農林水産省は3月17日、「食料・農業・農村基本計画」を公表した。
http://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/kikaku/bukai/H27/pdf/150317_2.pdf
次期基本計画における食料自給率目標として、カロリーベースの目標をこれまでの現在の50%から45%に下げた。
2005年度 | 2010年度基本計画 | 次期基本計画 | |||
目標年度 (2015) |
基準年度(2008) | 目標年度(2020) | 基準年度 (2013) |
目標年度 (2025) |
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自給率(熱量) | 45% | 41% | 50% | 39% | 45% |
自給率(生産額) | 76% | 65% | 70% | 65% | 73% |
飼料自給率 | 26% | 38% | 26% | 40% |
付記 家畜の餌の自給率が2013年ベースで26%と低いため、国内産の畜産物の74%が輸入品扱いとなっている。
今回、新しく「食料自給力指標」を設定した。
国際的な食料需給の不安定が存在し、また、多くの国民が国内生産による食料供給能力の低下を危惧してい る中、平素からその時点(輸入が途切れた場合)における我が国農林水産業が有する食料の潜在生産能力を評価しておくことが重要。
「食料自給率」の場合、非食用作物(花き・花木等)が栽培されている農地が有する潜在的な食料生産能力が反映されない。
このため、我が国農林水産業が有する潜在生産能力をフルに活用することにより得られる食料の供給熱量を示す指標として、食料自給力指標(その時点における我が国の食料の潜在生産能力を評価する指標)を設定する。
食料自給力指標では、以下の4パターンで、熱量効率を最大化して作付けするケースを想定した。
いずれのケースも荒れた農地のフル活用を想定している。
栄養バランス
一定程度考慮 考慮せず 主要穀物(コメ、麦、大豆)中心 パターン A パターン B いも類を中心 パターン C パターン D
計算結果は下記の通りで、いも類中心の場合はエネルギー摂取必要量(1人・1日当たり2,147KCal)を超える。
パターンC、Dの場合の食事メニュー例
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しかし、食料の輸入が途切れる場合は、石油も肥料も途切れることとなり、この構想は成り立たない。
石油も肥料もないと収穫量は激減する。
膨大な作業をしているが、全く意味がなく、予算の無駄使いである。
石油がないと、耕運機もコンバインも動かせない。
国内で使用される化学肥料は、化石資源やりん鉱石、加里鉱石等の鉱物資源を原料としており、我が国はその全てを輸入に依存している。
農林水産省 肥料原料の安定確保に関する論点整理
河野太郎代議士は2010年のブログ「ごまめの歯ぎしり」で、「始めよう、農政改革」として、以下の通り述べている。
地元のJAとの農政勉強会。
カロリーベースの食糧自給率などというまったくのデタラメを政策目標に掲げているような農政では、日本の農業は改革できないと力説する。
こんなことをしている農水省なんか潰してしまって経産省の第一次産業局にでも農政を任せる方がよっぽど農業を強くできる。
食糧自給率などというまやかしをやめ、農業生産額、農業所得、農作物の輸出を増やすことを目標に掲げ、流通やマーケティングを強化しながら農業を強くすべきだ。そのためにJAはできることを最大限にやるべきだ。
東京大学大学院農学生命科学研究科の川島博之准教授の著書「食料自給率の罠 輸出が日本の農業を強くする」は下記の通り論じている。
・カロリーベース自給率は陰謀
輸入食料の85%は贅沢品で、輸入が止まっても、大きな問題ではない。「カロリーベースの食料自給率は、農水省が国民の危機感をあおり、税金から補助金を出させるために作り出した道具にすぎない」
・食料の海外依存でも、不測の事態は起こり得ない。
(カロリーベース自給率は、1983年から農水省が始めた日本独自の計算方法で、政府が計算しているのは日本と韓国だけ)
(仮に輸入が止まる場合、石油も、化学肥料のうち全量輸入のカリと燐酸も止まることとなる。)
・穀物は安く、利益を出すには規模拡大しかないが、地方の人口が多い日本では規模拡大はできない。
日本は1戸当たり面積が米国の1/100。
米国並みの農業にするには農家100戸を1戸にまとめることが必要だが、
安い価格で農地を売らない。
人口減で「村」がつぶれる。
仮に集約できても、生活水準の高さなどから、タイなどには負ける。
結論:自給率を高めるのは無理・広い土地を必要としない農業は有望
農業における選択と集中(守るべき分野と強くする分野)・オランダの例
安い穀物を全量輸入、高価な農産品を輸出し、農業貿易収支で黒字。
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