米医療保険大手、米薬剤給付管理事業大手を買収

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米医療保険大手
UnitedHealth Groupは3月30日、薬剤給付管理(Pharmacy Benefit Management :PBM)事業大手のCatamaran Corporation(旧称 SXC Health Solutions、当初名はSystems Xellence) を約128億ドルで買収すると発表した。

傘下のPBM企業OptumRxと統合 し、医薬品の高額化が進む中、買収による規模拡大で製薬会社に対する交渉力を高め、コスト軽減につなげる。

Catamaranは年間4億件以上、OptumRxは約6億件の処方箋を扱っており、統合PBMは年間10億件以上の処方箋を扱うこととなる。

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薬剤給付管理(PBM)事業は日本にはない業種である。

米国には日本のような国民健康保険制度はなく、自由診療が基本である。

公的医療保険としては、65歳以上の高齢者と65歳未満の身体障害者・末期腎臓疾患患者を対象とするMedicare(2012年で4,890万人が対象)と、低所得者をカバーするMedicaid(5,090万人が対象)がある が、中心となっているのは民間保険会社が提供する医療保険である。

しかし、高額な保険料に加え、慢性病患者等は更新を拒否されたりする弊害があり、医療保険に入っていない人も2012年で人口比で15.4%の4780万人も存在していた。

2010年3月にObama Care法が成立、低所得者に補助を行うことにより、国民の健康保険加入率を抜本的に向上させる内容であるが、共和党が廃止を求めているほか、違憲判決も出され、難航している。Obama Care法でも薬価基準制度は導入されておらず、薬価は製薬会社が自由に設定できる。

Obama大統領も、薬価基準を採用しないことで、強力な医薬業界がObama Care 法に反対することを回避した。
大統領自身が医薬業界から多額の選挙資金の献金を受けている。

一般的な医療保険を扱う保険会社はHMO(Health Maintenance Organizations) と呼ばれる。

日本のように保険適用薬剤の指定や薬価基準がないため、非常に高額の治療費になる可能性があり、野放しでは医療保険は成り立たない。

このため、HMO保険会社は下記のような対応策を取っている。

・高品質かつ安価な薬を選択し、推奨医薬品リスト(Formulary)を設定し、掲載医薬品のみを保険対象とする。
  リストにない医薬品は自己負担となる。

・製薬会社とのリベート、ディスカウント交渉
  製薬会社も
Formularyに載せてもらわないと売れないため、積極的に対応する。

・処方箋を通じての薬歴情報の蓄積

・薬局に薬剤情報の提供

HMO保険会社と提携して、これらの作業を行うのがPBMで、薬剤請求とコスト管理を行い、Pharmacy Benefit のManagementを行う。

また、米国では医薬分業が徹底しているが、近くに薬局がないなどで、通信販売が多い。これもPBM重要な事業の一つである。

日本では一般用医薬品のネット販売がようやく認められたが、処方箋医薬品は薬剤師による対面販売しか認められていない。米国ではそのような規制はない。

 

1970年代に医薬品費が高騰したのを受け、PBMがスタートした。

1980年代にPBM会社は保険薬局チェーンのマネジメントを行うようになった。
  現在、PBM会社は契約薬局との間にオンラインネットワークでつなぎ、処方箋情報を集め、代金の支払いを行っている。

1990年代に入り、推奨医薬品リスト(Formulary)設定が始まり、通信販売も広がった。
 薬剤費引き下げのため Formularyにジェネリック医薬品の搭載が増えたことが、ジェネリック医薬品の普及に繋がった。

2000年代には、慢性疾患患者の疾病管理プログラムも実施されるようになった。


現在、150社程度のPBMがあるとされるが、上位7社が70%以上を占める。

2012年の処方箋取り扱い件数での順位は下記の通りで、ここではOptumRx は合併後のExpressとCVCに次ぐ3位、Catamaranは7位となっている。

 ソース:http://www.drugchannels.net/2012/04/esrx-mhs-analysis-of-ftc-decision.html


 

 

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