米内務省は3月20日、シェールオイル・ガス開発に関する新規制 "Oil and
Gas; Hydraulic Fracturing on Federal and Indian Lands" を発表した。
http://www.doi.gov/news/pressreleases/interior-department-releases-final-rule-to-support-safe-responsible-hydraulic-fracturing-activities-on-public-and-tribal-lands.cfm
化学物質を混ぜた水を岩盤に高圧で送り込んでガスや石油を取り出す「hydraulic fracturing(水圧破砕法)」が地下水などを汚染する懸念に対応することが狙い。
公有地や先住民保護地区(public and American Indian
lands)にある油井の水圧破砕法
を規制するもので、油井の構造、排水処理、使用薬品の開示の要件を決め、安全性を向上させ、地下水を保護するものである。
規制の主な点は下記の通り。
・油井の構造や、裸孔と水の層の間に強力なセメントバリアがあることの検証による地下水保護
フラッキングの液体が飲料水を汚染するリスクに対応
・ 水圧破砕法に使用される薬剤の公開
・大気、水、野生生物へのリスクを回避するため、回収廃水の保管基準の見直し
open
pit ではなく、sealed tank での保管を求める。
・使用される薬剤、流体による油井間のクロス汚染のリスクを下げるため、地層、深さ、既存の油井の位置等のより詳細な情報の提出
対象となる土地での水圧破砕法による採掘は、天然ガス採掘の11%、石油の5%程度である。
これ以外の土地での採掘は州政府に規制権限がある。ニューヨーク州が昨年12月にフラッキングを禁止する規制を作るなど、現在は州ごとに対応がわかれている。
2014/12/19 ニューヨーク州、フラッキング(水圧破砕)を禁止へ
政府はこの新規則が、各州の規則の原型となることを希望している。
石油関連企業団体の
Independent Petroleum Association of AmericaとWestern Energy Alliance
は同日、新規制は必要性が証明されていないとして、実施の差し止めを求める訴訟をワイオミング州の連邦地裁に起こした。
共和党の上院議員はこの規則の施行を止める法案を提出した。
他方、環境団体は、シェール開発そのものに反発しており、今後、内務省にさらに厳しい対応を求める。
内務省は引き続き、水圧破砕法で発生するメタンガスの焼却の新基準を出す予定。
またEPAは健康リスクの長年の研究を継続している。
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このなかで薬剤の開示は画期的である。
水圧破砕法では、特殊な砂粒や、酸・防腐剤・ゲル化剤・摩擦低減剤などの化学物質を添加した大量の水が使われる。化学物質の内容、組成は企業によって異なる。
薬剤には有害物質、危険物質が含まれており、また地下にある物質と反応して発ガン物質が発生することもある。
アメリカでは飲料水の安全確保のため、水源地帯の土中に異物を混入する行為は厳重に規制されている。
しかし、水圧破砕法で使用される薬剤は開示も求められていない。
水圧破砕法を推進しているHalliburtonの元CEOであったDick
Cheney副大統領(当時)がガス開発を優先する特例を推し進めた。
2005年連邦エネルギーポリシー条令で水圧破砕を飲料水安全条令から適用除外にした。
シェールガス開発で危険物質を使用するのを認め、物質の開示さえも不要とした。
「Halliburtonの抜け穴」と呼ばれる。
2011/8/8 「ガスランド ~アメリカ 水汚染の実態~」
2015/3/13 BS世界のドキュメンタリー 「シェールガス開発がもたらすもの」
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