合(公正な競争を阻害するおそれがあるとき)に違法とな る。

「公正な競争を阻害するおそれ」の例に、
取引主体の自主的な判断で取引が行われていないこと(自由競争基盤の侵害)により、競争秩序に悪影響を及ぼす行為。

自動車メーカーの定期的な値下げ要求に対し、低賃金の弱小部品メーカーが自主的判断で常時値下げに応じていたとは考えられない。

「法的解釈」からは明らかに違反と思われるが、どうして放置しているのだろうか。

公取委も、まさか、「申告がないから自主的判断で値下げに応じていると思っていた」とは言わないだろう。
そんな申告をしたら、切られるのは明らかで、出来る筈がない。

昨年下期から円安を勘案し、値下げ要求をやめている。
しかし、通常は1%の値下げ要求だが、歴史的な円高環境下の2011年下期からは「円高協力分」を上乗せし、最大で同3%の値下げを要求した。
今回はむしろ
1%程度の値上げしてもおかしくないところである。

自動車メーカーが円安で大きな利益を上げているのに対し、末端メーカーは円安による原材料値上がりで苦しんでおり、据置きだけでは「優越した地位を利用した無理な要求」である。


 

 

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