半導体製造装置で世界3位の東京エレクトロンは4月27日、同業で世界最大手の米
Applied Materials
と2013年9月に交わしていた経営統合契約を解除すると発表した。
米司法省などの独占禁止当局が難色を示し、経営統合が不可能になったという。
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グローバル・イノベーターが誕生、半導体およびディスプレイ産業に大きく貢献するとした。
• 株式対価による対等な経営統合で誕生する新会社の時価総額は約290億ドル
• 今後の大きな技術的転換に応える画期的な製品開発を加速し、株主、顧客、従業員により大きな価値を提供
• 株主還元公約のもと、統合完了後会計初年度のEPS(1株当たり利益)向上を予想
• 30億ドル規模の自社株買いを、統合完了から12カ月以内に実施予定
• 統合新会社は東京証券取引所とNasdaq株式市場に上場し、東京と米国カリフォルニア州サンタクララの両本社体制
具体的には、下記のような三角株式交換・三角合併により、統合持株会社(オランダ)をつくる。
両社の株主には、統合持株会社の株が交付される。
経営統合完了後の新会社の株の保有内訳は、Appliedの株主が68.0%、東京エレクトロンの株主が32.0%となる。
対等合併をうたっているが、実質的にはApplied Materialsによる東京エレクトロンの吸収合併であるとみられていた。
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売上ベースはAppliedが72億ドル、東京エレクトロンが54億ドルで、両社合算の年間売上高は126億ドル、従業員は27千人に拡大する。
新会社は、統合後初年度において約2.5億ドルの統合シナジー効果の創出を、また統合後3年間において約5億ドルの統合シナジー効果 を見込んだ。
2014年6月に両社株主総会が承認、7月には社名をEterisにすると発表、2014年後半の統合を目指したが、独禁当局の承認が得られず、2014年11月に統合を本年3月に延期、本年2月には更に6月に再延期していた。
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Gartner Inc.によれば、半導体製造メーカーの2013年の売上高(百万米ドル)は下記の通りで、統合会社の世界シェアは25%となる。
統合会社 8,517.2
1
Applied Materials 5,460.1
2
ASML(オランダ) 5,302.8
3
Lam Research(米国) 3,163.4
4
Tokyo Electron 3,057.1
5
KLA-Tencor(米国) 2,163.4
6
Dainippon Screen Manufacturing 1,222.7
7
Hitachi High-Technologies 862.0
8
Advantest(旧称 タケダ理研工業) 844.8
9
Teradyne 822.0
10
Nikon 636.3
Others 10,243.5
Total Market 33,778.0
日米など8つの国と地域の独禁当局が統合の可否を慎重に審査してきたが、米司法省との協議で承認を得られないことが確実になったという。
中国の反応も厳しい模様。
米司法省は、業界が寡占化して価格競争が起きにくくなることなどを問題視したとみられる。
2001年には米航空大手のユナイテッド航空とUSエアウェイズの経営統合が、2008年には検索大手のヤフーとグーグルの広告事業統合が、米当局が難色を示したことで破談した。
記者会見で東京エレクトロンは次のように述べた。
「米司法省と認識の違いがあり、解決のめどが立たないことが分かった。改善処置のプランを提出したが、実効性の見解に(司法省との間で)隔たりがあった。現行の製品群だけでなく、両社の開発品にまで対象が広がった」
「非常に残念な結果だと思っている。反トラスト法に引っかかるものではないというのが我々の見解だ。このような結論となり、納得がいかない」
米司法省は合併断念発表を受け、4月27日、次の通り発表した。
司法省が両社の改善措置案では競争上の懸念が消えないと伝えたところ、合併計画を断念した。
合併断念で半導体製造設備の競争が維持できる。半導体産業は米国経済にとり非常に重要であり、提案された改善措置案では、特に次世代半導体設備の開発に関して、統合により損なわれる競争を取り戻せない。
両社の統合は、高容量非リソグラフィー型半導体製造設備を開発・供給するノウハウ、資源、能力を持つ最大の2社の統合となる。調査に当たり、司法省は韓国公取委、中国商務省、ドイツ連邦カルテル局、その他多くの独禁法当局と協力してきた。
半導体については知らないため、よく分からないが、全体としてのシェアではなく、重要分野でのシェアを問題とされた模様で、企業側としては当局の主張を入れると統合の意味がなくなるということではなかろうか。
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