2016年4月の電力小売り全面自由化後を見据え、大型火力発電所の建設計画が相次いでいる。
なかでも従来の垣根を越えて日本の電力需要の3割超を占める首都圏市場への参入を目指す電力大手の動きが目立つ。
関電が首都圏に発電所を設けるのは初めて。
投資額は2千億~3千億円で、 極東石油工業の製油所敷地(千葉県市原市)に建設し、2020年代半ばの運転開始を目指す。
用地取得の必要がない上、燃料を積んだ船の受け入れ設備がすでに整っており、大消費地の首都圏に近いほど送電ロスが少ないメリットもある。
出資比率は折半が有力だが、今後詰める。
関電子会社の関電エネルギーソリューションは2014年4月から首都圏での電力小売りを開始した。
ただ、東日本と西日本では電気の周波数が違うため、近畿地方からの送電量には限りがあり、東日本での発電計画を相次いで打ち出している。
2014年9月に関西電力 が伊藤忠商事子会社の新電力と組んで仙台市に石炭火力発電所を建設する計画を進めていることが明らかになった。
関電子会社の関電エネルギーソリューションと、新電力の伊藤忠エネクス が共同出資会社を設立した。
出力11.2万キロワットの石炭火力発電所を新たに建設し、2017年の運転開始を目指す。
石炭火力発電所としては小型だが、国の環境アセスメントの対象外となる出力規模のため、早期に運転開始できる。
2015年3月に関西電力と丸紅は、秋田県に大型石炭火力発電所を建設する計画を県に伝え、県は計画を了承した。
関電エネルギーソリューションと丸紅が共同出資する。
発電所の出力は130万キロワットで、総事業費は3000億円超、2020年代前半の稼働を目指す。
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九州電力、出光興産、東京ガスの3社は3月27日、千葉県に大型の石炭火力発電所を建設することで合意したと正式発表した。
九電が管外に発電所を造るのは初めて。
3社が均等出資し、出光が千葉県袖ケ浦市に持つ貯炭場に隣接する約30ヘクタールの遊休地に最大で100万kWの石炭火力2基を建設する。
投資額は4千億円規模の模様で、2020年代中ごろの稼働を目指す。電力小売り全面自由化後の需要をにらみ、発電でも首都圏への参入が本格化する。
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中国電力とJFEスチール、東京ガスが首都圏で火力発電所を共同で建設することを計画している。
中国電とJFEは発電電力の一部を東京電力に販売、東京ガスは残りの電力を自社の販売網で関東圏で売ることも視野に調整している。
JFEの千葉or川崎製鉄所内に100万kW級の石炭火力を建設することを検討している。
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中部電力と東京電力は2013年12月、東京電力常陸那珂火力発電所(茨城県東海村)内に、常陸那珂ジェネレーションを設立した。
出資比率は、中部電力 96.55%/東京電力 3.45% で、出力 65万kWの超々臨界圧(USC)微粉炭火力発電所を建設する。
両社は(4/20の記事の通り)燃料上流・調達から発電まで、火力発電事業のサプライチェーン全体に係る包括的アライアンスに伴う共同事業会社 JERA を設立する。
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このほか、東京ガスとJX日鉱日石エネルギーのJVの川崎天然ガス発電、東京ガスと昭和シェルのJVの扇島パワーがそれぞれ、天然ガス発電の増設を行う。
種類 | 計画出力 | 場所 | 時期 | |
関西電力/東燃ゼネラル石油 | 石炭火力 | 100万kW | 極東石油工業の製油所敷地 | 2020年代半ば |
関西電力/伊藤忠 | 石炭火力 | 11.2万kW | 仙台市 | 2017年 |
関西電力/丸紅 | 石炭火力 | 130万kW (65万x 2) |
秋田県 | 2020年代半ば |
九州電力/出光興産/東京ガス 均等出資 |
石炭火力 |
max 200万kW |
袖ケ浦市 出光の貯炭場に隣接 |
2020年代半ば |
中国電力/JFE/東京ガス | 石炭火力 |
100万kW |
JFE 千葉or川崎製鉄所内 | |
常陸那珂ジェネレーション 中部電力 96.55%/東京電力 3.45% |
超々臨界圧 微粉炭火力 |
65万kW |
東電 常陸那珂火力発電所構内 | 2020年度 |
川崎天然ガス発電 東京ガス49%/JX51% |
天然ガス | 約84.7万kW → 160万kW |
川崎区扇町 | |
扇島パワー 東京ガス75%/昭和シェル25% |
天然ガス | 81.4万kW → 122.1万kW |
鶴見区扇島 |
問題は、石炭火力発電時のCO2排出量が多いことで、石炭火力の増設が困難になる可能性もある。
2014年12月にペルーで開かれたCOP20で、日本政府が地球温暖化対策の一環として実施している発展途上国への石炭火力発電所の建設支援が環境保護団体の間で問題視された。
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